「スピーカーの種類」オーディオ解説書その8

スピーカーはエンクロージャーの形状によりいくつかに分類することができます。エンクロージャーとは、一言で言えばスピーカーユニットを収納する箱のことで、キャビネットとも呼ばれています。一見すると、エンクロージャーはデザイン面のみが重視されがちですが、実はもっと本質的な理由が他にあります。

そこで今回は、スピーカーのエンクロージャーに着目し、その分類について解説します。

目次

  1. エンクロージャー
    1-1.エンクロージャーとは
    1-2.エンクロージャーの進化
  2. スピーカーシステムの分類
    2-1.平面バッフル・後面開放型(ダイポール型)
    2-2.密閉型(シールド型、アコースティック・エアー・サスペンション型)
    2-3.バスレフ型(バスレフレックス型、位相反転型、ベンテッド型)
    2-4.パッシブラジエーター型(ドロンコーン型)
    2-5.ASW型(ケルトン型)
    2-6.共鳴管方式
    2-7.バックロードホーン型
    2-8.フロントロードホーン型
  3. まとめ

1.エンクロージャー

1-1.エンクロージャーとは

エンクロージャー (enclosure) は「囲い込むもの」という意味の英語で、機械類を格納する筐体のことです。しかし、一般的に我が国では、「エンクロージャー」と言えばスピーカー用の、それも全帯域用または低音域用のものを指します。

エンクロージャーの主な役割は、スピーカーユニットの前面から出る音と背面から出る音の分離です。スピーカーユニットの振動板は前後相互に逆相の音を放射します。そのため、これらが干渉すると低音域が打ち消し合ってしまい、低音があまり響きません。そこでスピーカーユニットをエンクロージャーに格納し、低音を再生します。

実際、スピーカーユニットをエンクロージャーから取り外し、裸の状態で鳴らせばそれは体感できます。恐ろしいほど低音が出なくなるはずです。しかし、もう一度エンクロージャーに取付ければ、まるで水を得た魚のように低音が響き渡ります。

そうです。エンクロージャーの本質的な役割は、低音を鳴らすことなのです。

1-2.エンクロージャーの進化

低音再生を得意とするウーファーも、ユニット単体ではまるでその性能は発揮できません。前述の通り、コーンの前面と背面では音の位相が反対になっていて、互いに打ち消してしまうからです。構造的には、コーンが前に動いて空気を押しても、背面側の空気圧が下がるため互いにキャンセルしてしまう、というわけです。さらに、このキャンセル効果は波長の長い低音ほど強く現れる傾向にあります。そのため、エンクロージャーがなければ低音は響きません。

そこで先人は、バッフル板でユニットの前後をセパレートすることを思いつきます。バッフル板とは、流体の流れ中に設ける、流れを阻止する板のことです。この環境下になると、若干低音が出始めます。前後の空気の移動をバッフル板が遮るからです。しかし、バッフル板を回り込むようにして周りから音の移動が発生するため、バッフル板だけではまだ充分に低音は響きません。そこで誕生したのが「平面バッフル」です。 柵のように、バッフル板を壁のように大きくしたものです……と言えば聞こえは良いかもしれませんが、要するに大きな板一枚にユニットを取付けただけのものです。

ただ、この平面バッフルでは、低音再生能力を高めようとすると非常に面積の大きなバッフル板が必要となります。そこで生み出されたのが、バッフルを後ろに折りまげる「後面開放型」、別名「ダイポール型」です。「コ」の字にバッフルが折り曲げられた後面開放型は、小さい面積のバッフル板でも平面バッフルに近い効果が得られます。また、ユニットの背面がオープンになっているので、「開放的でナチュラルなサウンド」と、今なお高い評価を与えるユーザーも多くいます。

そして、次に開発されたのが「密閉型エンクロージャー」です。「コ」の字だったエンクロージャーを完全に閉じて、ユニットをリアまで全部覆うスタイルです。現在のスピーカーで最も採用されているエンクロージャーの型です。

このように、エンクロージャーは低音を再生するために生まれ、進化を果たしてきたのです。

「スピーカーの歴史」オーディオ解説書その7

2.スピーカーシステムの分類

前段まででエンクロージャーの進化の過程を見てきましたが、次はエンクロージャーの分類について解説します。ここでは主なスタイルとして、「平面バッフル・後面開放型(ダイポール型)」「密閉型(シールド型、アコースティック・エアー・サスペンション型)」「バスレフ型(バスレフレックス型、位相反転型、ベンテッド型)」「パッシブラジエーター型(ドロンコーン型)」「ASW型(ケルトン型)」「共鳴管方式」「バックロードホーン型」「フロントロードホーン型」の8つを紹介します。

2-1.平面バッフル・後面開放型(ダイポール型)

平面バッフルは、先ほどお話しした通りの方式です。一枚の平らな板にスピーカーユニットを取り付けたものです。バッフル板が、スピーカーユニットの前面から出る音と背面から出る音を分離し、低音の再生を実現します。

平面バッフルにおける理想形は、どこまでも続く無限大バッフルです。これであれば、背面の音が前面に回り込んで干渉することはありません。が、現実的にはそんなバッフル板を制作するのは不可能です。そのため、実際の有限な平面バッフルでは背面の音が前面に回折して干渉しないよう、大きな板を用いて低音域を再生します。

ただ、平面バッフルで充分に低音を響かせようとすると、とても大きな板を必要とするため取扱が面倒です。そこで誕生したのが、平面バッフルをコの字に折り曲げ、背面を開いた箱状のものです。「後面開放型」あるいは「ダイポール型」と呼ばれているものです。(ただし、後ろが開いているため、箱の奥行きが小さければ平面バッフルとほぼ効果は変わりません)

平面バッフルも後面開放型(ダイポール型)も、長所はユニットの動作を抑えることなく、のびのびと音を鳴らせる点です。しかし、どんなユニットにも適している訳ではありません。磁気回路が強力なスピーカーユニットでは過制動となって現れるため、さほど強力ではない磁気回路を持ち、振動板重量が軽いスピーカーユニット向きと言われています。そのため、アンプの出力があまり大きくない時代では重宝され、特に古い真空管ラジオやアンプを搭載していない原始的なラジオのスピーカーは、このタイプが最も採用されました。昔の古いラジオは後面が開いていて、内部構造が見られるようになっていたのはそのためなのです。

