メンテが命!最近大人気「アナログプレーヤーとレコード盤」の保管方法

メンテが命!最近大人気「アナログプレーヤーとレコード盤」の保管方法

近年、レコードが注目されています。

1982年にCDが発売されて以降、徐々にアナログマーケットは小さくなり、1990年代にはレコードは過去のものとして扱われていました。しかし、「アナログ音源にはCDなどのデジタル音源にはない、滑らかで優しく、つやのある音質が魅力的」と評価する人が続出。人気が再燃し始めます。昔ほどのシェアは誇りませんが、その伸び率には目を見張るものがあります。

そこで今回は、人気のレコードを長く大切にするためのアナログプレーヤーのメンテナンス方法や、レコード盤の管理方法についてご紹介いたします。

1.数字で見る「アナログ盤の人気度」

1-1.アメリカのレコード人気

米国の調査会社ニールセンの調べによると、アナログレコードの販売枚数は右肩上がりで推移しており、2010年は約280万枚だったのに対し、2014年は約920万枚、2015年は前年比約129.8%の約1190万枚にまで成長しています。

ただ、この流れをつくっているのは、今の若者だけではありません。

2015年の数字で見てみると、アナログ盤のトップセールスアルバムは、アデル『25』の約11万6000枚。そして、テイラー・スウィフトの『1989』(約7万4000枚)と続きます。これはCDのトップセールスと同じで、おそらく若者の購入が推測できます。

しかし、3位以降はピンク・フロイドの『DARK SIDE OF THE MOON』(約5万枚)、ビートルズの『ABBEY ROAD』(約4万9800枚)です。復刻盤のランクインですから、きっとこれらは古いオーディオファンが購入しています。

こうして統計を見てみると、幅広い層がアナログレコードを楽しんでいることがわかります。しかし、それはアメリカに限った話ではありません。今、世界各国でその動きは顕著で、日本でもそうしたトレンドは進んでいます。実に若者から中高年に至るまで、日本でも幅広い年代の音楽ファンがレコードを買い求めています。

1-2.日本のレコード人気

日本レコード協会の調べによると、レコードの国内生産枚数は1976年から1980年にかけて約1億9000万枚前後を記録。しかし、それをピークに下降の一途をたどり、2009年には約10万2000枚にまで減少しました。ところが、最近になってその状況は一転し、最近のレコード生産数は年々増加。2015年には約66万2000枚にまで戻しています。

売上ベースでみてみると、アナログレコードのマーケットスケールは、2007年に約6億円、2009年頃には約2億円まで低迷するも、それをボトムに2016年には約15億円まで回復しています。パッケージ全体としては、マーケットスケールは2007年の約4000億円から2016年の2400億円、配信マーケットも2007年の750億円から2016年の530億円とそれぞれ縮小している中で、アナログレコードだけは小さい市場ながらも伸びているのです。

そして、アメリカと同様、日本のアナログレコード人気もまた、中年以上のオトナたちだけの話ではなく、若者にも人気なのです。

2017年の実績を見てみます。日本レコード協会の調べによると、1位はRADWIMPSが手がけた大ヒットアニメのサウンドトラックアルバム『君の名は。』です。CDは50万枚近く売れていますが、実はアナログも5000枚以上売れています。

そして、2位と3位にランクインしたのは、1990年代に渋谷系として名を馳せたCORNELIUSのシングルレコードです。また、同じく渋谷系のPIZZICATO FIVEの小西康陽が監修したアナログ復刻盤もトップ20に3作ランクインしています。

他にも大滝詠一が4位、ザ・ビートルズが11位と13位など、中高年にとってレジェンドとも言えるべきアーティスト達が上位入りしています。

「日本で売れているCDは、実は一人一人が大量購入しているCD」
「ジャニーズJr.のCDデビューが廃止」

そんなネガティブな話題が目立ち始めたCD市場ですが、それと対照的なのが日本のレコード事情なのです。何と2017年には、ソニーが29年ぶりにアナログレコードの自社生産の再開を宣言しました。

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2.レコードのお手入れが重要な理由

そんな大人気のレコードは、アナログ再生です。

アナログ再生は針がレコードの音溝をトレースする、接触型メディアです。そして、接触部分には必ずノイズが発生するので、針が汚れていたり、音溝がクリアでなければ雑音はより大きくなります。そのため、リアルタイムのレコード愛好家は徹底してノイズを排除すべく、オーディオのメンテナンスに取り組んだものです。

また、最近になってアナログ盤やプレーヤーが売れていると言っても、古いものの方が圧倒的に多い状況に変わりはありません。昔の物にメンテナンスが重要なのは周知の通りです。

