初心者必見!「オーディオケーブルの基本3ポイント」

初心者必見!「オーディオケーブルの基本3ポイント」

マウンドには豪腕の投手がいます。ベンチには切れ者の監督がいます。しかし、両者を繋ぐ伝令役がきちんと役割を果たせないなら、きっと投手も監督もその能力は充分に発揮できないことでしょう。

オーディオでも同じことが言えます。
いくら素晴しいスピーカーやアンプを持っていても、それらを繋ぐ伝令役のケーブルが充分に役目を果たさなければ、結局は宝の持ち腐れです。

オーディオ機器を繋いでいるのはケーブルです。ケーブルがあって、初めて独立した複数のオーディオ機器は、一つのオーディオ・システムになります。

そこで今回は、オーディオファンの必須知識「オーディオケーブルの基本」について、少し専門的にみてみましょう。

【目次】

  1. オーディオケーブルの役割
  2. オーディオケーブルの接続方式
  3. オーディオケーブルの種類
  4. まとめ

1.オーディオ・ケーブルの役割

1-1.オーディオとは

オーディオケーブルの基本

audio【オーディオ】
辞書で調べてみるとこうあります。「録音・処理・伝送された可聴周波数の音」
つまり、オーディオは電気信号に変換された音を意味します。

では、音と電気との間にはどんな関係があるのでしょうか。

ご存知の通り、音は空気の振動です。空気を振動させる波(音波)が私たちの鼓膜を振動させ、人は「音」を感知します。つまり、音は波です。
一方、電気(交流電源)は、時間とともに周期的に大きさと向きが変化します。グラフ化すれば、正弦波(サイン波)で表せます。つまり、電気も波です。

音も波。電気も波。

オーディオは、こうした音と電気の共通する性質を利用して、録音・処理・伝送されたサウンドを楽しむ技術です。

1-2.音と電気を相互に変換するメリット

音と電気との間には、共通する性質があることはわかりました。しかし、例えばエレキギターは、空気の振動を電気信号に変換し、再び電気信号を空気の振動に戻すことで音を出しています。
なぜ、わざわざそんな変換をしているのでしょう。
そもそも、オーディオはなぜ空気の振動を電気信号に変換して、また戻したりしているのでしょう。
その理由は、大きく分けて3つあります。

1-2-1.音の波形を変えられる

音は、空気の振動のまま波形を変えることはできません。
しかし、電気信号だと話は違います。例えば、アコースティックギター。この場合、ただ音量を増加するだけでも大変です。というのも、「強く弾く」「共鳴機構(ボディの空洞)を工夫する」などの手法しかないからです。
が、電気信号に変えてしまえば簡単です。音量を2倍にしたいなら、増幅回路(アンプ)で電圧を2倍にすればいいだけです。逆に小さくしたいなら、抵抗器などで減衰(アッテネート)させればいいだけです。

音を電気信号に変換すれば、音を編集し、自在に操ることができるようになります。その代表的な機器がアンプやエフェクタですが、いずれにせよ、音は電気信号に変換することで、いとも容易く波形を変えられるようになるのは大きなメリットです。

1-2-2.音を記録できる

音は、空気の振動をそのまま記録することはほぼ不可能です。人がどれだけ大声を発しても、それは一瞬のうちに空気中に拡散され、消滅してしまいます。
が、電気信号に変換してしまえば、録音は非常に容易です。いま、私たちの周りにあるCDや音楽ファイルの数の多さから、記録の容易さ、重要性は想像できると思います。

1-2-3.音を伝送できる

音は、空気の振動のみで伝達するには、その範囲に限界があります。人がいくら大声を発したところで、あるいは、いくら高性能な糸電話を作ったところで、その伝達距離は知れています。
が、電気信号に変換してしまえば、地球の裏側にまで届けることは可能です。
音は電気信号に変換することで、情報を遠くまで伝えることができるようになります。

1-3.ケーブルの役割

空気の振動を電気信号に変換することで、様々なメリットがあることはわかりました。
また、電気信号をどのように扱うかこそが、オーディオにとっての核だとも理解できたと思います。

では、オーディオの要である「電気信号」を流しているものは何でしょうか。

それが「オーディオケーブル」です。オーディオケーブルでは音が流れているのではなく、電流が流れています。
したがって、オーディオケーブルは非常に重要な役割を担っています。いくらアンプが信号の波形を崩さず増幅しても、スピーカーに届く途中のケーブルでその信号が崩れてしまっては、まるで意味がないからです。

そうしたこともあるからでしょう。最近ではオーディオケーブルも重要視され、非常に高性能で高価なものも販売されています。

2.オーディオケーブルの接続

ケーブルの接続には「バランス接続」と「アンバランス接続」があります。
一言で言えば、バランス接続は三本の線で接続し、アンバランス接続は二本の線で接続します。
それぞれにメリット・デメリットがあります。