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2-2.密閉型(シールド型、アコースティック・エアー・サスペンション型)

密閉型はスピーカーユニットを開口の無い密閉された箱に取り付け、スピーカーユニット背面から出る音を箱の中に封止する形式です。 シールド型、またはアコースティック・エアー・サスペンション型とも呼ばれています。

先述の通り、スピーカーの振動板が振動すると、その前面と後面から出た音は逆位相になっています。そのため、振動板の背面から出た音が前面に回り込むと、お互いが打ち消し合い音が聞こえなくなります。音の回折効果は低音になるほど大きいので、低音を鳴らすには振動板の背面から出る音をいかに遮断できるかが重要になってきます。

そして、その課題を最もシンプルに解決したエンクロージャーの一つが、密閉型です。スピーカーユニットの背面を箱で覆って密閉し、振動板の背面から出る音を閉じ込める構造になっています。通常、その箱の中には吸音材が詰められます。

この方式においては、箱の内容積が大きくなればなるほど、あるいは、箱の前面が広くなればなるほど、理想的な平面バッフル(無限バッフル)に近いものとなります。そのため、色づけが少なく、クセのない素直な音が響きます。反対に、内容積が小さくなればなるほど箱の中の空気がバネの役割となって振動板を元の位置に戻そうとするため、低音限界が高くなります。

密閉型は低音増強効果は小さいものの、低音が下降しながら伸び、急激に減衰しない特徴があります。そのため、密閉型を採用したスピーカーシステムでは、この特徴を生かしたものが多い傾向にあります。

一般的によく見られるのは、ブックシェルフ型と呼ばれる中・小型の密閉型スピーカーです。多めの吸音材を充填したエンクロージャーに、やや重い振動板のスピーカーを取り付けています。振動板の慣性質量により意図的に中高音の能率を低下させ、低音域まで同等の音圧で再生するわけです。

また、イコライザーを介して、電気的に中高音の音圧を抑えて低音を増強し、高音から低音までの音圧をフラットにするケースや、マルチウェイスピーカーシステムにおいては、高音域スピーカーユニットの能率を下げているものもあります。

このようなスピーカは、真空管アンプが主流の時代では、音量が小さすぎて実用的ではありませんでしたが、現代のアンプのように大出力が可能な時代には低域まで十分な音量を鳴らすことができます。

箱が密閉されているため中に熱がこもり、放熱には不利な方式ですが、現在、市販されているスピーカーは多くがこの方式を採用しています

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2-3.バスレフ型(バスレフレックス型、位相反転型、ベンテッド型)

バスレフ型は英語の bass reflex(バス レフレックス)の略称ですが、日本では「バスレフ」と呼ぶのが一般的です。和訳すると「位相反転型」です。後述しますが、バスレフ型にはダクト(ポート)が設けられていることから、「ベンテッド型(vented;空気の通気口を意味する英語。孔)」とも呼ばれています。

スピーカーは前面からも裏側からも音が出ています。そして、スピーカーのコーンが前に出た際に鳴る音を「正相」と言い、反対に、この時スピーカーの裏側から見るとコーンは引っ込んでいますから、裏側からの音を「逆相」と呼びます。

位相の音(特に低音)は互いに打ち消し合い、聞こえなくなってしまいます。そこで、バスレフ型ではスピーカーユニット後面から発生する音の低音域をヘルムホルツ共鳴によって増幅します。

ヘルムホルツ共鳴とは、開口部を持つ容器の内部にある空気がばねとして作用し、共鳴(共振)することで音が発生することです。

ヘルムホルツ共鳴は、私たちの身の回りでも多くあります。最も日常的な例を挙げると、びんの開口部に横から息を吹きかけると、一定の高さで音が発生します。しかし、びんの中に水を入れると発生する音は高くなります。これは、びんの内容積が減少したからです。ちなみに、口笛も口腔の内容積や唇の開き方などを加減して音高を変えているため、ヘルムホルツ共鳴の一種です。

つまり、バスレフ型は箱にダクト(ポート)を設けてスピーカー本体をヘルムホルツ共鳴器とし、その共鳴によって低音域を増強。結果、位相を反転させ、スピーカーユニット背面で駆動する形式というわけです。

バスレフ型では小さな箱で豊かな低音を得ることが可能ですが、箱の内容積や共鳴周波数をスピーカーユニットの特性に合わせて設計する必要があり、設計が悪いと癖の強い低音になってしまうばかりか、そもそも共鳴周波数より低い周波数ではスピーカーユニット前面から出る音と打ち消し合ってしまう特徴があります。

ポートから共鳴周波数付近以外の音漏れがあったり、風切り音が出ることもあるという欠点もありますが、いま市販スピーカーに最もよく採用されている形式です。

2-4.パッシブラジエーター型(ドロンコーン型)

小型スピーカーは低音再生を苦手とし、バスレフ型が採用されるケースが多い傾向にあります。しかし、低音の解像度感が低くぼやけた音になったり、低音の楽器の音色が音程によって変わってしまったりと、デメリットも発生しやすい方式です。

そこで開発されたのが、バスレフ型から発展したパッシブラジエーター型(ドロンコーン型)です。バスレフ型のポートの代わりにパッシブラジエーターを用いるため「パッシブラジエーター型」と呼ばれています。ドロン(なまけもの)コーンとも呼ばれていますが、駆動系を持たず、振動板だけのスピーカーユニットです。

動作原理はバスレフ型とほぼ同じです。バスレフ型のポートにはないサスペンションが付属する点が異なりますが、通常とても柔らかいサスペンションとしてバスレフ型と大差ない動作となるようにします。

パッシブラジエーターは磁気回路のないスピーカーをメインスピーカーの同軸線上に設置します。メインスピーカーの背圧で振動板を揺らし、低音の増強を図るわけです。一定の周波数で共振し、バスレフポートと同じような低音放射の作用があるため、近年ではサブウーファーによく使われています。

バスレフ型と比較すると、風切り音が出なかったり、パッシブラジエーターが不要な音漏れを防いだりとバスレフ型のデメリットを補完するばかりか、音のコントロールが容易なため、音質を重視するにはとても有効な方法と言われています。

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2-5.ASW型(ケルトン型)