こうした理由から、アナログプレーヤーやレコード盤はお手入れが非常に大切なのです。

3.レコードプレーヤーの「故障かな?」

3-1.ターンテーブルが回らない

レコードプレーヤー本体で最も多い故障は、ターンテーブルが回らないことです。しかし、ベルトドライブ方式なら慌てる必要はないかもしれません。ベルトの交換で回り出すこともしばしばあるからです。ただ、プーリーが回転していない場合は問題です。プーリーとはベルトでターンテーブルを回転させるためのモーター軸です。このプーリーが故障していると専門的知識や高度な技術が必要なケースが多く、交換も含め素人では対応が困難だからです。

また、ダイレクトドライブ方式(DD方式)でターンテーブルが回転しないのも問題です。ほとんどの製品において修理用のサービスパーツが生産中止を迎えているため、修理をしようにもできないからです。

とはいえ、レコードプレーヤー本体は比較的に構造が単純です。湿気の多い環境で放置されていれば駆動モーターが故障したりすることもありますが、よほど保存状態が悪くない限り、重大な故障が起きることはあまりありません。

一方で、カートリッジはレコードプレーヤー本体と異なり非常に繊細です。日々の扱い方はもちろん、保管方法にも配慮していなければすぐに故障してしまうので注意が必要です。

3-2.レコードプレーヤーの音途切れ

「レコードプレーヤーの片チャンネルが鳴らない」

これもよくある症状です。アンプやスピーカー、それぞれの配線にも問題がないのに、なぜか片チャンネルだけならないというケースです。しかし、この場合はまず確認すべきことがあります。ひょっとすると簡単に直るかもしれないからです。

一般的なトーンアームとシェルは、4本のピンの接点同士が接触して導通しています。シェルは固定されていて、一方アームはバネでへこむようになっています。そして、シェルをねじ込むと接点同士が接触したまま止まります。これはネジで少し押し戻す力が接点にかかったまま圧着されている状態ですが、長期間その接点を放置しておくと、経年により錆びや汚れなどから接点不良がしばしば起きます。

ですから、この場合は接点クリーニングをしてやれば直るケースがほとんどです。
(接点クリーニングについては後述します)

4.レコードプレーヤーのメンテナンス

4-1.プーリーのお手入れ方法

前述の通り、プーリーの故障は対応が困難です。ですから、日々のメンテナンスが非常に重要です。そして、プーリーはある程度使用していると、どうしてもベルトのカスが付着して汚れてしまいます。したがって、クリーニングが欠かせません。

プーリーのクリーニングは、初心者はベルトを外さずに手入れをすることをお勧めします。用意するものは、綿棒と無水アルコールです。無水アルコール(無水エタノール)とは、濃度が95%程度のエタノールを脱水して製造する、水を含まないエタノールです。

その無水アルコールに綿棒を浸し、プーリーを回転させながら清浄します。案外キレイに見えても、白い綿棒を使えば汚れで綿棒が黒くなり、どれほど汚れていたかが確認できると思います。

ちなみに、プーリーのクリーニングは、ノイズ対策ばかりでなく音質向上にも高い効果が期待できます。ぜひ頃合いをみてクリーニングを実施しましょう。使用環境によって異なりますが、三ヶ月に一度くらいはお手入れすることをお勧めします。

4-2.プラッターのお手入れ方法

誰もがご存知の通り、ホコリは家電製品の天敵です。そして、言うまでもなく、精密機械であるオーディオにとってもホコリは良い影響は及ぼしません。が、レコードプレーヤーは重力によるホコリの落下だけでなく、静電気によってもホコリを引き寄せてしまいます。したがって、常日頃からホコリの除去作業は必要です。

特にプラッターはレコード盤を乗せる部分です。もしプラッターが汚れていれば、ホコリがレコード盤の裏面に付着し、硬化してノイズや音飛びの原因となります。レコードの音質を損なわないためにも、また、致命的な再生障害を防ぐためにも、プラッターはこまめにクリーニングしましょう。

そして、多くの方にとって盲点となっているのがプラッターの内部です。プラッターは大きくて重い部品ですが、真上に持ち上げれば抜けます。プラッター内部には意外とホコリがたまっています。こちらもこまめに外してホコリを取り除きましょう。

一般的なレコードプレーヤーにはダストカバーがありますが、中にはないものもあります。その場合は保護用カバーなどでプラッターを保護しましょう。

5.カートリッジのお手入れ方法

レコードはカートリッジで拾った微細なアナログ信号をアンプに送ることで再生します。その経路はCDプレーヤーとは異なり、いくつもの接点が存在します。カートリッジの4つの出力ピンやリード線、ヘッドシェルのリード線端子、トーンアームのシェルとの接合部分などです。そして、それらは電圧でライン系の100分の1程度という非常に小さな電力を扱っており、ちょっとした汚れやサビでも大きな影響を受けてしまいます。したがって、例えばその一ヶ所でも汚れや不具合による接触不良などがあれば、雑音にさらされたり、最悪の場合は音が出ないこともあるためクリーニングは必須です。中でも特に重要となる日々のメンテナンスが、アーム先端にあるカートリッジのお手入れです。