2-1.バランス接続

交流電流では、電流はプラスとマイナスで行ったり来たりしており、電流が出て行く側を「HOT(ホット)」、帰ってくる側を「COLD(コールド)」と呼びます。
また、オーディオ信号は非常に小さな信号なので、ノイズの影響を多分に受けます。そのため、ケーブル内にある二本の芯線(ホットとコールド)を金網状のもの(シールド)で覆う処理が行われますが、これを「GND(グランド)」と呼びます。つまり、三種類(ホット・コールド・グランド)の信号のやり取りを行います。これがバランス方式です。
それぞれが独立しているので、非常に安定した状態で伝送できます。そのため、ノイズが少なくなるというメリットがあります。

バランス接続で代表的なケーブルは、「XLRケーブル」です。キャノン社(カメラのCanon社とは別)が作ったので、一般的には「キャノン・ケーブル」と呼ばれています。
「1、2、3」と3つのピンが認められますが、現在の国際基準では「1番=グランド」「2番=ホット」「3番=コールド」となっています。ただし、稀に「3番=ホット」がありますので注意が必要です。

2-2.アンバランス接続

アンバランス接続は二本の線で接続します。具体的には、グラウンド(シールド)をコールドとしても使用します。つまり「ホットとグランドの2種類」で信号をやりとりする方法です。バランス接続と比較するとノイズには弱くなりますが、コスト面では安価で済むというメリットがあります。

3.オーディオケーブルの種類

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3-1.マイクケーブル

その名の通りマイクをつなぐためのケーブルです。マイクから入力された音の信号をミキサーやアンプなどの機器に伝えるケーブルです。
マイクケーブルには主にバランスケーブルが用いられます。そのため、ノイズを打ち消すことができ、長い距離を引きまわすことが可能になります。

音響業界では「マイクケーブル」と言ったら両端にキャノンコネクタが付いており、長さが5m以上のものを指すことが多いようです。

3-2.立ち上げケーブル

構造的にはマイクケーブルと同じです。
ただ、PA業界ではマイクケーブルの短いものと認識されていて、マルチケーブルのボックスからミキサーに入力するためのケーブルのことを指します。
「パッチ」「パッチング」「パッチケーブル」などと呼ばれることもあります。

3-3.スピーカーケーブル

スピーカーとパワーアンプをつなぐケーブルです。
大電流に耐えられるよう、マイクケーブルなどに比べて太めの芯線を使い、プラスとマイナスとを別々にした構造となっています。信号レベルが高いためノイズが少なく、シールドされていない(アンバランス伝送)ことが多いのも特徴です。ケーブル本体は2芯または4芯の撚線が使われています。

3-4.ラインケーブル

電子楽器、音響機器、ミキサーなど、機材と機材をつなぐケーブルです。主に再生機器や録音機器と他の機材をつなぐ場合に使用します。

3-5.変換ケーブル

ケーブルの両端に異なる種類のコネクタが付いているケーブルを「変換ケーブル」と呼びます。形状の異なるコネクター同士を繋ぐための仲介に使用します。
アンプの出力端子がキャノンでスピーカーの入力端子がホーンプラグの場合、このケーブルで変換して使います。

3-6.マルチケーブル・マルチボックス

マルチケーブルとは独立した複数の回路を接続するケーブルを一つのシース内に納めて一本化した物、また両端にコネクタを接続したアセンブリです。スネークケーブルとも言われるます。主に音響・映像機器の接続に用いられます。
「マルチ」とは「複数」という意味なので、二本以上のケーブルがまとまっているものは全て「マルチケーブル」といっても間違いではないのでしょうが、通常は8チャンネル以上のマイクマルチケーブルを指します。
PAの業界では、カナレ社が世界で圧倒的シェアを占めています。

4.まとめ

ケーブルには数多くの種類があります。その理由は明確です。同じ「ケーブル」でも、その役割が違うからです。
例えば、スピーカーケーブルとラインケーブル。
確かに、ラインケーブルはスピーカーケーブルとして代替できます。しかし、容量の小さい(芯線が細い)ケーブルなので、発熱の恐れやアンプの故障の原因となりえます。
反対に、スピーカーケーブルをラインケーブルとして使用すると、スピーカーケーブルはラインケーブルのようなシールドがないので(アンバランス伝送)ノイズが悪化し、音質が悪くなるのは想像に容易いと思います。

スピーカーやアンプと違い、ケーブルはオーディオの花形ではありません。
しかし、それぞれの仕様のケーブルを使うことで、より良い音が実現できることは間違いありません。

たかがケーブル。されどケーブル。
この記事がケーブル選択の入口として、オーディオ愛好者のお役に立てれば光栄です。