「ASW(アコースティックウーハー)型」は日立が命名し、「ケルトン型」は発案者のH.ロングによって命名されました。①バスレフ型のスピーカーユニット前面を密閉箱で塞ぐ方式と、②ヘルムホルツ共鳴器で塞ぐ方式の二通りがありますが、いずれもスピーカーユニット前面から放射されていた高域を遮断するため、再生は共鳴周波数付近のみに限られます。そのため、中高音は鳴らなるので、主にサブウーファーとして用いられます。

①バスレフ型の前方に当たる側を密閉された箱で囲う方式

バスレフ型のスピーカーユニット前面を密閉箱で塞ぐ方式では、バスレフ型で発生するキャンセル効果が起きないため、低域の急激な減衰がありません。したがって、共鳴周波数を中心になだらかに下降する特性があります。

②バスレフ型の前方に当たる側もヘルムホルツ共鳴器とする方式

ヘルムホルツ共鳴器で塞ぐ形式では、前後の共鳴周波数が同じだと共鳴音同士が逆相となり打ち消し合います。そのため、共鳴周波数をずらす必要があり、低い方の共鳴周波数以下と高い方の共鳴周波数以上が急激に減衰し、しかしその間の帯域は平坦に再生できる特性があります。

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2-6.共鳴管方式

共鳴管方式は、スピーカーユニットとそれを取り付けるエンクロージャーの構成などにおけるスピーカーシステムの方式の一つです。スピーカーユニット背面に共鳴管をつなぎます。ヘルムホルツ共鳴による共鳴箱を「バスレフ型方式」と呼ぶのに対し、通常エンクロージャー内に折り畳まれて収められる共鳴管の固有振動を利用して低音を増強するものを「共鳴管方式」と呼んでいます。

原理はとても単純で、楽器の笛とほぼ同じです。長い直管(パイプ)はその長さに比例した波長の音に共鳴します。両端が開いた両開管は管の長さの倍の波長を、片方が開いた片開管(片閉管)は管の長さの4倍の波長を、両端が閉じた閉管は管の長さの8倍の波長が基底共振周波数となります。

トランスミッションライン型、TQWT、IR方式など、様々な手法があます。

2-6-1.トランスミッションライン型

PMC社(PMC Ltd.)が開発した方式です。片方が開いた共鳴管なので、管の長さの4倍の波長で共鳴します。管は開口部に向けて狭まっていき、吸音材を用いて奇数次高調波を封殺しています。

2-6-2.TQWT

TQWTはTapered Quarter Wave Tubeの略で、和訳すると「テーパー付1/4波長管」の意味となります。トランスミッションライン型と同様、片方が開いた共鳴管なので管の長さの4倍の波長で共鳴します。トランスミッションライン型と異なり、奇数次高調波をテーパー構造(管が開口側に向けて広がっていく構造)によって抑えています。

2-6-3.長岡鉄男による方式

オーディオ評論家の長岡鉄男氏による方式。トランスミッションライン型やTQWTと同様、片方が開いた共鳴管のため管の長さの4倍の波長で共鳴します。

奇数次高調波については、①チューニング周波数それ自体を下げる②管を途中で1回折り曲げる③カスゲード状に広げていく④スピーカーユニットに強力なものを使用する、などして抑えています。そのため、相当低い帯域まで再生しますが、相対的に低音の増強効果は小さく、部屋のコーナーや壁面に接する形で設置し、低音の効率を上げることが一般的です。

2-6-4.IR方式

オーディオ評論家の井上良治氏による方式です。管の両方が閉じており(閉管)、管の全長の8倍の波長の音を再生します。とはいえ、完全に閉じた管では音も外に出て行かないので、音を取り出すために管の側面にスリット状の孔を設けています。

2-7.バックロードホーン型

バックロードホーン型(Back-loaded horn speaker)はスピーカーユニット背面に断面積が大きくなっていく音道(ホーン)をつなぎ、スピーカーユニット後方から発生する低音をホーンによって増幅する方式です。

トランジスタアンプやデジタルアンプと比べて出力が小さい真空管アンプ全盛の時代には、大音量を獲得するには高能率のスピーカーが必要でした。しかし、高能率なスピーカーユニットに対して密閉型やバスレフ型のエンクロージャーを使用すると、中音域以上においては相対的に低音域のレベルが不足します。そこでその不足を補う目的で、バックロードホーン型のエンクロージャーが開発されました。

バックロードホーン型の最大のメリットは、何と言っても小出力で大音量が出せることです。デジタルアンプが誕生する以前では、劇場用としても使われていました。また、小型ユニットで量感ある低音を鳴らすことができ、さらにハイスピードで解像度が高く、ダイナミックレンジが広いというメリットもあります。

が、一方で、スピーカー背部に折りたたんだホーンを音道として作るため、構造が複雑化しがちです。そのため、生産コストがアップするというデメリットがあります。また、バックロードに適したユニットが必要になることや、箱を大型化してユニットを大口径にしても、低音の再生限界があること。音道を長くすると、低音の遅れが感じられることもバックロードホーン型の欠点です。

2-8.フロントロードホーン型

フロントロードホーン型はスピーカーユニット前面にホーンを付け、スピーカーユニット前方から発生する低音をホーンによって増幅する方式です。

しかし、ホーンはバックロードホーン型のように長大なものは使いません。ごく短いホーンを用います。これはユニット前面から再生する中高音に影響を与えることができないため、直線的なホーンにならざるをえないからです。また、設計上、バックロードホーン型とは異なり、ホーンを折り曲げて中高音を減衰させるものとはなっていません。

ただし、例外もあります。サブウーファーとして用いるケースでは、中高音は減衰させなければならないので、ホーンは長大かつ折れ曲がっているものもあります。ただし、こうしたシステムは、いくらユニット前面の低音をホーンで増幅するものであったとしても、フロントロードホーン型とは呼ばない傾向にあります。例えば、BOSEではスピーカーユニット前面・後面ともに折り曲げた長いホーンを通して再生する方式を「アクースティックマス型」としています。

「スピーカーの種類ごとにおける名機」オーディオ解説書その9

3.まとめ

エンクロージャーは「低音をどのように鳴らすか」を考える過程で、数多くのタイプが生み出されました。現在はアンプの進化に伴い、大出力でスピーカーを鳴らすことができることから、主流は「密閉型」「バスレフ型」の二つです。しかし、エンクロージャーによって低音の響き方は変わるため、音の好みで今なお全てのタイプが世界中で活躍しています。

