国内最強ジャイアンツ「V9時代の巨人軍」をオーディオに例えたなら(後編)

今回も前回に引き続き、栄光のV9戦士をオーディオに例えていきます。

オーダーは、

  • 1番 柴田勲
  • 2番 土井正三
  • 3番 王貞治
  • 4番 長嶋茂雄
  • 5番 末次 利光
  • 6番 高田繁
  • 7番 黒江透修
  • 8番 森祇晶
  • 9番 投手

前回は6番高田までだったので、今回は7番黒江から。

目次

  1. 7番 黒江透修をオーディオに例えたなら
  2. 8番 森祇晶をオーディオに例えたなら
  3. 9番 投手をオーディオに例えたなら
  4. まとめ

 

7番「黒江透修」をオーディオに例えたなら

黒江透修は鹿児島県姶良市出身の内野手です。現役時代の背番号は「5」。V9時代のセンターラインを土井と共にがっちり守り、土井-黒江の二遊間は、ベンチが作戦を預けるほどのハイレベル・ラインでした。身長165cmと小柄で小太りの体型だったことから、「豆タンク」の愛称で親しまれていました。
そんな黒江をオーディオに例えるなら、日立Lo-Dのカセットデッキ「D-4500」でしょう。

d-4500

画像引用:オーディオの足跡

まずは写真をご覧下さい。
まさに「タンク」という形容のごとき出立ちです。また、黒江は遠征中の宿舎では長嶋と同部屋で、夜中でも素振りに付き合わされました。その長嶋の素振りというのが、土井と黒江が畳を頭の上にのせ、長嶋が畳に沿って素振りをするというものだったのですが、長嶋はしばしばスイングに納得できず、二人は畳を担いだまま2時間、中腰のまま部屋の中を走り回ったようです。

もう一度写真をご覧下さい。

d-4500

このD-4500は、中腰のように見えませんか。そんなD-4500の最大の特徴は「R&Pコンビネーションヘッド」による3ヘッド方式です。録音・再生機能が独立しており、高感度・低歪率・広帯域周波数特性を実現。世界初の方式とあって、当時はとても話題となりました。また、L.P.D.S.(低位相歪システム)を採用。位相-周波数特性を「リニア」にすることで忠実な波形伝送を目指しました。そして、リニアを目指したのは黒江も同じでした。実は、黒江は子供の頃に右手に大怪我を負ったため、送球は酷いクセ球でした。それを当時の藤田ピッチングコーチとともに特訓し(座布団にボールをぶつけるという特訓)、クセのない送球(リニアのような直線的ボール)が可能になりました。世界初の3ヘッド搭載カセットデッキ「D-4500」。Lo-dはこれ以降、3ヘッドデッキにおいて画期的な技術を開発。そしてD-4500は国産カセットデッキの3ヘッド化への流れを決定づけるまさに名機でした。一方、黒江もまた、土井と共に栄光の巨人時代の守備の要となり、V9への流れを決定づけたまさに名選手でありました。

【主な仕様】

  • トラック形式:4トラック2チャンネル
  • ヘッド:録音・再生;R&Pコンビネーション(フェライト)ヘッド
  • 消去;ダブルギャップフェライトヘッド
  • 周波数特性:20Hz~20kHz(クローム)20Hz~18kHz(UD)20Hz~15kHz(ノーマル)
  • 歪率:1.7%(1kHz、0dB)
  • S/N:Dolby on;63dB、Dolby off;55dB
  • 入力感度/インピーダンス:Mic;0.3mV/10kΩ以上、Line;40mV/100kΩ以上、DIN in;35mV/100kΩ以上
  • 出力インピーダンス:Line out;2.5kΩ以下、DIN out;1kΩ以下、Headphone;8Ω
  • 電源電圧:AC100V(50Hz/60Hz)
  • 消費電力:40W
  • 外形寸法:W441 x H222 x D312mm
  • 重量:12kg

 

8番「森祇晶」をオーディオに例えたなら

森祇晶は、大阪府豊中市生まれ、岐阜県岐阜市出身の捕手です。背番号は「27」。「V9の頭脳」との異名を取る一方、キャッチングの技術も非常に高い捕手でした(名捕手・野村克也が通算206個のパスボールに対し、森は42個のみ)。また、グランド外での情報収集にも熱心で、日本シリーズ対策としてパ・リーグで絶対的な強さを誇っていた阪急の話を聞くために、野村克也(当時のパ・リーグ南海の正捕手)の自宅に出向いたエピソードは有名です。

また、他の名捕手の例に漏れず、森も現役時代は「ささやき戦術」の名人でした。そんな森をオーディオに例えるなら、チューナー以外にありません。それも「KENWOOD L-02T」。これに決まりです。

 

l-02t

画像引用:オーディオの足跡

1970~80年代に流行したエアチェック。あれはまさに、深夜ラジオのささやきに耳を傾けることでした。そして「KENWOOD L-02T」は、収集された情報を完璧にささやいた名機でした。さらに、森は「ジャイアンツ史上最強の名キャッチャー」と評され、今なお森を超える捕手は現れていないと言われていますが、このKENWOOD L-02Tもまた、今なおこれを超える性能のFMチューナーはないと言われている機器です。発売当時の価格は30万円。しかし、その弩級の金額以上に、超弩級の性能に世間は驚いたものでした。

「周波数直線高精度7連バリコン」を採用し、サンプリングホールドMPXをベースに、位相特性の改善や歪の低減を実現した「ノンステップ・サンプリングホールドMPX」を搭載。さらに、長年チューナーの課題とされていた受信特性とオーディオ特性の両立を実現した「ノンスペクトラムIFシステム」を備えています。チューナーは、高選択度と音質の両立が求められる機器です。しかし、周波数変調であるFM信号は、オーディオ信号の強弱や周波数成分により常に帯域幅の変化するスペクトルとして情報を伝えており、このスペクトルがIF(中間周波数:Intermediate Frequency)バンドパスフィルターを通過する際、音楽情報を大きく損失します。一方、IFフィルターを緩やかな特性にしてスペクトルを通過させれば、情報の損失は免れます。が、今度は妨害波の排除機能低下を招いてしまい、音質を損ないます。そこで開発されたのが、この「ノンスペクトラムIFシステム」でした。いったんIF回路に入るFM信号からFMスペクトルを取り除き,IFフィルターにより妨害信号を除去した後、元のFM信号に戻して検波。低歪みと妨害排除能力の両立を実現しました。グランドの内外でアンテナを張り巡らせて情報を収集し、ささやいた森。このKENWOOD L-02Tもまた、情報を損なわず、確かな音質で夜のエアチェック・シーンではささやきました。

【主な仕様】

  • 型式:FMステレオチューナー
  • 受信周波数範囲:76MHz~90MHz
  • アンテナインピーダンス :75Ω不平衡
  • 感度(75Ω):normal;10.7dBf(新IHF)/0.95μV(IHF)、direct;25.2dBf(新IHF)/5.0μV(IHF)
  • SN比50dB感度:normal mono;15.8dBf(新IHF)/1.7μV(IHF)、normal stereo;37.2dBf(新IHF)/20μV(IHF)
  • direct mono;31.2dBF(新IHF)/10μV(IHF)
  • stereo stereo;51.6dBf(新IHF)/105μV(IHF)
  • 高調波歪率(ANT in→Σ out、85dBf入力):
  • wide(100Hz); 0.004%(mono) 0.015%(stereo)
  • wide(1kHz); 0.004% (mono) 0.01%(stereo)
  • wide(6kHz); 0.015% (mono) 0.03%(stereo)
  • wide(15kHz); 0.01%(mono) 0.1%(stereo)
  • wide(50Hz~10kHz); 0.015%(mono) 0.04%(stereo)
  • narrow (100Hz);0.005%(mono) 0.08%(stereo)
  • narrow (1kHz);0.02%(mono) 0.08%(stereo)
  • narrow (15kHz);0.05%(mono) 0.05%(stereo)
  • narrow (50Hz~10kHz);0.2%(mono) 0.2%(stereo)
  • SN比(ANT in→Σ out、100%変調、85dBf入力):
  • mono;98dB stereo;88dB
  • 周波数特性(ANT in→Σ out):15Hz~15kHz +0.2 -0.5dB
  • イメージ妨害比(84MHz normal):120dB
  • IF妨害比(84MHz normal):120dB
  • 電源電圧:AC100V(50Hz/60Hz)
  • 定格消費電力:28W
  • 最大外形寸法:W480 x H147.5 x D423mm
  • 重量:12.4kg

 

