TVドラマに登場したオーディオ〜福山雅治主演「ガリレオ」〜
「実におもしろい」
が口癖の帝都大学理工学部物理学科准教授・湯川学(福山雅治)は、頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗。そんな湯川が女性刑事からの依頼を受け、超常現象にも似た事件を美しく解決していくのがテレビドラマ「ガリレオ」です。
これが「実におもしろい」。
原作者は「東野圭吾」。江戸川乱歩賞、日本推理作家協会賞長編部門、直木三十五賞、本格ミステリ大賞小説部門、中央公論文芸賞など数々の賞を受賞している日本を代表する作家です。
第1作となった連続テレビドラマは、2007年10月からフジテレビ系列の「月9」枠で放送。2008年にはテレビドラマの劇場版「容疑者Xの献身」、2013年6月には映画第2弾「真夏の方程式」が公開。そして2013年4月からは、第2シリーズが「月9」枠で放送されました。
第1シリーズは平均視聴率20%越。人気の理由は、やはり福山雅治扮する湯川のキャラクター設定でしょう。湯川はとにかく博学で、あらゆる分野に精通しています。したがって、様々な分野の方から共感を得ているのですが、それは私たちオーディオファンにとっても例外ではありません。湯川は劇中でオーディオについても語っているのです。
これが「実におもしろい」。
というわけで、テレビドラマ「ガリレオ」に登場したオーディオ機器について調べてみました。
*本文中にストーリーの核心に迫る記述があります。
目次
1.あらすじ
湯川がオーディオについて語るのは、テレビドラマ「ガリレオ」第1シリーズ第8話「霊視る(みえる)」。
とある晩、料理研究家の美鈴はストーカーに刺殺されます。しかし、 被害者の妹・千晶(釈由美子)は、美鈴がすでに死亡していた時間に、姉の美鈴が家の窓を覗き込む姿を見たと主張します(だからタイトルが「霊視る(みえる)」なのです)。
その話を聞いた湯川は、テレポーテーションの可能性があると面白がり、容疑者である小杉の家に赴き調査を開始します。そこで湯川は、事件を解決へと向かわせる「オーディオ」を発見するのですが・・・・・・。
2.登場するアンプ
湯川は、容疑者である小杉の部屋でオーディオを発見すると、思わずこうつぶやきます。
「これは素晴らしい。ラックスマンのオーディオ・クラシック・スタイルだ。11年ぶりに出たセパレート型の真空管アンプだよ。僕も欲しいと思っていた」
そうです。2004年に発売された、ラックスマンのパワーアンプ「MQ-88」です。1993年の「MA-88」以来、実に11年ぶりに発表された真空管セパレートアンプです。技術畑出身の現社長・土井和幸が「社長設計プロジェクト」という名目で、自ら陣頭指揮をとって開発に取り組んだ製品です。
デザインは極めて印象的です。デザイナーからの初期提案がほぼそのまま量産でも採用され、結果、従来の真空管アンプのイメージを一新。その斬新すぎる外観は賛否両論を巻き起こしました。
真空管のチョイスは長期間にわたり安定供給が見込めることを前提に、品質と音質に定評がある銘柄のみを選別。初段のECC83SにはスロバキアのJJ製、ドライバー段の12BH7Aと出力管のKT88にはロシアのソブテック製が採用されています。
回路方式は「ムラード型」。柔と豪の両立を目指すカソード直結方式です。差動構成のドライバー段により初段で発生した2次歪みを打ち消し、出力管KT88のプッシュプル動作のバランスを安定化させ、出力段に3極管接続を採用することでKT88本来の音質を引き出しています。
また、出力トランスには、ワイドレンジ特性と力強い音質で人気を博したOY36と同等サイズを搭載。さらに、オリエントコア材を用いたトランスはシールドボックスに厳重に収納され、ノイズ対策もぬかりなし。そして、入力端子は2系統が用意されており、プリアンプ等を用いる一般的な接続にはダイレクト入力、プリアンプ等を介さずボリューム内蔵CDプレーヤーなどに直結する場合はバリアブル入力と、使用環境やシステムに応じた入力の選択が可能です。
定価は486,000円。
「MQ-88」
引用元:LUXMAN
【主要規格】
- 外形寸法:幅 400 x高さ 186 x奥行 397 mm
- 重量:25.1kg
- 定格出力:40W + 40W (8Ω)、50W + 50W (6Ω)、40W + 40W (8Ω)
- 入力感度 / 入力インピーダンス:420mV/100kΩ
- 全高調波歪率:1kHz定格 1.5%
- 周波数特性:5Hz~90kHz +0、-3dB
- S/N比:101dB以上
- 回路方式 ムラードタイプ
- 消費電力:190W(電気用品安全法)
3.登場するスピーカー
劇中では、湯川はラックスマンのパワーアンプ「MQ-88」にしか触れませんが、実は容疑者・小杉の部屋にあったスピーカーは、名機「B&W 804S」です。
B&Wは1966年、ジョン・バウワーズが英国ロンドン近郊のウェスト・サセックスのワーシングという町で創立。そのブランド名は、創立者であるバウワーズと、当時の支援者であるポール・ウィルキンスのイニシャルにちなみます。