確かに、スピーカーはデザインも大切です。ですから、エンクロージャーの形状は非常に重要な要素でしょう。しかし、そのエンクロージャーにより、オーディオで最も大切な「音質」が変わるのです。ぜひ皆さんは見た目だけでなく、好みの低音を響かせるスピーカーをお選びください。

スピーカーは電気信号を物理振動に変換し、音楽や音声などの音を生み出す装置です。語尾を伸ばさずにスピーカ、あるいはラウドスピーカーとも呼ばれています。スピーカーユニットと区別するため、エンクロージャーにまとめられたものをスピーカーシステムと呼ぶこともありますが、いずれにせよ、今回はそんなオーディオの花形「スピーカー」について、その歴史を軸に解説します。

目次

  1. スピーカーと電話
    1-1.アレクサンダー・グラハム・ベル
    1-2.電話誕生
    1-3.世界初のスピーカーは?
    1-4.日本発のスピーカーは?
  2. スピーカーとラジオ
    2-1.マグネチックスピーカー
    2-2.ダイナミックスピーカー
    2-3.日本のスピーカ作りの最初期
  3. ダイナミックスピーカーの進歩
    3-1.ダイナミック型スピーカーユニット
    3-2.ダイナミック型スピーカーの振動板
  4. まとめ

1.スピーカーと電話

音響機器「スピーカー」の誕生には、電話がとても大きく関わっています。というより、スピーカーは電話が基となって誕生した機材です。そこでこの章では、まずは電話について振り返ります。

電話を発明した「アレクサンダー・グラハム・ベル」はどんな人だったのか。
ベルが発明した電話は、どのように世界初のスピーカーと関わるのか。

早速のぞいてみましょう。

1-1.アレクサンダー・グラハム・ベル

アレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)は、1847年にスコットランドで生まれました。祖父、父、兄弟は弁論術やスピーチに関連する仕事をしていましたが、母と妻は聾でした。そして、そうした家庭環境で育ったこともあり、ベルは聴覚とスピーチに関する研究を基に聴覚機器の実験を行い、1876年、ついに世界初となる電話を発明し、その特許を取得します。

ちなみに、ベルは電話以外にも様々な発明をしており、光無線通信、水中翼船、航空工学などの分野でも重要な業績を残しています。そして、1888年にはナショナルジオグラフィック協会創設に関わり、科学振興および聾者教育に尽力し(あのヘレン・ケラーに家庭教師となる女性「アニー・サバリン」を紹介したのはベルです)、人類史上最も影響を及ぼした人物の1人とされることもあります。

1-2.電話誕生

電話の基となる機器を発明したのは、米国シカゴで工場を営んでいたイライシャ・グレイです。1874年、グレイは電池を接続した電磁石を手でなぞると音が発生する、という実験を成功させています。そして、それを聞きつけたベルはグレイの実験をヒントに独自の技術を追加。1875年、acoustic telegraph を開発します。

この開発は偶然の産物でした。ベルの助手「トーマス・ワトソン」が偶然にも金属リードの1本を引き抜いてしまい、受信側にいたベルがその金属リードの倍音を聞いたことがきっかけとなったのです。倍音は音声の伝送に必要です。そして、ベルはこのことから複数のリードは不要であり、1つのリードでよいと結論づけ、明瞭な音声こそ伝えられませんでしたが、何らかの音だけは伝送できる電話の前身の開発に成功します。

が、同時期にグレイも同様の実験を行っており、水を媒体として音声を電流に変換する方法を開発していました。そして1876年2月14日、ベルもグレイも、それぞれが自分たちの発明品を特許局に申請します。ベルは「電信の改良」(Improvment in Telegraphy) を、グレイは 水を媒体とする設計の電話についてでした。一説によれば、グレイはベルに2時間遅れての出願とも言われていますが、いずれにせよベルの後援者がグレイの動きを察知し、いち早く特許を出願させたことだけは事実です。

1876年3月3日、米国特許商標庁によりベルの特許出願は認可されます。そして、3月7日に公告されると、3月10日にベルは実際にその電話機の実験に成功します。当時の電話機は送信機と受信機の電磁石の前に振動板を設置して、振動板の信号を電磁石の電気信号に変換。そして、この電気信号を受信側で音響信号に変換する、というものでした。

なお、電話口から最初に響いた言葉は「ワトソン君、用事がある。ちょっと来てくれたまえ」 (“Mr. Watson! Come here!I want to see you!”)だったと言われています。ベルが実験中に希硫酸をこぼしてしまい、隣の部屋にいたワトソンが、その言葉を受信機にてはっきり聞いたというのが最初の言葉だそうです。

さて、このように世紀の大発明を遂げたベルでしたが、彼はその価値をいまいち認識していませんでした。彼は当初、あろうことか電話の特許をウェスタン・ユニオン社(当時最大の電信会社)にたった10万ドルで譲ることを考え、交渉に臨んだのです。が、(運よく?)当時はまだ、この電話は単なる玩具として認識されいました。そのため、ウェスタン・ユニオン社はその提案を断わります。

しかし同じ年の1876年、フィラデルフィアで開催された万国博覧会にてベルの電話機が世界中に紹介されると、ヴィクトリア女王はこの電話機を絶賛。これによりベルの電話機は一気に名が広まり、ベルは翌年にはベル電話会社を設立、電話の普及に努めます。

ところで同じ頃、発明王「トーマス・エジソン」も電話に関する発明を手がけていました。そして、ベルやグレイより1か月も早く電話の特許を出願していたのですが、書類に不備があったため受理されず、電話での発明競争には破れます。しかし、電話の特許が認められなかったエジソンですが、1877年に「カーボンマイク」を発明し特許を出願。カーボンマイクは、ベルが発明した電話機に炭素粒子を加えたという改良品でしたが、これによりベルの電話機よりも格段に音質が向上します。

さらに、ベルやエジソンらより15年も昔に電話の基礎を発明していたのが、ドイツの天才物理学者「フィリップ・ライス」です。彼は1860年にスピーカーとマイク、電線を用いて通話が可能となる電話機を発明。電線の両端に電磁石を設置し、人工鼓膜を振動させて相互の声を伝えるという仕組みを考案します。そして、この電話機をギリシャ語で「遠い声」を意味する「Telephone」(テレフォン)と名付けます。

いずれにせよ、電話は電気から音声を作り出す装置として、19世紀に発明されました。

1-3.世界初のスピーカーは?