9番 投手をオーディオに例えたなら

V9時代の投手といえば、やはり「堀内恒夫」でしょうか。堀内恒夫は、山梨県甲府市出身の投手です。背番号は「18」(入団時は「21」)。V9時代のエースとして活躍し、通算12回のリーグ優勝、9度の日本一に貢献。1972年には26勝を挙げ、球団通算3000勝目の勝利投手でもあります。一方、1967年10月10日の対広島戦(後楽園球場)ではノーヒットノーランを達成した上で、史上唯一の「投手による3打席連続本塁打」を達成しています。

そんなV9時代のエース・堀内をオーディオに例えるなら、音楽業界のエース的商品「CD」を奏でるCDプレーヤーでしょう。それも、ソニーの「CDP-101」が適任ではないでしょうか。

 

cdp-101

画像引用:オーディオの足跡

 

CDP-101は、世界初のCDプレーヤーです。このプレーヤーから日本のCD時代は始まりました。そして、堀内は日本で初めてのドラフト会議で、1位指名選手として巨人に入団した投手です。この天才的投手の入団により、巨人のV9時代は始まりました。「世界の福本」の異名を持つ日本の盗塁王・福本はこう残しています。「あんなクイックは初めて見た。パ・リーグにあんなことができるピッチャーはいない」一方、CDP-101に初めて触れた多くの人はこう思ったものでした。

「トレイに入れて再生ボタンを押すだけ。こんなクイック再生ができるプレーヤーは、今までなかった」

CDプレーヤーも堀内も、当時はニュータイプの存在として、世間を大きく賑わせたものでした。

【主な仕様】

  • 型式:コンパクト・ディスク・デジタルオーディオシステム
  • 読取り方式:非接触光学読取り(半導体レーザー使用)
  • レーザー:GaAlAsダブルヘテロダイオード
  • 回転数:約500〜200rpm(CLV)
  • 演奏速度:1.2m/s〜1.4m/s(一定)
  • 周波数特性:5Hz〜20kHz ±0.5dB
  • 高調波歪率:0.004%以下(1kHz)
  • 電源:AC100V(50Hz/60Hz)
  • 消費電力:23W
  • 外形寸法:W350 x H105 x D325mm
  • 重量:7.6kg

 

まとめ

7番黒江は、Lo-Dの「D-4500」。見た目は豆タンク。中腰。しかしその実態は世界初の3ヘッドを搭載したカセットデッキ。

8番森は、KENWOODのチューナー「L-02T」。受信特性とオーディオ特性の両立を実現した、世界最高峰のチューナー。

9番投手の堀内は、ソニーのCDプレーヤー「CDP-101」。この名機から、CD時代は始まりました。

こうして振り返ってみると、本当にあの頃のジャイアンツは強く、当時のオーディオは多くの人にロマンを与えました。日本の古き良き時代、というところでしょう。ところで、当時のV9時代の9選手を取りまとめていたのが、「ドン川上」こと川上哲治です。川上はアル・キャンパニスによって定型化された『ドジャースの戦法』を実践し、「V9」を達成して「プロ野球界の生き神様」とまで呼ばれた伝説的存在です。

そうですね。

この「V9戦士をオーディオに例えたなら」シリーズは、やはり彼で締めくくるべきでしょう。そんなわけで番外編。最後は、監督をオーディオに例えてみました。

 

番外編

監督 川上哲治をオーディオに例えたなら

川上哲治は、熊本県球磨郡大村(現・人吉市)出身。「打撃の神様」と称された現役時代を経て、V9時代の指揮をとった名監督です。そんな伝説的名監督をオーディオに例えるなら、やはりオーディオ機器を支えるオーディオラックでしょう。それも、伝説とまで言われている「ゾーセカス」をおいて他にはないでしょう。

ゾーセカス(zoethecus)「z.3/R with Z.SALB」は、既に販売終了となっている伝説的ラックです。

9人の選手をまとめていた村上監督さながらに、異なる素材を手作業で9層に重ね合わせたゾーセカスの棚板。最外層をソリッドアルミプレート張りにすることで、物理的共振を抑制。同時に、コンポーネントからの不要輻射に対しても優れたシールド効果を発揮します。周囲の支柱はメープル材。この素材は内部密度が不均一なため、共振を効果的に排除。また、脚部には砂を補填したアルミスパイク構造を採用しており、床からの振動を防ぐ理想的なメカニカルアースを形成しています。個性溢れるV9戦士を一つにまとめあげ、総合力を高めた村上監督。ゾーセカスもまた、オーディオシステムのトータルクオリティを劇的に向上。両者とも、今までにない格別な実績をもたらした存在でした。

【主な仕様】

  • 外寸:W648 x H635 x D521 mm
  • 定価:384,000円

では、そろそろお別れです。あなたのオーディオライフが、栄光のオーディオライフになることを祈りつつ。またいつかお会いしましょう。

今回も前回に引き続き、栄光のV9戦士をオーディオに例えていきます。

オーダーは、

  • 1番 柴田勲
  • 2番 土井正三
  • 3番 王貞治
  • 4番 長嶋茂雄
  • 5番 末次 利光
  • 6番 高田繁
  • 7番 黒江透修
  • 8番 森祇晶
  • 9番 投手

前回は3番王までだったので、今回は4番長嶋から。

目次

4番「長嶋茂雄」をオーディオに例えたなら

長嶋茂雄は千葉県印旛郡臼井町(現:佐倉市)出身の内野手です。現役時代の背番号は「3」。「日本で最も有名なプロ野球選手は?」と質問されれば、「ミスタープロ野球」「チョーさん」など、おそらく一番多くの人がその名を挙げるだろうスーパースターです。
しばしば「記録より記憶に残る選手」と称されますが、「首位打者6回」「本塁打王2回」「打点王5回」「最多安打10回」と、素晴しい記録も残している選手です。
人気・実力も兼ね揃えていた長嶋茂雄。彼が引退時に発した「巨人軍は永久に不滅です」の言葉は本当に有名です。

そんな長嶋をオーディオに例えるなら、やはりオーディオの華・スピーカーでしょう。それも、YAMAHAのNS-1000Mが適任ではないでしょうか。

ns-1000m
画像引用:オーディオの足跡

NS-1000Mは、オーディオでは珍しく愛称が浸透している機種です。「1000モニ」という響きに懐かしさを覚える人も多いことでしょう。
1000モニは1974年の発売以来23年間に渡り製造され、20万台以上売れた国産の名機です。本当に売れました。ひょっとしたら日本で最も売れたオーディオかもしれません。一方、長嶋茂雄も同じです。「ミスター」などの愛称を持ち、日本で最も名の売れたプロ野球選手です。

また、長嶋は1982年にバチカン市国にてローマ法王に謁見したりと、海外での重要人物にお呼ばれしています。そしてNS-1000Mも同様に、海外での主要なシーンで登用されています。NS-1000Mは、スウェーデン国営放送やフィンランド国営放送でモニタースピーカーとして使用された実績を持ちます。

ピアノの音を美しく再現することも特徴です。YAMAHAはピアノを製造していることもあるのでしょうが、このNS-1000Mは、特にピアノの音とは愛称抜群です。そして、ここで少し思い出して欲しいのですが、王貞治の趣味はピアノです。そうですね。「アベックホームラン」という言葉がある通り、王と長嶋の愛称は最高です。

ところで、しばしば「長嶋はゴロが苦手」という印象を抱いている人がいます。ゴロとは地面を転がる”低い”打球ですが、NS-1000Mもまた、”低い”音が苦手という印象を抱いている人が多いようです。
ただ、それはあくまでイメージです。長嶋にはイージーゴロを派手にエラーするイメージが定着していますが、実は数値上では守備能力が非常に高い選手です。通算守備率.965は角富士夫の.975に次いで三塁手セ・リーグ歴代2位(1000試合以上対象)に位置し、1500試合以上対象や4200守備機会以上を対象にする場合は三塁手プロ野球歴代1位です。そして、NS-1000Mも愛称のいいアンプを選んだ上でセッティングをしっかりやれば(このセッティングが結構シビアなのですが)、高音同様、クリアで輪郭のくっきりした低音を鳴らします。両者とも、決して「低い」所が苦手なわけではありません。

「巨人軍は永久に不滅です」との名言を残した長嶋茂雄。
このNS-1000Mもまた、記憶・記録に残る名機です。そして、私たちオーディオファンにとっても「永久に不滅」と言える機種ではないでしょうか。