B&Wというと、エポックメイキングなスピーカー「Nautilus(ノーチラス)」を思い浮かべる人も多いことでしょう。あの大きな螺旋と三本のツノは、一度見たら忘れられるはずがありません。今回ガリレオに登場した「804S」は、Nautilus800シリーズの中でも最も多く販売された商品の一つ「N804」の後継モデルです。
エンクロージャーはNautilus800シリーズより引き継がれた馬蹄形。木材を幾重にも重ねて造られた美しいカーブのあるフォルムは、目を閉じても目に浮かぶほど美しく、しかし背面と天板がラウンドしたこの造詣はフォルムの美しさだけでなく、エンクロージャーの強度増加による箱鳴り防止と内部の定在波発生の予防をも目的としています。
ポートの特徴は、フロントにフローポートと呼ばれるバスレフポートを装備していること、出口が緩やかに大きくなっていること、ゴルフボールのような窪みが数多くあること。これら三つのアイデアにより、ポートを行き来する空気が起こす風切り音を抑制、いっそう解像度の高い低音再生を可能にしています。
発売は2005年、定価は560,000円。
「B&W 804S」
引用元:Phile web
【主要規格】
- 外形寸法:238W×1020H×351Dmm
- 質量:28kg
- 形式:3ウェイ4スピーカー、バスレフ型
- 使用ユニット:2×165mmロハセルコーン・ウーファー、1×150mmウォーブン・ケブラーコーン・ミッドレンジ、25mmチューブローディング・アルミニウムドーム・トゥイーター
- 再生周波数帯域:30Hz~50kHz(-6dB)
- 出力音圧レベル:90dB(2.83V/1m)
- 公称インピーダンス:8Ω(最低3.1Ω)
- クロスオーバー周波数:350Hz,4kHz
4.登場したヘッドフォン
容疑者小杉の自宅でオーディオを見つけた湯川は、何のためらいもなく電源を入れていきます。そこで流れる音楽はテレビドラマ版では「セビリアの理髪師 わたしは町のなんでも屋」。(原作の小説では「美女と野獣」ですが)
湯川はつぶやきます。
「いい音だ」
そしてその音色に浸り、ソファに腰掛け鑑賞するのですが、内海薫(柴咲コウ)が隣で騒ぎます。「何しに来たんですか?」「オーディオと事件に何の関係が?!」
内海を煩わしく思ったのでしょう。湯川は棚にあったヘッドフォンを取り出し耳に装着します。
その製品が「KOSS QZ99」。
KOSS(コス)は1953年、ジョン・C・コスによって米国ウィスコンシン州ミルウォキー市で設立されたヘッドフォンメーカーです。同社の製品は廉価だが優れたヘッドフォンを製造することで有名です。
定価は12,960円。
「KOSS QZ99」
引用元:TASCAM
【主要規格】
- 質量 420g
- 形式:密閉型
- 周波数特性:40~20,000Hz
- 感度:102dB SPL/1mW
- インピーダンス:60Ω
- コード:カール/2.4m
- 歪率 0.3%以下
5.事件を解決に導いた、オーディオのとある事象
ヘッドフォンでひとり音楽を楽しむ湯川に、内海は懸命に話しかけます。が、音楽に夢中の湯川はまるで取り合わず、その態度に腹を立てた内海はボリュームのツマミを一思いにグイッと回して大音量に。
それで仰天した湯川はようやくヘッドフォンを外すのですが、次の瞬間のことです。突然顔色が変わり、自らツマミをいじって音を大きくしたり小さくしたりし始めます。そして訊ねます。
「小杉のヘアスタイルは?」
内海は答えます。「丸刈り」
これで事件は解決に向けて大きく動き出すのですが、そのきっかけとなったのが「ガリ」でした。
ガリとは、アンプの可変抵抗器(主にボリューム)の接触不良により、ツマミを回した際にスピーカーから「ガリガリ」と鳴る雑音・異音のことです。湯川の台詞を引用すれば、ツマミの潤滑油と空気中に漂うシリコン微粒子が結びついて起きる現象で、そのシリコン微粒子は、ヘアスプレーに大量に含まれています。そして、これは小杉の部屋で日常的にヘアスプレーが使われていたことを示すことなのですが、しかし小杉は丸刈りです。ヘアスプレーは使いません。したがって、常時女性がこの部屋に出入りしており、かつ最近になって部屋からヘアスプレーを持ち去った、との推理から、事件は解決していきます。
ヘアスプレーが暖房器具のファンヒーターを故障させる話は有名ですが、オーディオにとっても天敵なんですね。
6.まとめ
今回は「ガリレオ」第1シリーズ 第8話「霊視る」に登場したオーディオをご紹介したわけですが、実はちょっと納得がいかないことがあります。
なぜパワーアンプが「ラックスマン MQ-88」なのに、登場したプリアンプが「マランツ製」なのか、ということです。
上述の通り、ラックスマンは2004年に「MQ-88」を発売します。しかし、このとき発売になったのは、パワーアンプ「MQ-88」だけではありませんでした。プリアンプ「CL-88」も同時に発売しています。しかし、なぜ小杉は、プリアンプにマランツを選んだのか。
わかりません。
ただ、わかっていることを最後に一つ。
ラックスマンは自社webサイトでこう言っています。
ヘアスプレーの多用で空気中のシリコン粒子がボリュームの可動部に侵入し、不具合を起こしたというストーリー。でも実際のMQ-88のボリュームはそんなに簡単にガリを発生させませんのでお知りおきを。
では、皆さんのオーディオライフが「実に面白い」ものになりますことを祈りつつ。