さて、冒頭で述べた通り、スピーカーは電気信号を音に変換する機材、すなわち電気から音声を作り出す装置です。一方、電話は世界で最初の「電気から音を作り出す装置」です。そうです。つまり世界初のスピーカーは、1876年に開発されたベルの電話機です。

構造としては、磁石とコイル、鉄の振動板からなる装置です。音声が鉄製の振動板を震わせると、磁石から出る磁束が変化し、電磁誘導によりコイルに電流が流れます。この電流が受話器側のコイルに送られると、磁石に吸引されている振動板を震わせ、音声が再生されます。

このように、世界で最初のスピーカー「ベルの電話機」は、原理的にも構造的にも非常に簡略的な装置でしたが、オーディの歴史には非常に大きな最初の一歩でした。

「スピーカーの種類」オーディオ解説書その8

1-4.日本初のスピーカーは?

1876年3月10日に行われたベルによる電話の実験の成功直後に、東京音楽学校の後の校長・伊沢修二と留学生仲間で後の司法大臣・金子堅太郎が電話を使って会話をしていることから、世界で二番目に電話を通して通話された言語は「日本語」といわれています。

一方、1877 年には米国から 2 台のベルの電話機が日本へ輸出され、1878 年には日本は電話の国産化に成功しています。作ったのは、工部省の製機所のエンジニア達でした。つまり日本初のスピーカーは、1878年に工部省の製機所のエンジニア達が生産したこととなります。

2.スピーカーとラジオ

1920年代にラジオ放送が開始されると、同時に複数人が視聴可能な音響変換装置としての「スピーカー」が開発されました。当初のスピーカーは「マグネチックスピーカー」と呼ばれるタイプで、ベルの電話機と基本的な仕組みは同じでした。ただ、可動鉄片の振動を、コーン紙(ラッパ型の紙製振動板)に伝達させる部分等に新たな工夫が盛り込まれていました。

2-1.マグネチックスピーカー

マグネチックスピーカーは、永久磁石を利用して音声電流を音に変えるスピーカーの総称です。馬蹄形の永久磁石の間に組み込まれたヨークとその中にボイスコイルがあって、さらにその中にセットされたアーマチュア(電機子)が貫いている構造となっています。磁石(マグネット)と可動鉄片の間の磁気吸引力を音声電流により変化させ、振動する鉄片の動きをコーン紙に伝えます。

しかし、マグネチックスピーカーは吸引力が非線形なため歪みが出やすく、鉄片が磁石に吸着してしまわないよう、どうしても振動系を固く支持しなければなりません。そのため、波数帯域が狭くなるという原理上の欠点がありました。また、このマグネチックスピーカーの方式は初期のラジオに多く使用されていましたが、ひずみが多いことからダイナミックスピーカーに置き換えられる経緯をたどります。

とはいえ、マグネチックスピーカーの構造は、基本的には現代のスピーカーと同じです。

今のスピーカーは、音声信号による磁気力をヨークとポールピースの間にあるボイスコイルが音声信号に従って動く構造です。しかし固体連結はされておらず、ボイスコイルに直結したコーン紙は柔らかいダンパーによって支持されています。そのため大きな振幅にも適応。音域を広くとることを可能にしており、それゆえ音質が良いと言われています。

「スピーカーの種類ごとにおける名機」オーディオ解説書その9

2-2.ダイナミックスピーカー

「広い空間に音を放射する」というスピーカー本来の研究が始まったのは、真空管の発明による増幅作用が完成された後です。およそ1914 年頃と言われています。当初は電話機の受話器と蓄音機のホーン(ラッパのような形状をした部分)を組み合わせただけものでした。

しかし、スピーカー誕生後の初期においては、開発競争もあってか多くの発明考案がなされます。特にウェスタン・エレクトリック社のベル研究所やマグナボックス社の研究は、スピーカー技術の向上に大きく貢献しました。

現在広く使われているスピーカーは「ダイナミック・コーンスピーカー」が主で、1919 年頃にサイクスが考案し、1925 年にゼネラル・エレクトリック社で「チェスターW.ライス」と「エドワードW.ケロッグ」の設計により製作されたものが原形と言われています。円すい形の振動板がフレミングの左手の法則に従って動くスピーカーです。(ただ、これ以前の1877 年、カットリスとジーメンスが各々独立にダイナミック型の特許を取得しています。しかし、ライスとケロッグは、ジーメンスの特許は後に知ったことであると語っていますが)

ダイナミックスピーカーは、空気を振動させる振動板、電流の流れるコイル、そして電流を力に変換するために必要な鉄と永久磁石により主に構成されています。電流は鉄の棒と振動板の周りに巻かれたコイルの中を流れます。そして、電流が流れることによって周囲の鉄と永久磁石が磁気の通り道となり、磁束が発生。電流と磁束の両方と垂直な方向に力が生まれ(フレミングの左手の法則)、それが振動板を上下に震わせて音を出します。流れる電流や磁束の密度が大きくなればなるほど、大きな力で振動板を揺らすことが可能になります。そのため、大音量の出力も可能になります。

近年の一般的なオーディオ機器に組み込まれているスピーカーユニットは、ほとんどがこの方式を採用しています。1925年にライスとケロッグによって発明された非常に古い方式ですが、今なおその基本構造が変わっていないのは、この方式がシンプルで非常に優れているからです。

2-3.日本のスピーカ作りの最初期

2-3-1.日本製初のダイナミックスピーカー

1920 年、アメリカで世界初のラジオ放送が始まると、日本でも1925 年にラジオ放送が始まりました。この頃、日本にもラジオ受信機用スピーカーが輸入されましたが、開発にお金のかかる音響研究は後回しにされ、商社により町工場の優秀な職人にイミテーションを作らせることが先行します。そして、複数のメーカーでダイナミック形コーンスピーカーの製作が始められましたが、どれも外国からの輸入品をただ模倣しただけにすぎませんでした。

現在把握できている日本製の最も古いスピーカーは、1931 年に発売された大阪の村上商会の「ワルツ55形」です。マグナボックスの模倣品と言われていますが、ワルツ55形はコーン紙を保護するため、スピーカー前面に野球のキャッチャー・マスクのような鉄板のプロテクターがついていました。