【主な仕様】

  • 方式 3ウェイ・3スピーカー・密閉方式・ブックシェルフ型
  • 使用ユニット 低域用:30cmコーン型(JA-3058A)
  • 中域用:8.8cmドーム型(JA-0801)
  • 高域用:3.0cmドーム型(JA-0513)
  • 再生周波数帯域 40Hz~20kHz
  • クロスオーバー周波数 500Hz、6kHz、12dB/oct
  • 最低共振周波数 40Hz
  • インピーダンス 8Ω
  • 出力音圧レベル 90dB/W/m
  • 定格入力(JIS連続) 50W
  • 最大許容入力 100W
  • レベルコントローラー 中・高音、連続可変型
  • 外形寸法 幅375×高さ675×奥行326mm
  • 重量 31kg

5番「末次利光」をオーディオに例えたなら

末次利光は熊本県人吉市出身の外野手。旧名は民夫。現役時代の背番号は「38」。渋い活躍が特徴の、バランス型の選手です。表情は少なく性格は無骨。華やかなスターが揃っていた当時の巨人軍の中では、極めて異色で目立たない存在でした。
そんな末次の特徴を端的に表しているのが、1976年6月8日の阪神タイガース戦です。山本和行から劇的な逆転満塁サヨナラ本塁打を放つものの、翌日の読売新聞朝刊スポーツ欄では、末次でなく満面の笑みで末次を出迎える長嶋監督の写真が掲載されました。
(しかし、『巨人軍5000勝の記憶』 など、球団の歴史を記す書籍やプロ野球通の間では、絶大な人気を誇った選手でした。野球好きの皇太子徳仁親王が、少年時代に末次を応援していたというのは有名な噂です。)

そんな末次をオーディオに例えるなら、ROTELのプリメインアンプ「RA-820BX」でしょう。
ROTEL は日本のオーディオメーカーですが、デザインは他の日本メーカーとは一線を画しており、無骨。本当に、日本では目立たない存在です。

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画像引用:AudioAsylumTrader

また、ROTELは「最高の信頼性とサウンド追求のための厳選されたパーツ」「対称トレース設計によるストレートサーキット思想」「徹底したヒアリング主義」を重視するバランスド・デザイン・コンセプトを掲げ、「見た目の華やかさや一部のパーツや回路の優秀さをアピールするのではなく、全体のバランスの良さによる実際の音を重視する」という方向性を明確に打ち出し、それを実践しているメーカーです。いかがでしょう。バランス型の選手として、無骨で目立たない存在でも、渋くいい働きをしていた末松と重なりませんか。

ところで、ROTELのRA-820BXは、物理学・電子工学・機械工学を組み合わせて実際に「音を聴く」ことに重点を置いて開発が進められた商品です。そして、その姿勢が英国をはじめとするヨーロッパで高い評価を受け、1985年には英国雑誌“What HiFi”で大きく取り上げられます。そうです。このプリメインアンプRA-820BXが
礎となって、今のROTELを築くのです。

一方、末次はコーチとして、緒方耕一・中畑清・篠塚利夫・松本匡史らを育て、スカウトとして阿部慎之助・木佐貫洋・亀井義行の獲得に貢献します。もう皆さんおわかりでしょう。末次こそ、今の強い巨人を築き上げた立役者なのです。

ROTELの最小モデルであるRA820BXは、輸出専用機とあって日本では本当に目立たない存在です。しかし、公称定格出力は25w+25wですが、出力段のタランジスタには実に10倍以上の、280wの入力を許容するものを使用しています。無骨で目立たなくても、確かな能力で渋い働きをするRA820BXこそ、V9戦士の末次と言えるのではないでしょうか。

【主な仕様】

  • 出力:25W+25W(8Ω)
  • 入力感度:2.5mV(MM)、150mV(線)
  • インピーダンス:16Ω-4Ω
  • 規格:430 x 66 x 271mm
  • 質量:5.5kg

6番「高田繁」をオーディオに例えたなら

高田繁は大阪府大阪市住吉区出身の野手。現役時代の背番号は「8」。「プロ野球史上最高の左翼手」との呼び声も高く、特にクッションボールの処理には長けていて「壁際の魔術師」との異名を持つ程でした。
しかし1975年オフ、張本勲が日本ハムファイターズから巨人へ移籍。それに伴い、高田は三塁手へコンバートされます。それでも、内野手にコンバートされた1年目にはダイヤモンドグラブ賞を獲得。 史上初の、外野手・内野手両方での受賞を果たします。
トレードマークは青。俊足・強肩・強打と、走攻守の三拍子揃った名選手でした。

そんな高田をオーディオに例えるなら、マッキントッシュの「MT10」でしょう。

MT10は、電源部は不要な振動やノイズの発生を防ぐべく厳格に管理されており、駆動部には高性能スイス製ブラシレスDCモーターを採用。また、極めて高い精度を実現するため、ターンテーブルの回転あたり1,595ものストロボマークを参照する電子スピードコントロールとなっています。そして、フィニッシュは鏡面仕上げにより高級感を演出。「安定感」「高精度」「高級感」の三拍子揃った名プレーヤーです。

一方、高田も先述の通り、「俊足」「強肩」「強打」と、走攻守の三拍子揃った名プレーヤーでした。

また、高田は1975年に外野手から内野手へコンバートされています。時折、日本プロ野球で初めて外野手か一塁手を除く内野手にコンバートされた選手と言われますが、それは誤りです。山完二(国鉄)、苑田聡彦(広島)、上垣内誠(広島)等の前例があります。ただ、珍しい逆転現象であったことは間違いありません。

実は、マッキントッシュにも同じような珍しい逆転現象が起きています。
アップル社と言えば、独自性の高い技術を持つ企業を次々と買収し、全てを自社のものへと吸収する体質を持つ企業です。一言で言えば、「自分たちだけのモノ」とすることで成長している企業です。
しかし、そんなアップルも「自分たちだけのモノ」にできていないものがあります。それが「マッキントッシュ」の名前です。アップル社のマッキントッシュはスペルこそ異なるものの(Apple社はMacIntosh)、老舗の「マッキントッシュ」にその使用許可を得て使っています。現代的な視点で見れば、これは珍しい逆転現象です。

しかし、何よりの共通点は「青色」です。

近年のプロ野球界では、カラフルなグローブを使う選手も多く見られます。しかし、当時は茶色のグラブ以外を使う選手は珍しく、そんな中、高田は青いグラブを愛用。アドバイザリースタッフ契約しているミズノ(当時は美津濃スポーツ)では“高田モデル”という青のグラブが大変人気を博したものでした。さらに、高田は手袋も青だったことから、同時期に活躍したV9戦士「赤い手袋の柴田勲」と対称的な人気がありました。

一方、マッキントッシュのMT10は、電源を入れると上品なグリーンの輝きを放つターンテーブルイルミネーション機能が作動し、幻想的な表情を演出。そして何より、マッキントッシュの代名詞「ブルーアイズメーター」が青く光ります……ちょうど、高田の青いグラブのように。

マッキントッシュと言えばアンプのイメージがありますが、このMT10は金額も100万円を優に超えることもあって、本当に素晴しい名機です。是非、オーディオの柴田勲「 樽屋レコードカートリッジ01M 」とセットで、絶品レコードを味わって欲しいと思います。

【主な仕様】

  • 駆動方式 ベルトドライブ式
  • DCモーター PLL方式
  • トーンアーム ストレートタイプ
  • ターンテーブル  高純度アクリル材
  • 適合カートリッジ自重 6~14g
  • 回転数 33-1/3、45、78回転
  • 消費電力 250mA
  • 最大外形寸法 W445×H205×D485mm
  • 質量 19.0kg
  • カートリッジ付属(MCカートリッジMCC10、推奨針圧2.4g、出力電圧0.5mV)

まとめ

4番長嶋は、オーディオの華・スピーカーよりYAMAHAの「NS-1000M」。
多くのユーザーの記憶に残り、ヤマハのオーディオ部門売上記録を打ち立てた名機です。

5番末次は、ROTELのプリメインアンプ「RA-820BX」。
無骨で地味ながらも、渋い働きをします。

6番高田は、マッキントッシュの「MT10」。
青い手袋さながらのブルーアイズメーターがたまりません。

というわけで、今回は中軸打線を例えてみました。
次回は「7番黒江」からです。楽しみにお待ちいただければ光栄です。
では、また近々お目にかかります。

あなたのオーディオライフが、「今日じ〜ん」と来ることを祈っています。

 

1960年代から70年代にかけて、栄光のV9時代を築いた巨人軍。あの頃のジャイアンツは本当に強いチームでした。3番王、4番長嶋のONコンビを擁し、9年連続で日本シリーズを制覇。前代未聞の9連覇を達成します。