5-1.接点クリーニング

レコードプレーヤーで片チャンネルの音がでない場合、まず試すべきことでもある「接点クリーニング」。やり方は非常に簡単です。まず、シェルごとアームから抜き、それから繊維の残りづらい布や綿棒などで、シェル/カートリッジ両方の接合部分を磨くだけです。

このとき、いくら頑固な油汚れが見受けられても、洗剤の使用は控えましょう。一時的に良くなっても、油成分などが機器に残留し、それが経年劣化するとさらに音が悪くなったりする可能性があるからです。どうしても、と言う場合は、接点クリーナーを使いましょう。接点クリーナーには洗浄効果や接点復活の効果があります。

5-2.スタイラス(針先)のクリーニング

スタイラスに少しでも繊維などの糸クズが付着すると、それだけでノイズが発生したり、音が歪んでしまいます。その原因として最も考えられるのは、スタライスが音溝をトレースする際、もともとレコード盤に付着していたゴミをからめてしまうことです。が、安易に針先にからまったゴミを指先で取り払うことは避けましょう。針を傷めてしまう可能性が高いからです。スタライスのクリーニングは、やはり慎重に行うべきです。

そこでこの章では、スタライスをクリーニングする時に準備すべき物とその手順をご紹介します。

5-2-1.スタライスのクリーニングで準備すべき物

必須はスタイラスクリーナーです。乾式と湿式がありますが、両方用意しましょう。乾式は糸クズのよう大きなゴミを取るのに使用し、湿式は針先に付着した汚れを溶かすのに用います。

また、ミラーやルーペを揃えておくこともお勧めです。スタライスは非常に細かいため、肉眼ではなかなか見づらいからです。

5-2-1.スタライスのクリーニングの手順

「針先が減ってきた?」「針が滑ってしまう……」「高域のキレがなくなった?」

こうした症状が起こるのは、たいてい針先にゴミがたまっただけの場合が多いようです。したがって、すぐにクリーニングをしてメンテナンスするべきです。

手順は3つです。

【手順1】
まず、シェルをトーンアームから取り外します。取付けたままでもできなくはありませんが、外して行った方が無難です。

【手順2】
次に、乾式ブラシでクリーニングします。目的は、毛やカビの固まりなどのゴミを除去することです。

多くの方がスタライスクリーニングを日々のメンテナンスとしてやっていないようですが、もしその場合は、このクリーニングをするだけでも相当な音質向上が望めます。

ただし、一つだけ注意事項があります。ブラシを動かす方向です。必ず「カンチレバーの後方から前方へ(針元から先へ)」「優しく静かに拭く」ことです。逆方向や往復は厳禁です。振動系を痛めたりすることがあります。

【手順3】
乾式ブラシで清掃したら、今度は湿式クリーナーを使ってカビなどを除去します。このときも、必ず「針元から先へ」動かします。乾式クリーニングと同様、逆方向や往復はやめましょう。

また、湿式クリーニングを行った際は、必ず液が完全に乾いてから作動させてください。針先が十分乾燥していないと、砥石のような作用をしてレコードを痛めることがあります。

https://audio.kaitori8.com/topics/cartridge/

6.レコード盤の扱い方

6-1.レコード盤の正しい保管方法

レコード盤は必ずビニルに入れて、ビニルが開いた口がジャケットの上側になるようにしまいましょう。ビニルの下が開いていると、レコードを取り出す際に盤が落ちてしまうからです。

また、オーディオ機器全般にあてはまることですが、レコード盤も日の当たるところや湿気のあるところは避けて保管しましょう。いま普及しているレコード盤のほとんどは、材質が樹脂です。熱で曲がる素材です。また、レコード盤の黒い部分こそ水に浸しても問題ありませんが、センターレーベルは紙なので湿気も大敵です。

そして、横にして上に重ねていったり、斜めにして保管することも避けましょう。レコード盤が反ったりするからです。レコード盤は必ずレコード棚などに立てて保管しましょう。

6-2.レコード盤の正しい持ち方

レコード盤への指紋の付着はカビの原因となります。手の油や垢がバクテリアの栄養分となるからです。レコード盤はなるべく直接手で触れないようにしましょう。ちなみに、両手で盤の左右を持てば盤面に触れる可能性は激減します。