2-3-2.マグナボックス

マグナボックス(Magnavox)は、ラテン語で「大きな声」を意味するアメリカの電気機器メーカーです。創設者はEdwind Pridham と Peter L. Jensenの二人 。1915年にボイスコイルを使ったスピーカーを発明し、その発明品にを”Magnavox” と命名したことがきっかけで、1917年、この発明品を販売するために同名の会社を設立しました。

マグナボックスはラジオ、テレビ、レコードプレーヤーなどを製造する一方、後に民生および軍需の大企業に成長します。ただ、1974年にフィリップスに民生機器部門が買収されると、Magnavox Electronic Systems として存続していた軍需部門も Hughes Electronics に買収され、さらに後にHughes Electronics が軍需部門をレイセオンに売却し、同時にかつてのマグナボックスもそちらに移管されます。

マグナボックスの名称は、フィリップスの低価格電気機器マーケット向けの北米ブランド名として使用されていましたが、現在はフィリップスとのライセンスに基づき、船井電機の商品群をリバッジして使用されています。

3.ダイナミックスピーカーの進歩

1925年には、今日のスピーカーの主流「ダイナミックスピーカー」がこの世に誕生します。磁石の磁力で鉄板を振動させるのではなく、コイルにより発生する磁束と磁石との相互作用により、コイルに接合したコーン紙を振動させる「ボイスコイル」方式、別名「ムービングコイル」方式です。

このシステムには、当初は電磁石が使用されていました。しかし、1930年代以降には強力な永久磁石などの金属磁石が開発・発見され、スピーカーに大きな影響を与えます。

詳しく見てみましょう。

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3-1.ダイナミック型スピーカーユニット

ダイナミック型のスピーカーユニットには、ドーナツ型の永久磁石が使用されています。このドーナツの穴の部分(円筒形の空間。磁界の中)に、それより直径が僅かに小さい筒「ボイスコイル」が挿入されています。

ボイスコイルはコイルの一種です。紙やプラスチックの筒に導線が巻きつけられていて、この導線に音声信号が流れると電磁石になり、ボイスコイルは波形に合わせて前後方向に振動します。

ボイスコイルには振動板が直結しています。そのため、この振動板が振動すると音響エネルギー(音)に変換され、音声信号と等しい波形の音が空気中に放射されます。これはまさにリニアモーターの原理そのものです。したがって、ダイナミック型スピーカーはリニアモーターの一種であると言われています。

磁気回路に使用される永久磁石には、非常に高い磁束密度が要求されます。以前はアルニコ磁石がハイエンド品を中心に使用されていましたが、ニッケル価格の高騰により現在ではほとんど見られなくなりました。また、アルニコ磁石には磁気抵抗が少ないというメリットがありますが、減磁しやすかったり特殊な磁気回路が必要というデメリットもあって、現在はコストパフォーマンスに優れたフェライト磁石がよく使われます。(小型スピーカーには、磁力の強いサマリウムコバルト磁石やネオジム磁石などがよく使われます)

ダイナミック型スピーカーユニットは振動系が軽い傾向にあります。そのため、トランジェント(過渡特性)に優れ、繊細かつ微妙な音が得られるという特徴があり、トゥイーターに用いられる傾向があります。

3-2.ダイナミック型スピーカーの振動板

3-2-1.構造

原音に忠実で歪みがない。点音源である。全方向に同一の音圧、同一の音質で音を放射する。

これらは理想的なスピーカーに求められる性能の一部です。そして、これらを実現すべく、ダイナミック型スピーカーの振動板の形状や大きさ、取り付け方には様々な工夫が施されています。

例えば振動板の形状です。
低音用にはコーン型、高音用にはコーン型やドーム型が主流です。1980年代前半、一時的に平面型が流行しましたが、現在ではほぼ見かけなくなりました。今は正面から見て真円形のものがほとんどです。(ただし、テレビなどへの内蔵用としては、楕円形や多角形のものも使用されます)

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3-2-2.材質

ダイナミック型スピーカーの振動板には、硬く(=高ヤング率)、内部損失が大きく、かつ軽量な素材が使用されます。振動板に求められることが、分割振動や共鳴による固有振動が少ないこと、かつ変換効率が良いことだからです。また、経年劣化が少ないことも重要です。

しかし、これらの要素の全てを満たす素材はなかなかありません。そのため、一般的にはユニットの担当する音域に合わせて素材を変えています。

a)紙

昔から今に至るまで、最も多く利用されている素材です。適度に内部損失があり、比較的丈夫で軽量。そのため、廉価品から高級品にまで幅広く使用されています。全音域に対し使用可能ですが、高音用にはあまり使われない傾向にあります。

b)高分子

ポリエステル、アラミド、ポリプロピレン、炭素繊維樹脂など。繊維状にして編んだり、ハニカム構造(正六角形または正六角柱を隙間なく並べた構造。語源は”ミツバチの蜂の巣”)にして利用することが多い素材です。主に低音から中音用ユニットに使用されます。

c)金属

アルミニウム、チタン、ホウ素(ボロン)、ベリリウム、マグネシウムなど。薄く軽量化が容易で、ヤング率が高い反面、内部損失が小さいため固有振動が発生しやすい傾向にあります。そのため、主に高音用ユニットに使用される素材です。高音用は振動板が小さいため、固有振動を可聴周波数外に追い出すことが可能だからです。

4.まとめ

電話は電流で音声を伝達する方法を採用していたため、その内部には電流を空気の振動に変換する仕組みがあります。したがって、スピーカの原点となるのは1876 年に発明されたアレクサンダー・グラハム・ベルの電話と言われています。そして、このベルの電話から発展し、まずは1800年代後半に欧米でマグネチックスピーカが誕生し、それがダイナミック方式へと進化します。

一方、ラジオ放送もスピーカーの進化に多大な影響を与えました。ラジオ放送は1920年にアメリカで世界で最初に開始されると、日本でも1925年に始まりました。そして、ラジオにはスピーカーが欠かせないこともあって、最初は欧米のスピーカーを模倣するだけでしたが、徐々に日本でも研究・開発が進められ、今に至ります。