しかし、当時の巨人打線はカネで選手をかき集めた1990年代以降のような重量級打線ではなく、1番、2番とクリーンナップで点をとり、後はそのリードを徹底して守るという、いわゆるスモールベースボールでした。驚くことに、V9中の打線は王と長嶋以外、誰も規定打席に到達しての打率3割を達成していません。

 

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V9の代表的打順はこんな感じです。

1番 柴田勲
2番 土井正三
3番 王貞治
4番 長嶋茂雄
5番 末次 利光
6番 高田繁
7番 黒江 透修
8番 森祇晶
9番 堀内恒夫

こうしてみると、何人かは巨人を卒業して、別チームで監督を務めています。ですから、当時はアンチ巨人だった方も、今では「個性的なチームだったなあ」と懐かしいのではないでしょうか。

さて、そこで今回は、こんな個性派揃いのV9時代巨人軍をオーディオに例えてみようと思います。

目次

1番 柴田勲をオーディオに例えたなら
2番 土井正三をオーディオに例えたなら
3番 王貞治をオーディオに例えたなら
まとめ

 

1番「柴田勲」をオーディオに例えたなら

柴田勲は神奈川県横浜市出身の外野手。現役時代の背番号は「12」と「7」。通算盗塁数歴代3位で、盗塁王には6回も輝いた俊足の選手です。
「銀座の盗塁王」との異名を持ち、また、柴田がバッターボックスに入ると、伊東ゆかりの「小指の思い出」の替え歌(「柴田が噛んだ小指が痛い」)の大合唱が相手スタンドから湧き起こったことは、きっと記憶にある方も多いことでしょう。
現役時代のトレードマークは、赤い手袋。あの手先の赤色は、私もはっきり覚えています。

そんな柴田をオーディオに例えるなら、やはり「樽屋レコードカートリッジ01M」でしょう。
日本を代表するDJ「MURO」や「須永辰緒」ばかりでなく、世界のトップDJも愛用しており、発売より10万本以上の販売実績を持つ超ロングセラーの針です。レコードを楽しむ際に一番大切な「音」を最優先にしており、世界中のレコード針の中でNo1クラスのダイナミックレンジとコストパフォーマンスを誇ります。
スクラッチ・プレーも可能な「遊べる」針で、ダンスミュージックをはじめ、あらゆるジャンルの音楽でリスナーの心を「盗む」針です。
まさに柴田です。グランドでは塁を盗み、銀座では女心を盗む。そして、トレードマークが赤い手袋。
そうなんです。この「樽屋レコードカートリッジ01M」は色が赤で、トーンアームに装着すると、まるで赤い手袋を付けているかのようなのです。

 

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【主な仕様】
型番:樽屋 01M 赤針
発売:1997年
販売元:有限会社アベインターナショナル

 

2番「土井正三」をオーディオに例えたなら

土井正三は兵庫県神戸市出身の内野手。現役時代の背番号は「6」と「66」。走塁の技術が高く、1969年の日本シリーズ(阪急戦)での本塁突入は今も語りぐさとなっています。この走塁は「奇跡の走塁」と評され、土井は「忍者」と称されたものでした。
打撃技術も高く、1975年には史上93人目の1000本安打を達成。また、右方向を狙ったり、追い込まれてもファウルで粘ったりと、玄人好みのバッティングをする選手でした。
しかし、何より評価されたのは、当時のクリーンナップ「王」や「長嶋」へのつなぎ役としての仕事でした。

そんな土井をオーディオに例えるなら、もちろん分類は「ケーブル」です。そして、個人的には「すきまケーブル」通称「忍者ケーブル」に例えたいところですが、こちらはテレビ用ケーブルです。したがって、ここではオーディオケーブル「Zonotone  6.5N・AC-2000 Meister」を推薦します。

Zonotone(ゾノトーン)は、オルトフォンジャパンの元社長「前園俊彦」が立ち上げたブランドです。今や「オーディオケーブルの代名詞」と呼ばれ、オーディオファンに絶大な人気を誇るケーブルメーカーです。そして、そのZonotoneが立ち上がり「2番目」の年に、2周年記念モデルとして発表したのが「6.5N・AC-2000 Meister」。

ケーブルの構造は、マルチストランド・2芯ダブルシールド。導体は6Ncu、5NCu、PCOCC、純銀コートOFCのハイブリッド。絶縁体は高純度ポリエチレンで、シールドはアルミラップと高密度銅の編組。プラグは接点が24kメッキ、ボディはニッケルメッキです。

高解像度で透明感も良く、ワイドレンジ。二塁手として広い守備範囲が定評だった土井さながら、このケーブルも高音だけでなく中・低音もしっかり聞かせる広い音範囲が魅力です。

直球、カーブ、シュートなど、どんな球種にも対応し、クリーンナップへつなげた土井。この「6.5N・AC-2000 Meister」も、クラシック、ジャズ、ロックなど、あらゆる種類の音楽的電気信号をそつなく伝え、オーディオ機器をつなぎます。

 

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引用元:Zonotone

 

【主な仕様】
型番: 6.5N・AC-2000 Meister
発売:2009年
販売元:株式会社 前園サウンドラボ

 

3番「王貞治」をオーディオに例えたなら

王貞治は東京府東京市本所区(現・東京都墨田区)出身の内野手。現役時代の背番号は「1」。 ジャイアンツの永久欠番 として1989年3月16日に認定されています。
言わずもがな、日本が誇るホームランバッター。通算安打は 2786 、プロ通算打率は3割1厘。そして通算本塁打は 868本ですが、日本シリーズ、オールスター、東西対抗戦、日米野球戦、オープン戦を含めた生涯通算では、1000本を超える1032本のホームランを放っています。

今でこそ人格者の王貞治ですが、意外にも若い頃は悪かったらしく、銀座や赤坂のクラブ通いをする門限破りの常連でした。巨人の寮長を長年務めた武宮敏明は、「歴代の3ワルは王、柴田勲、堀内恒夫」と言っています。

しかし、当時のコーチである荒川に、酒・煙草・女の全部をやめて野球に専念するよう言われると、それまでの行動が嘘のように改心。「世界の王」へと歩み始め、今に至ります。
趣味はピアノ。

そんな王をオーディオに例えるなら、「アキュフェーズ A200」でしょうか。

そもそもアキュフェーズは、一部上場企業「トリオ」のお金ばかりを求める方針を悔い改め、「理想のオーディオ機器をつくる」という理念のもとに設立された企業です。理想とする打撃を求めるべく改心した王貞治と似ています。

そして、件の「A200」は、アキュフェーズ創業40周年記念モデルの「3番目」、第3弾として、プリアンプ「C-3800」、セパレート型SACDプレーヤー「DP-900」「DC-901」に続き発表された純A級パワーアンプです。制作コンセプトは、最高峰の性能と音質の追求。

M-6000の卓越した構造技術を導入し、大型ヒートシンクを筐体の両サイドに配置。2台の完全同一回路のパワーアンプ・ユニットを並列動作させ、極めて低出力インピーダンスのパワーアンプです。また、最高グレードの素材や回路、パターン技術などを駆使して、ダンピング・ファクター1000以上という驚異的な値を達成しています。

さらに、特筆すべきはSN比。入力部にダブル構成のインスツルメンテーション・アンプ方式を導入し、「ゲイン最大時126dB」「ゲイン-12dB時132dB」という驚きのSN比に成功。これはアキュフェーズのパワーアンプで歴代最高の性能です。

そして、王貞治の趣味であるピアノの音も、「アキュフェーズ A200」は極めて美しい音色で再現すると好評です。
価格はペアで250万円。

 

a-200

引用元:アキュフェーズ

 

【主要規格】
定格連続平均出力(20~20,000Hz間):
ノーマル仕様時;800W/1Ω 400W/2Ω 200W/4Ω 100W/8Ω
ブリッジ接続(2台);1,600W/2Ω 800W/4Ω 400W/8Ω
連続最大出力(1kHz):1,000W/1Ω 630W/2Ω 360W/4Ω 180W/8Ω
全高調波ひずみ率:0.05%(2Ω負荷) 0.03%(4〜16Ω負荷)
周波数特性:
定格連続平均出力時;20~20,000Hz +0 -0.2dB
1W出力時    ;0.5~160,000Hz +0 -3.0dB
負荷インピーダンス:
連続出力仕様時;2~16Ω
音楽信号時  ;1~16Ω
ダンピング・ファクター:1,000
入力インピーダンス:
ライン;20kΩ
バランス;40kΩ
外形寸法:W465 x H238 x D514
質量:46kg

 