ターンテーブルへのセットは、両手で持ったレコード盤をそのままセンタースピンドルを狙って静かに、しかし迷わずセットしましょう。レコード盤のレーベルの擦り傷は「ひげ」と呼ばれ、レコードを乱暴に扱う人とみなされます。センタースピンドルでグリグリと孔を探さずに、迷わず一発でセットしましょう。

なお、B面にチェンジしたい時は、両手で持ったレコードをそのままくるりと半回転させればよいだけです。

6-3.レコード盤のクリーニング

レコード盤のクリーニングは、重要な日々のメンテナンスの一つです。ただ、その方法は色々あって、初心者向けや玄人向け、マニア向けなど本当に様々です。我流のものも多くあり、とんでもなくお金をかけている人もいます。

が、ここでは初心者でもやりやすい、さらにあまりお金もかからない、一般的なクリーニング方法をご紹介します。

6-3-1.レコード盤から汚れ・静電気を取り除く理由

冒頭で述べたように、レコードプレーヤーはレコード盤の音溝をスタライスがトレースし、振動を電気に変換してスピーカーから音を鳴らします。ですから、レコードの溝に詰まったホコリによる振動、あるいはレコードプレーヤー本体の振動など、物理的振動の全てはレコード針が拾い上げ、スピーカーでノイズとして再生してしまいます。

また、静電気はホコリを寄せ付ける性質があります。したがって、レコード盤に静電気が帯電するとホコリがよってきてしまい、結果的にレコード針がホコリの振動を拾ってノイズが発生してしまいます。

こうした理由から、レコード盤はこまめにメンテナンスを施し、ホコリや静電気を除去しましょう。

6-3-2.レコード盤のクリーニング方法

レコード盤の最も一般的なクリーニングは、ベルベット素材のレコードクリーナーを使う方法です。乾式と湿式がありますが、乾式はホコリの除去に使用し、湿式は、乾式クリーナーで汚れが除去できない、あるいは静電気が発生しやすい乾燥する冬場に使用します。

クリーナー使用時に注意すべきことは(乾式も湿式も)、とにかく「拭き方」です。必ず「溝に沿って」「大きな円を描くように」「優しく軽く」拭きます。特に拭く方向には注意が必要です。CDクリーニングのように、中心から外側へ向かって放射状に拭くことは絶対に避けましょう。ホコリが取れないばかりか、溝に傷をつけかねません。

また、あまり強くこすってしまうと、静電気が発生する原因となります。レコードのクリーニングのポイントは「溝に沿って」「大きな円を描くように」「優しく軽く」拭くことです。

6-3-2.レコード盤のカビの落とし方

レコード盤のカビ汚れは、一筋縄では落ちません。
そこで、大胆に「水洗い」することも時折あります。

今回は、国内で数少ないレコード生産会社の東洋化成㈱さんのツイートから引用しつつ、その方法をご紹介します。

準備する物は次の三つです。
「10倍に薄めた中性洗剤」「純水」「ベッチンなど、柔らかい布(3枚)」。

手順は次の6ステップです。
①水道水で流す
※このとき、センターレーベルにはあまり水がかからないように注意しましょう
②薄めた中性洗剤を布(1枚目)に染み込ませ、固く絞ります
③平らな所にレコードを置き、1枚目の布で音溝の汚れを拭き取ります
※レコードを拭く際は、決して音溝の垂直方向には拭かず、円周に沿って布を走らせます
④洗剤が残らないように水道水で洗い流します
⑤布(2枚目)に純水を染み込ませ、固く絞った上でレコードを拭きます
⑥乾いた布(3枚目)で拭きます

〈引用〉
https://twitter.com/toyokasei/status/794100820971130880

7.まとめ

アナログ再生は接触型メディアです。したがって、接触部分にホコリや汚れが付着すると、それだけで音質劣化が認められるばかりか、ノイズの発生が懸念されます。良い音を良いオーディオでいつまでも楽しむために、ぜひ毎日のメンテナンスを忘れないでください。

最大の注意点は、二つです。

一つが、スタライスのクリーニング方法です。
必ず「針元から先へ」動かします。逆方向や往復は厳禁です。

そして、もう一つがレコード盤のクリーニング方法です。
CDのように、中心から外へ向かって動かすことはNGです。溝に沿って大きな演を描くように拭きましょう。

この二つを厳守しないと、メンテナンスのつもりが故障原因をつくることになります。くれぐれもご注意ください。

が、反対に言えば、この二つさえ守っていれば、そうそうは重大な故障には至りません。しっかりメンテナンス&お手入れして、ぜひアナログレコード・アナログプレーヤーを、ずっとこれからも大切にしてください。

皆さまのアナログが、いつまでも優しいぬくもりを奏でますように。

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