当時はマグネチックスピーカーが主流でしたが、今の主流はダイナミック方式です。ただし、それは1925年に登場した、決して新しくないシステムです。それほどまで、ライスとケロッグが発明したスピーカーシステム「ダイナミック方式」は、シンプルながらに優れていたのです。

世界初のスピーカーは電話であり、その進化はラジオにあった。
しかも、今なお使われているスピーカーの技術の根幹は、1925年に誕生したものだった。

新しいものを追いがちな私たちですが、今一度、オーディオ好きの我々は率先して、もっと古いものに注目しても良いのかもしれません。

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2016年秋から話題沸騰の「恋ダンス」。
もはや説明不要なほどの人気ぶりですが、「恋ダンス」が音楽である以上、それを聴くためのベストなオーディオは必ず存在します。

そこで今回は、恋ダンスを踊ってみた……ではなく、恋ダンスにベストなオーディオを考察してみた、という記事を。

目次

  1. 恋ダンス
    1-1.恋ダンスとは
    1-2.恋
    1-3.振り付け
  2. 逃げるは恥だが役に立つ
    2-1.原作
    2-2.ストーリー
    2-3.登場人物
    2-4.「恋ダンス」「逃げ恥」のまとめ
  3. 恋ダンスにベストなスピーカー
    3-1.ベストなスピーカー
    3-2.製造会社
    3-3.スピーカーの特徴
    3-4.スピーカーユニット
  4. 恋ダンスにベストなプレーヤー(デジタル)
    4-1.ベストなプレーヤー(デジタル)
    4-2.プレーヤーの特徴
  5. 恋ダンスにベストなプレーヤー(アナログ)
    5-1.ベストなプレーヤー(アナログ)
    5-2.プレーヤーの特徴
    5-3.ベストなカートリッジ
  6. それぞれの機器がベストな訳
  7. まとめ

1.恋ダンス

1-1.恋ダンスとは

恋ダンスとは、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」のエンディングで、主演の新垣結衣が披露していたダンスの通称です。初回のエンディングから「ガッキー(新垣結衣)のダンスが可愛い」と評判になったのですが、同ドラマ出演者による恋ダンスが放送されるや、あっという間に日本中で話題に。また、共演者ばかりでなく、安住紳一郎アナウンサーや、プロフィギュアスケーターの織田信成・羽生結弦なども踊る姿が話題となり、2016年末には社会現象となりました。

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1-2.恋

恋ダンスのミュージック「恋」は、星野源の9thシングル『恋』に収録されています。ソウルやダンスの要素を持つポップソングで、概ね音楽評論家からの評価も肯定的。中でも現代社会における新しい価値観として「恋の多様性」を歌っている点が高評価の理由のようです。

作詞作曲は星野源。同ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」にも出演している、シンガーソングライター兼俳優です。埼玉県蕨市生まれ、埼玉県川口市育ちです。

1-3.振り付け

振り付けは、Perfumeやプリキュアシリーズの振付を手掛けるMIKIKO。レディー・ガガのワールドツアーの際には、初音ミクとコラボしてオープニングアクトを務め、2016年のリオ五輪の閉会式では五輪旗引き継ぎの芸術パートも担当。そしてダンスは、そんな演出振付家MIKIKOが率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」。テレビCMにも多数出演する日本屈指のダンスチームです。

世界レベルの振り付け師によるダンス「恋ダンス」。
そんなハイレベルなパフォーマンスなら、是非ともベストなオーディオで聞いてみたいと思いませんか?

そこで今回の記事なのですが、しかしまずはその前に、「恋ダンス」が使われた「逃げるは恥だが役に立つ」や、出演者情報について少しだけおさらいしておきましょう。

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2.逃げるは恥だが役に立つ

2-1.原作

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このドラマの原作は、海野つなみの漫画「逃げるは恥だが役に立つ」(Szégyen a futás, de hasznos.)です。「Kiss」(講談社)にて、2012年22号から2017年2号まで連載されました。略称は「逃げ恥」(にげはじ)。

ちなみに、タイトルの「逃げるは恥だが役に立つ」は、ハンガリーのことわざ「Szégyen a futás, de hasznos.」の和訳です。意味は「恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切」。とにかく「何やっても生きろ」という格言です。

2-2.ストーリー

一言で言えば、主人公二人の「契約結婚」をテーマにした社会派ラブコメディです。

「契約結婚」と聞くと、若い世代の中では新しいテーマのように感じる方も多いようですが、日本で初めてそれがテーマとなった小説は、石川達三の「僕たちの失敗」(昭和36年の5月から11月にかけて、読売新聞にて連載)です。

石川達三は第一回芥川賞受賞者で、そんな石川のベストセラーを1974年にNHKがドラマ化。主演は荻島真一と酒井和歌子、主題歌は五輪真弓の「落日のテーマ」でした。

1974年と言えば、「フォーク」から「ニューミュージック」への変わり目。井上陽水、吉田拓郎。当時の中高生はみんな、ラジオの深夜放送に夢中でした。

そして、それからおよそ40年後。
再び「契約結婚」がテーマとなったテレビドラマ「逃げ恥」は、またもや空前の大ヒット。きっとロケ地となった各所が「聖地」となって巡礼する方が現れるのでしょうが、とりあえずテレビドラマ版では横浜市が特別協力していて、横浜を舞台に描かれています。

2-3.登場人物

ヒロインは、森山みくり(演・新垣結衣)。
就職活動で一つも内定がもらえず、大学院へ進学するカタチの就職浪人に。しかし、せっかく大学院へ進学して就職へ再チャレンジするも、またもや全滅。そこで派遣社員という道を選ぶものの、そこでは何と派遣切りに。
そんな娘を見かねた父が、元部下・津崎の家事代行サービスを請け負い、ふとしたことから津崎と契約結婚し、家事全般を請け負う「住み込みの家政婦」になります。

もう一人の主人公は、津崎平匡(演・星野源)。
みくりの父の元部下で、京都大学出身のシステムエンジニア。
当初は乗り気でなかったものの、高熱で苦しんでいた時にみくりの気遣いと優しさに触れ、みくりの提案した「契約結婚」に賛同。みくりの「雇用主」となります。出身は山口県。