まとめ

1番柴田は、まるで赤い手袋のレコード針「樽屋レコードカートリッジ01M」。
「銀座の盗塁王」の名に負けず、あらゆる音楽で人の心を盗みます

2番土井は、つなぎの名手「Zonotone  6.5N・AC-2000 Meister」。
Zonotoneが立ち上がり「2番目」の年の、2周年記念モデル。玄人ウケする土井のように、玄人が好むケーブルです。

3番王は、パワーアンプ「アキュフェーズ A200」。
王と生い立ちが似ているアキュフェーズの、最高峰のパワーです。ピアノが得意というところも同じです。

さて、今回は上位打線を例えてみました。
次回は「4番長嶋」からです。楽しみにお待ちいただければ光栄です。
では、また近々お目にかかります。

皆さんのオーディオライフが、V9巨人の上位打線のように、つながりが美しくなることを祈りつつ。

じぇじぇじぇ。

2013年の流行語大賞にもなったこの言葉、誰もが一度は耳にしたことがあることでしょう。思い返せば、この年の流行語大賞は史上最多の4つもあり(「倍返し!」「今でしょ」「お・も・て・な・し」、そして「じぇじぇじぇ」)、「一つに絞るのが選考委員の仕事だろう」と批判が相次いだことも記憶に新しいかと思います。

「あまちゃん」は、2013年度(平成25年度)に放送されたNHKの連続テレビ小説・第88シリーズテレビドラマ作品です。脚本は宮藤官九郎、主演は能年玲奈。放送終了後には、登場人物が子ども・親・祖父母の3世代にまたがっていてファン層が広かったこともあり、「あまロス」と呼ばれる深い喪失感を覚えた人が多いことも話題となりました。

物語前半(故郷編)の舞台は、岩手県三陸海岸沿いにある架空の町「北三陸市」。東京の女子高生だった天野アキ(能年玲奈)が、夏休みに母の故郷・北三陸で祖母の後を追って海女となるものの、ひょんなことから地元のアイドルとなる姿が描かれています。

物語後半(東京編)では、アキは地元アイドルたちを集めたアイドルグループのメンバーとしてスカウトされ、東京でアイドルを目指します。が、東日本大震災をきっかけに再び北三陸にもどり、地元アイドルとして北三陸復興に奮起する姿が描かれていました。

アキの母親・天野春子を演じたのは「小泉今日子」。そして、劇中ではアイドルの話題など1980年代の様子が多く取り扱われており、懐かしい驚きがいくつもあったものでした。

あまちゃん

じぇじぇ。
あれは、あのアイドルの名盤レコード!

じぇじぇじぇ。
あのオーディオは、名機○○!

社会現象ともなった「あまちゃん」。
あの、底抜けに明るいオープニングテーマ曲を思い浮かべながら、今日は「あまちゃん」に登場したオーディオを一緒に見てみましょう!

目次

  1. オーディオが登場した回
  2. 登場したプレーヤー
  3. 登場したアンプ
  4. 登場したチューナー
  5. 登場したレコード
  6. まとめ

 

1.オーディオが登場した回

オーディオが登場したのは、第13週「おら、奈落に落ちる」の第76話。
この回はアキが語り手に回り、物語はアキの母・天野春子の若かりし頃が中心でした。

時は1984年、夏。春子はアイドルになる日を夢見ながら、竹下通りを一本入った場所にあった「純喫茶アイドル」で、時給550円でアルバイトをしていました。マスターの甲斐さんは春子をとても可愛がり、なぜ春子がアイドルになれないのか、と世の中を不思議がっています。

たとえば、店内に「セーラー服を脱がさないで」が流れると、甲斐さんはこう言います。
「6番とか9番とか微妙だろ?歌だって、4番より春ちゃんの方が上手いしさ。まあ……そこそこカワイイんだけどね」
じぇじぇじぇ。
おニャン子6番は樹原亜紀、9番は名越美香……確かに微妙です。そして、4番は新田恵理ですが、彼女は自身のブログでこう言っています。
–——————————————————————————————————————–
そりゃ、確かに上手いとは口が裂けても言えないが…
私のソロは2番だし、私とどっこいどっこいのメンバーは沢山いたぞっ
–——————————————————————————————————————–

そんな優しい顔した辛口マスターが切り盛りしていた純喫茶アイドル。
今回ご紹介したいのは、そんな喫茶店で使われていたオーディオです。

 

2.登場したプレーヤー

純喫茶アイドルのプレーヤーは、パイオニアが1979年に発売した「PL-70」です。

pl-70

引用元:オーディオの足跡
パイオニアはスピーカーから始まったブランドながら、かねてよりアナログプレーヤーの分野でも目を見張る活躍をしていました。中でも、1978年発表の超弩級機「P3」は、その優れた性能で高評価を獲得。当時は雲の上の製品(当時の価格は650,000円)として羨望の的となった商品でしたが、今でも素晴しいプレーヤーとして人気があります。

そして、そんな「P-3」の後継機が「PL-70」です。

技術やデザインのイメージを継承し、より一般向けの高級機として発売された「PL-70」。ターンテーブルは、直径31cm、慣性質量480kg-㎠いう重量級。そして、そんな重量級ターンテーブルを駆動するモーターは、2kg-cm起動トルクをもつ、ハイトルク・クォーツPLLDCサーボ・ホールモーター。

さらに特筆すべきは、従来のワウ・フラッターの限界を大幅に超え、桁ちがいの回転精度0.009%以下を実現した「SH・ローーター方式駆動部」と、低域共振を抑え混変調歪みを大幅に低減させた「レベル可変型オイル制動方式」を採用している点です。

1981年には「PL-70LⅡ」が後継機として発表されますが、「PL-70」の方がアーム部などの仕上がりが良かったとの声もあったりするほどで、「PL-70」は今なお根強い人気を誇る機種です。
当時の価格は150,000円でした。

【主要規格】
〈フォノモーター部〉
モーター形式:リニアトルクDCホールモーター
軸受構造:SHローター方式
駆動方式:ダイレクトドライブ
制御方式:クォーツPLL
回転数:33 1/3  45rpm
回転数精度:0.001%
S/N:95dB(DIN-B)
〈トーンアーム部〉
型名:PA-70
型式:可変型オイル制動方式スタティックバランスS字型パイプアーム
〈総合〉
電源:AC100V、50Hz/60Hz
消費電力:9W
外形寸法W550 × H214 × D440 mm
重量:23kg

 

3.登場したアンプ

純喫茶アイドルのアンプは「Pioneer SA-620」。

sa-620

引用元:オーディオの足跡
SAシリーズの中では廉価な入門機にあたりますが、充分な機能と確かな音質を確保したモデルです。

抵抗やコンデンサに高精度部品を採用し、レコードの録音特性を忠実に再現。また、イコライザーアンプには低雑音タイプをさらに選別したトランジスタによる2段直結回路を採用し、S/Nの改善を実現しています。

Phono端子は2系統、テープデッキ用の端子も2組搭載。また、2系統のスピーカー端子を搭載しており、それぞれでの駆動や同時駆動が可能。さらに、2台のテープデッキの同時接続が可能です。

発売は1972年。定価は35,500円。

【主要規格】

<パワーアンプ部>
回路方式:差動1段全段直結準コンプリメンタリーOCL方式
高調波歪率:実効出力時:0.5%以下
周波数特性:15Hz~80000Hz +0 -1dB
入力感度/インピーダンス:Power Amp In:500mV/50kΩ
S/N:90dB以上(IHF、ショートサーキットAネットワーク)

<プリアンプ部>
回路方式:
イコライザーアンプ;2段直結NFB型
コントロールアンプ;NFB型
SN比:
Phono;75dB以上
MIC;80dB以上
Tuner、AUX、Tape Mon;90dB以上

〈総合〉
外形寸法:W415 × H132 × D328 mm
重量:7.9kg
消費電力:定格45W 最大110W

 

4.登場したチューナー

プレーヤー、アンプとパイオニアで揃えていた純喫茶アイドルですが、チューナーだけはパイオニアではないようです。メーカーは1969年に日立製作所の音響ブランドとして誕生した「Lo-d」。読みは「ローディ」です。

型番は1977年発売の、FM/AMチューナー「FT-440」。

ft-440

引用元:オーディオの足跡
チューニングシグナル2メーター、電子式ミューティング機能、ハイブレンドスイッチを搭載。また、位相特性に特化した2素子3段セラミックフィルターを採用しており、低歪、高セパレーションを実現。さらに、RECレベルチェックスイッチを完備しており(440Hz、FM50%変調)、録音レベルの設定が可能です。

定価は43,800円

【主要規格】
外形寸法:W435 × H166 × D377 mm
重量:7kg

 

5.登場したレコード

純喫茶アイドルは、その名の通りアイドルが好きな店主が経営する喫茶店です。そして、そんなお店の棚には、3枚のシングル盤レコードが飾られています。

一番右は、「セイントフォー / 不思議TOKYOシンデレラ」。

セイントフォーは、1982年「あなたもスターに!」というダイレクトメール形式のオーディションに応募した3万人の中から、板谷裕三子、浜田範子、鈴木幸恵、岩間沙織の4人が選ばれ、1984年11月にデビュー。アクロバットなど派手なダンスパフォーマンスと、それまでの女性アイドルと一線を画した曲調で注目を浴びた四人組のアイドルグループです。
そして「不思議TOKYOシンデレラ」はセイントフォーのデビュー曲にして、映画「ザ・オーディション」の主題歌です。オリコンチャートは最高35位、売上枚数は53,000万枚。余談ですが、彼女達のプロモーションには40億円かかったとの噂もあります。

中央のレコードは、「松田聖子/ ハートのイヤリング」。

聖子ちゃんの19枚目のシングルで、リリースは1984年11月1日。作曲は「Holland Rose」こと「佐野元春」。この「Hollnad Rose」という名前は、佐野が当時DJを務めていたラジオ番組に、リスナーの小学生が「ホール&オーツ(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)」を「ホーランド・ローズ」と書き間違えて投稿してきたのがきっかけと言われています。それにしても、洒落てます。「ホーランド・ローズ」は日本語では「オランダのバラ」。「オランダのチューリップ」より、絶対ステキですよね。
ちなみに、この曲のヒットにより、聖子ちゃんのシングル総売上枚数は1000万枚を突破します。

そして、一番左のレコードは、「クラッシュギャルズ / 炎の聖書」。

この一枚だけ、なぜかリリースが11月ではありません。リリースは8月21日です。そして、アイドルでもありません。女子プロレスラーです。
クラッシュギャルズは、長与千種とライオネス飛鳥が結成したタッグです。デビュー曲「炎の聖書」を皮切りに、1984年から解散する1990年までの間に8枚のシングルを発表しています。しばしばビューティ・ベアと比較されますが、その話題は機会があればいずれ。
いずれにせよ、純喫茶アイドルの一番左のレコードは、クラッシュギャルズの「炎の聖書」でした。

 

6.まとめ

それにしても、さすがNHKです。
オーディオは全て国産。年代も、設定の1984年より前の製品を導入していて、細部にまで矛盾が生じないよう配慮しています。ひょっとすると全部をパイオニアにしなかったのは、変な噂が立たないように気を遣った結果なのかもしれません。ただ、個人的には、プレーヤーに650,000円の「P3」、アンプに185,000円の「SA-9900」、チューナーに140,000円の「TX-9900」(これが「Lo-d FT-440」と外観がそっくり)と、パイオニアの高級品で揃えて欲しかったですが。

じぇじぇ。

いま気づいたのですが、純喫茶アイドルのスピーカーは何なんでしょう。そう言えば、一度も映りませんでした。ひょっとすると、国産のスピーカーが手配できなかったから、あえて映していないのかもしれませんね。あるいは、パイオニア「S-9500」(1984年発売)を手配したつもりが「S-9500 DV」(1985年発売)で、時代背景に1年そぐわなかったのか。

じぇじぇじぇ。

さらに、たったいま気づきました。
時代設定は1984年夏なのに、飾られていたレコードの二つは11月リリースと秋。あれ?どうしたNHK。全部のオーディオが1984年以前だったのも、実はたまたまだったとか?

いずれにせよ、皆さんのオーディオライフが、「あまちゃん」より甘いスィートなオーディオライフになることを祈っています。

「入手困難」と言われると欲しくなる

製造中止から3年「PCOCC」ケーブル

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引用:Philie-web

インターネットの普及により、いま、私たちは以前にも増して広告に接触するようになりました。

「期間限定」「数量限定」に代表される「限定」広告は、最低でも一日一回は目にするのではないでしょうか。それでも私たちは、わかっていても「限定」という言葉に弱く、ついつい心が揺らぎがちです。

 

しかし、この「限定」という言葉に弱いのは、世界中を探しても日本くらい、というのはご存知ですか。

 

その理由については様々な要因考えられますが、やはり一番大きな要因は「日本に四季がある」ことでしょう。

桜は春限りです。スイカは夏限りです。紅葉は秋限りです。白子は冬限りです。日本人は季節感を大切にします。だからこそ「一期一会」という言葉があり、どの国の言葉にも訳せない「旬」という感覚を小さな頃から身につけます。

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旬、それは「限定」です。そして限定とは、すなわち「入手困難」ということです。

 

そうなのです。

季節を愛でる日本民族は、季節のうつろいに奥ゆかしさを感じるがゆえ、限りにあるものに惹かれるのです。「入手困難」と言われると、日本人はその「困難」に立ち向かいたくなるのです。

 

オーディオファンを魅了した「PCOCC」。そのケーブルが製造中止となって早三年。当然のように入手困難です。

 

だからこそ欲しくなったりしませんか。

 

というわけで、今回はケーブルについて考えながら「PCOCC」について一緒に調べてみたいと思います。

 

目次

  1. ケーブルの音質差決定要素
  2. 導体素材の変遷
    2-1.TPC(Tough Pitch Copper):タフピッチ
    2-2.OFC(Oxygen Free Copper):無酸素銅
    2-3.LC-OFC(Linear Crystal Oxygen-Free Copper): 線型結晶無酸素銅
  3. PCOCCとは
  4. まとめ

 

1.ケーブルの音質差決定要素

 

ケーブルにより音が変わる。

そう言われ始めて四半世紀以上が経ち、今やケーブルは「オーディオアクセサリ」というより、スピーカーやアンプと同等に「ケーブル」としてカテゴライズされつつあります。皆さんもケーブルを交換して聴き比べしたり、様々な試行錯誤をしていることでしょう。

 

しかし、PCOCCケーブルの設計担当者、根岸さんは「ラジオ技術」の中でこう述べています。

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オーディオ用ケーブルの音質差について議論されるとき、導体材質がその代表として取沙汰されることが多い。たとえば”PCOCCの音はこんな音”といったぐあいである。しかしケーブルの音質を決定するのは次の3つの要素だが、このことを理解したうえでこのような表現がされているとは思えない。

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皆さんはどのようにケーブルを比較していますか。根岸さんによる音質決定三要素は

  1. 導体の材質
  2. 絶縁体の材質
  3. ケーブルの構造

です。

この3要素が複雑に関係し合い音質は決定されるため、簡単には「PCOCCの音」を識別することはできない、そう根岸さんは言っています。

 

当然ですよね。

「PCOCC」は音質差を生む要因の一つ「導体の材質」でしかありません。本当に「PCOCC」の音質を知りたければ、上記②③の要素を全く同じにしなければ真の比較になりません。

 

そこで皆さんに、是非実施していただきたいことがあります。

もしケーブルを換えて音が変わったのなら、この3要素「導体の材質」「絶縁体の材質」「ケーブルの構造」のどこが支配的であったかを考察してください。根岸さんの経験では、導体材質による改善は主に分解能に出現し、音色に関しては絶縁材およびケーブル構造が支配的だそうです。

いずれにせよ、このようなアプローチが自分好みのケーブル選択をきっと容易にします。まずは3要素を抑えてみてください。

 

 

2.導体素材の変遷

 

1970年代中頃までは、ケーブルによる音質差は全く注目されていませんでした。当時の導体素材の主流はTPC(タフピッチ銅)。それを70年代中頃から、OFC(無酸素銅)に変えることで音質差が生まれることがわかってきて、1980年頃には銅線に含まれる酸素など不純物の結晶粒界混入を防ぐため、銅線を再加熱し結晶粒を大きくしたLC-OFC(線型結晶無酸素銅)が開発されます。

そして1985年、さらなる音質向上を実現すべく、千葉工業大学の大野教授考案のOCC法による銅線「PCOCC」が商品化され、オーディオ業界ではその製造が中止される2013年まで広く採用されていました。

 

「PCOCC」が開発される前に主流だった、「TPC」「OFC」「LC-OFC」。

まずはそれぞれの素材について詳しく見てみましょう。

 

 

2-1.TPC(Tough Pitch Copper):タフピッチ

 

電解精錬によって得られる電気銅を融解し、電線にふさわしい形状に冷却、線引きを繰り返した電線用導体。それがTPC(タフピッチ)です。命名された当時は他の製法の銅と比較して強度も導電度も最高だったので「Tough Pitch(強度の高い)Copper(銅)」となりました。一般的に電線用として使用される電気用軟銅線は、ほとんどがこのTPCです。

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純度は99.9%以上と、無酸素銅ほどの純度はありませんが、高い導電率と熱伝導率を誇ります。ただ、TPCは大気中で融解、冷却が行われるため、酸素を0.02%〜0.05%程度含みます。また、600℃以上への加熱が水素と材料内部に残っている酸素とを反応させ、水蒸気を生成。水素脆性(鋼材中に水素が吸収されることにより、鋼材が脆くなる現象)があります。

 

JIS規格(日本工業規格)ではC1100に規定されています。

 

 

2-2.OFC(Oxygen Free Copper):無酸素銅

 

酸素を遮断して製造された銅なので、酸素含有量は0.001%から0.005%とごく微量。したがって「 Oxygen-Free(無酸素) Copper(銅)」と呼ばれています。

 

ガス放出が少なく、酸化物をほとんど含まない99.95%以上の高純度銅のため、真空管や水素溶接する機器、あるいは海底ケーブルのように高い信頼性が求められるシーンで主に利用されてきました。もちろん、AVケーブルとしても広く使用されています。

 

TCPより抵抗や歪みが少ないため、工業的に優れている「OFC」。実際OFCとTPCを比較すると、導電率は0.5~2%程度高く、音質はより高解像度で切れが良くなる傾向にあります。

 

JIS規格では無酸素銅(JIS H 3100, C1020)および電子管用無酸素銅(JIS H 3510, C1011)が規定されています。

 

 

2-3.LC-OFC(Linear Crystal Oxygen-Free Copper): 線型結晶無酸素銅

 

1980年代頃、日立電線株式会社がOFCの結晶を線方向に大きくなるよう開発・製造した音響用のOFCです。銅結晶を大きく成長させることにより、結晶境界に起きる信号伝達ロスを少なくしたケーブル形成が可能です。また、音質は立ち上がりが鋭く、ダイナミックになる傾向にあります。

 

銅純度は99.996%以上で酸素含有量は10ppm以下。また、TPCは信号伝送の抵抗となる結晶粒界が150,000/1mほど存在しますが、1mあたりの結晶数は20個程度です。

 

JIS規格では、H 2123『型銅』規定C1011-C1相当を満たすものとされています。

 

 

3.PCOCCとは

 

PCOCCとは「Pure Crystal Ohno Continuous Casting Process」のイニシャルに由来します。 ちなみに「Ohno」とは、この素材の開発者である千葉工業大学の大野篤美教授の苗字です。彼が考案した加熱鋳型式連続鋳造(OCC法)で製造された画期的なこの導体こそ、「信号伝送方向の結晶粒界を理論的にゼロにした理想的構造」とオーディオファンに大絶賛の「PCOCC」です。 通常、「 単結晶状高純度無酸素銅」と呼ばれています。

 

一般的な銅素材は多数の結晶から構成されており、 結晶と結晶の隙間(結晶粒界)に不純物が混入するのは防ぎようがありませんでした。しかし、鋳型を加熱して鋳造するなど特殊な製法により、単結晶状の銅線を実現。また、母材として高純度無酸素銅を使用しているため、不純物は極少。実用上用いられる長さでの結晶粒数は1個、つまり信号伝送方向を横切る結晶粒界がゼロのため、極めて歪率が低く、信号伝送のロスを軽減します。

 

単結晶であるメリットは他にもあります。

どのような高純度素材であっても、実際的にはケーブルとしての実用性を確保するため、アニール処理は欠かせません(アニール処理:材料が溶ける寸前まで温度を上げ、時間をかけて徐々に冷却すること。焼き鈍し)。

 

しかしその際、多結晶の構成では結晶粒界が存在するため、不純物の混入は避けられません。そのため純度は著しく低下します。しかし、PCOCCは結晶粒界を持たないため、アニール処理の段階でも不純物が非常に混入しづらく、最終的にケーブルとして完成した状態でも高純度を維持しており、結晶構造も均一な方向に揃う特徴を持ちます。

 

ちなみに、PCOCCには2種類あります。「PCOCC-H」と「PCOCC-A」で、前者がアニール処理を施していないもの、後者がアニール処理を施したものです。

PCOCCは単結晶のため非常に硬く、したがってアニール処理を施された「PCOCC-A」へと変わることにより、非常に柔軟な素材へと変化し、導通性・伸び率ともに向上します。また音質は非常に癖が無く、ワイドレンジに感じられる傾向にあります。

 

しかしこのPCOCC、オーディオファンには大人気でしたが、製造元である古河電工は2013年、製造中止を発表します。

 

確かに、オーディオ業界ではオヤイデ電気を筆頭に、サエク、アコースティックリバイブ、クリプトン、ナノテックなどがPCOCC-Aを採用。アニール処理前のPCOCC-Hに至っては、オーディオテクニカ等さらに多くのオーディオアクセサリーメーカーが導体に使用しています。が、古河電工のような大手電線メーカーにとっては、PCOCC-H/Aの生産量は銅線の全生産量の1%にも達しないニッチな部門です。いくらオーディオ業界で需要があると言っても、PCOCC-H/Aを消費する量は年間数十トンほど。不採算分野でした。

 

そのため、音質面でも最高の評価・支持を得ていたPCOCCは、1986年から2013年にわたる約20年間のロングセラーを記録したものの発売中止に至り、幻のケーブルとなったのです。

 

 

4.まとめ

 

古河電工が製造を中止した今や、古河電工の商標登録であるPCOCCは非常に入手困難なケーブルです。そこで、もしお持ちのようでしたら、大事に使って欲しいと思います。そして、もし余っているようなら、必要とする人に譲ってあげてください。一方、もしまだPCOCCを未体験の方は、どうにか手に入れて是非その音を聞いてみてください。あなたのオーディオライフがより豊かになること必至です。

 

ただ、技術は日々進化しており、当時はPCOCCを超えるケーブルの開発は不可能と言われていましたが、最近では「PCOCCを超えるかも?」というケーブルも開発されつつあります。「PC-Triple」や「102 SSC」です。

 

いずれにせよ、「神は細部に宿る」と言います。きっと、オーディオの神はケーブルに宿ります。

 

この記事がきっかけで、オーディオの神が皆さんの元に降臨することを祈っています

「実におもしろい」

が口癖の帝都大学理工学部物理学科准教授・湯川学(福山雅治)は、頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗。そんな湯川が女性刑事からの依頼を受け、超常現象にも似た事件を美しく解決していくのがテレビドラマ「ガリレオ」です。

これが「実におもしろい」。

原作者は「東野圭吾」。江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞長編部門、直木三十五賞、本格ミステリ大賞小説部門、中央公論文芸賞など数々の賞を受賞している日本を代表する作家です。

第1作となった連続テレビドラマは、2007年10月からフジテレビ系列の「月9」枠で放送。2008年にはテレビドラマの劇場版「容疑者Xの献身」、2013年6月には映画第2弾「真夏の方程式」が公開。そして2013年4月からは、第2シリーズが「月9」枠で放送されました。

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第1シリーズは平均視聴率20%越。人気の理由は、やはり福山雅治扮する湯川のキャラクター設定でしょう。湯川はとにかく博学で、あらゆる分野に精通しています。したがって、様々な分野の方から共感を得ているのですが、それは私たちオーディオファンにとっても例外ではありません。湯川は劇中でオーディオについても語っているのです。

これが「実におもしろい」。

というわけで、テレビドラマ「ガリレオ」に登場したオーディオ機器について調べてみました。

*本文中にストーリーの核心に迫る記述があります。

目次

  1. あらすじ
  2. 登場したアンプ
  3. 登場したスピーカー
  4. 登場したヘッドフォン
  5. 事件を解決に導いた、オーディオのとある事象
  6. まとめ

 

1.あらすじ

湯川がオーディオについて語るのは、テレビドラマ「ガリレオ」第1シリーズ第8話「霊視る(みえる)」。

とある晩、料理研究家の美鈴はストーカーに刺殺されます。しかし、 被害者の妹・千晶(釈由美子)は、美鈴がすでに死亡していた時間に、姉の美鈴が家の窓を覗き込む姿を見たと主張します(だからタイトルが「霊視る(みえる)」なのです)。

その話を聞いた湯川は、テレポーテーションの可能性があると面白がり、容疑者である小杉の家に赴き調査を開始します。そこで湯川は、事件を解決へと向かわせる「オーディオ」を発見するのですが・・・・・・。

 

2.登場するアンプ

湯川は、容疑者である小杉の部屋でオーディオを発見すると、思わずこうつぶやきます。

「これは素晴らしい。ラックスマンオーディオ・クラシック・スタイルだ。11年ぶりに出たセパレート型の真空管アンプだよ。僕も欲しいと思っていた」

そうです。2004年に発売された、ラックスマンのパワーアンプ「MQ-88」です。1993年の「MA-88」以来、実に11年ぶりに発表された真空管セパレートアンプです。技術畑出身の現社長・土井和幸が「社長設計プロジェクト」という名目で、自ら陣頭指揮をとって開発に取り組んだ製品です。

デザインは極めて印象的です。デザイナーからの初期提案がほぼそのまま量産でも採用され、結果、従来の真空管アンプのイメージを一新。その斬新すぎる外観は賛否両論を巻き起こしました。

真空管のチョイスは長期間にわたり安定供給が見込めることを前提に、品質と音質に定評がある銘柄のみを選別。初段のECC83SにはスロバキアのJJ製、ドライバー段の12BH7Aと出力管のKT88にはロシアのソブテック製が採用されています。

回路方式は「ムラード型」。柔と豪の両立を目指すカソード直結方式です。差動構成のドライバー段により初段で発生した2次歪みを打ち消し、出力管KT88のプッシュプル動作のバランスを安定化させ、出力段に3極管接続を採用することでKT88本来の音質を引き出しています。

また、出力トランスには、ワイドレンジ特性と力強い音質で人気を博したOY36と同等サイズを搭載。さらに、オリエントコア材を用いたトランスはシールドボックスに厳重に収納され、ノイズ対策もぬかりなし。そして、入力端子は2系統が用意されており、プリアンプ等を用いる一般的な接続にはダイレクト入力、プリアンプ等を介さずボリューム内蔵CDプレーヤーなどに直結する場合はバリアブル入力と、使用環境やシステムに応じた入力の選択が可能です。

定価は486,000円。

 

「MQ-88」

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引用元:LUXMAN

【主要規格】

  • 外形寸法:幅 400 x高さ 186 x奥行 397 mm
  • 重量:25.1kg
  • 定格出力:40W + 40W (8Ω)、50W + 50W (6Ω)、40W + 40W (8Ω)
  • 入力感度 / 入力インピーダンス:420mV/100kΩ
  • 全高調波歪率:1kHz定格 1.5%
  • 周波数特性:5Hz~90kHz +0、-3dB
  • S/N比:101dB以上
  • 回路方式 ムラードタイプ
  • 消費電力:190W(電気用品安全法)

 

3.登場するスピーカー

劇中では、湯川はラックスマンのパワーアンプ「MQ-88」にしか触れませんが、実は容疑者・小杉の部屋にあったスピーカーは、名機「B&W 804S」です。

B&Wは1966年、ジョン・バウワーズが英国ロンドン近郊のウェスト・サセックスのワーシングという町で創立。そのブランド名は、創立者であるバウワーズと、当時の支援者であるポール・ウィルキンスのイニシャルにちなみます。

B&Wというと、エポックメイキングなスピーカー「Nautilus(ノーチラス)」を思い浮かべる人も多いことでしょう。あの大きな螺旋と三本のツノは、一度見たら忘れられるはずがありません。今回ガリレオに登場した「804S」は、Nautilus800シリーズの中でも最も多く販売された商品の一つ「N804」の後継モデルです。

エンクロージャーはNautilus800シリーズより引き継がれた馬蹄形。木材を幾重にも重ねて造られた美しいカーブのあるフォルムは、目を閉じても目に浮かぶほど美しく、しかし背面と天板がラウンドしたこの造詣はフォルムの美しさだけでなく、エンクロージャーの強度増加による箱鳴り防止と内部の定在波発生の予防をも目的としています。

ポートの特徴は、フロントにフローポートと呼ばれるバスレフポートを装備していること、出口が緩やかに大きくなっていること、ゴルフボールのような窪みが数多くあること。これら三つのアイデアにより、ポートを行き来する空気が起こす風切り音を抑制、いっそう解像度の高い低音再生を可能にしています。

発売は2005年、定価は560,000円。

 

「B&W 804S」

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引用元:Phile web

【主要規格】

  • 外形寸法:238W×1020H×351Dmm
  • 質量:28kg
  • 形式:3ウェイ4スピーカー、バスレフ型
  • 使用ユニット:2×165mmロハセルコーン・ウーファー、1×150mmウォーブン・ケブラーコーン・ミッドレンジ、25mmチューブローディング・アルミニウムドーム・トゥイーター
  • 再生周波数帯域:30Hz~50kHz(-6dB)
  • 出力音圧レベル:90dB(2.83V/1m)
  • 公称インピーダンス:8Ω(最低3.1Ω)
  • クロスオーバー周波数:350Hz,4kHz

 

4.登場したヘッドフォン

容疑者小杉の自宅でオーディオを見つけた湯川は、何のためらいもなく電源を入れていきます。そこで流れる音楽はテレビドラマ版では「セビリアの理髪師 わたしは町のなんでも屋」。(原作の小説では「美女と野獣」ですが)

湯川はつぶやきます。

「いい音だ」

そしてその音色に浸り、ソファに腰掛け鑑賞するのですが、内海薫(柴咲コウ)が隣で騒ぎます。「何しに来たんですか?」「オーディオと事件に何の関係が?!」

内海を煩わしく思ったのでしょう。湯川は棚にあったヘッドフォンを取り出し耳に装着します。

 

その製品が「KOSS QZ99」。

KOSS(コス)は1953年、ジョン・C・コスによって米国ウィスコンシン州ミルウォキー市で設立されたヘッドフォンメーカーです。同社の製品は廉価だが優れたヘッドフォンを製造することで有名です。

定価は12,960円。

 

「KOSS QZ99」main_jp_qz99

引用元:TASCAM

【主要規格】

  • 質量 420g
  • 形式:密閉型
  • 周波数特性:40~20,000Hz
  • 感度:102dB SPL/1mW
  • インピーダンス:60Ω
  • コード:カール/2.4m
  • 歪率 0.3%以下

 

5.事件を解決に導いた、オーディオのとある事象

ヘッドフォンでひとり音楽を楽しむ湯川に、内海は懸命に話しかけます。が、音楽に夢中の湯川はまるで取り合わず、その態度に腹を立てた内海はボリュームのツマミを一思いにグイッと回して大音量に。

それで仰天した湯川はようやくヘッドフォンを外すのですが、次の瞬間のことです。突然顔色が変わり、自らツマミをいじって音を大きくしたり小さくしたりし始めます。そして訊ねます。

「小杉のヘアスタイルは?」

内海は答えます。「丸刈り」

これで事件は解決に向けて大きく動き出すのですが、そのきっかけとなったのが「ガリ」でした。

ガリとは、アンプの可変抵抗器(主にボリューム)の接触不良により、ツマミを回した際にスピーカーから「ガリガリ」と鳴る雑音・異音のことです。湯川の台詞を引用すれば、ツマミの潤滑油と空気中に漂うシリコン微粒子が結びついて起きる現象で、そのシリコン微粒子は、ヘアスプレーに大量に含まれています。そして、これは小杉の部屋で日常的にヘアスプレーが使われていたことを示すことなのですが、しかし小杉は丸刈りです。ヘアスプレーは使いません。したがって、常時女性がこの部屋に出入りしており、かつ最近になって部屋からヘアスプレーを持ち去った、との推理から、事件は解決していきます。

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ヘアスプレーが暖房器具のファンヒーターを故障させる話は有名ですが、オーディオにとっても天敵なんですね。

 

6.まとめ

今回は「ガリレオ」第1シリーズ 第8話「霊視る」に登場したオーディオをご紹介したわけですが、実はちょっと納得がいかないことがあります。

なぜパワーアンプが「ラックスマン MQ-88」なのに、登場したプリアンプが「マランツ製」なのか、ということです。

上述の通り、ラックスマンは2004年に「MQ-88」を発売します。しかし、このとき発売になったのは、パワーアンプ「MQ-88」だけではありませんでした。プリアンプ「CL-88」も同時に発売しています。しかし、なぜ小杉は、プリアンプにマランツを選んだのか。

わかりません。

ただ、わかっていることを最後に一つ。

ラックスマンは自社webサイトでこう言っています。

ヘアスプレーの多用で空気中のシリコン粒子がボリュームの可動部に侵入し、不具合を起こしたというストーリー。でも実際のMQ-88のボリュームはそんなに簡単にガリを発生させませんのでお知りおきを。

 

では、皆さんのオーディオライフが「実に面白い」ものになりますことを祈りつつ。