2-4.「恋ダンス」「逃げ恥」のまとめ

「恋ダンス」は「逃げるは恥だが役に立つ」のエンディングで、星野源・作詞作曲の「恋」のダンスです。
そして星野源は、新垣結衣とともに主役を務めた俳優兼シンガーソングライター。
その星野源は、埼玉県蕨市生まれです。
大事なことなので繰り返します。星野源は、埼玉県蕨市生まれです。

では、お待たせしました。「恋ダンス」にベストなオーディオについて考察してみましょう。

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3.恋ダンスにベストなスピーカー

3-1.ベストなスピーカー

「恋ダンス」にベストなスピーカーは、「ALTEC 620A」です。
620Aのスペックは以下の通りです。

ALTEC 620A(1975年発売 / 1台358,500円)
■形式:2ウェイ1スピーカー
■エンクロージュア:バスレフ・フロアー型
■周波数特性:20~22,000Hz
■最大入力:45W(連続プログラム)
■出力音圧レベル:103dB
■クロスオーバー周波数:1.5KHz
■インピーダンス:8Ω
■外形寸法:W660×H1016×D457mm
■重量:62.6kg

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3-2.製造会社

「ALTEC 620A」の製造会社はアメリカの「ALTEC」です。
正式名称は「Altec Lansing Technologies, Inc.」(アルテック・ランシング・テクノロジーズ・インク)。創設は1937年。当初の社名はアルテックサービス社でした。

そのアルテックサービス社は、集中排除法の適用により解散したE.R.P.I.(米国ウェスタン・エレクトリック社の業務用音響機器部門子会社)の主要メンバーが創立した会社です。そして、1941年にはランシング・マニュファクチャリング社を買収し、社名をアルテック・ランシング変更。あのJBL創設者ジェームス・B・ランシングを技術担当副社長に迎えます。

ランシング在籍中のアルテックは(ランシングは1946年にアルテックを退社し、JBLを創設します)、数々の名ユニットを開発します。2ウェイ同軸型604、ウーファー515、ドライバー288。そして、それらのユニットを用いた劇場用スピーカー「Voice of the Theatre」(ヴォイス・オブ・ザ・シアター)を発表すると、同システムは瞬く間に当時の映画館の標準スピーカーとなりました。

以後、アルテックは50年代から70年代にかけて数々の音響機器を発表し、業務用音響機器業界で高いシェアを確立します。実際1970年代では、全米のレコーディングスタジオのモニタースピーカーや、映画館の大型スピーカーのほとんどはアルテック製でした。

しかし、1980年代には販売が低迷。まずは主力工場だったアナハイム工場を閉鎖すると、1998年にはオクラホマ工場も閉鎖。そしてTelex corporationに編入され、事実上60年余の歴史に終止符を打ちました。

3-3.スピーカーの特徴

1975年に発売されたアルテック620Aは、同軸複合構造ユニット「604-8G」を採用したモニタースピーカーシステムです。もともとはハイクオリティなプロ用機ですが、ホームユースとしても使えます。エンクロージャーはバスレフ構造。外観は明るいオーク仕上げで、サランネットには彫りの深いブラウンのメッシュグリルが使われています。

アルテックらしい抜けの良さが評判で、今でもその気持ちいい聴き心地に虜になる人は多数います。同軸ユニットとあって定位感がしっかりしており、上質で豊かな音が楽しめます。特に50~60年代のジャズとの相性は抜群らしく、サックスやヴォーカルの艶、スネアの皮の振動など、鳥肌が立つような音感がある一方、決して聴き疲れしないジャズ専用スピーカーと呼ぶ人もいます。

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3-4.スピーカーユニット

620Aで使われているユニットは、2ウェイ同軸ユニット「604-8G」です。1975年発表、価格は121,000円(ネットワーク付属)。レコーディング・モニターの先駆となったデュプレックス2ウェイ同軸ユニットです。

604ユニットは601ユニットを改良したもので、601は2ウェイ同軸という合理的な「デュプレックス」(コアキシャル・ユニット)のプロトタイプです。601の誕生は、アルテックが設立された1941年。同社の記念すべき第一号モデルで、タンノイのデュアル・コンセントリック・ユニットの開発にも影響を与えたと言われています。

そしてその三年後、601が改良され、604が誕生します。

601から604への主な改良点は4つ。
・アルニコVマグネットによる磁気回路の採用。
・ウーファーのボイスコイル径が、2インチから3インチへ拡張。
・クロスオーバー周波数(1,500Hz)における高域ドライバーのスロープ特性が12dB/octから18dB/octに変更。
・アッテネーターのコントロール範囲がプラス・マイナス20dBに拡大。
こうした改良を経て604は名機と呼ばれるに至り、1973年には「ビルボード」誌は、レコーディング・スタジオで最も広く使われているユニットとして、604ユニットを紹介しています。

「604-8G」はそんな初代604ユニットから数えて6代目のユニットです。低域用磁気回路を貫通させた中高音用ホーンスロートを設ける同軸複合構造で、専用設計のマルチセラーホーンと音像が軸中心上で一致。また、振動板前後での位相差が最小となるよう設計されており、特に4ch以上の音が重なり合う条件下でも良好な分解能を実現。さらに、今まで通り合金ダイアフラム一体エッジを使いながらも振動マスが軽量化されており、ダイアフラム一体エッジの音の良さを維持しつつ、ワイドレンジ特性や過渡応答特性を改善しています。

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4.恋ダンスにベストなプレーヤー(デジタル)

4-1.ベストなプレーヤー(デジタル)

恋ダンスにベストなプレーヤー(デジタル)は、「YAMAHA CD-S300」です。
CD-S300のスペックは以下の通りです。

YAMAHA CD-S300(2009年発売、希望小売価格41,000円)
■再生メディア:音楽用CD、CD-R/RW(MP3、WMA再生可)
■iPod対応機種:iPod classic、iPod nano(第2~6世代)iPod touch(第1~4世代)
■周波数特性:2Hz~20kHz
■高調波歪率:0.003%以下
■ダイナミックレンジ:96dB以上
■SN比:105dB以上(JEITA)
■出力端子:光デジタル1、同軸デジタル1、アナログRCA1
■入力端子:USBポート1
■消費電力:13W
■外形寸法:W435×H86×D260mm
■質量:3.5kg

4-2.プレーヤーの特徴

恋ダンスにベストなプレーヤー(デジタル)「CD-S300」の主な特徴は3つあります。

4-2-1.ピュアオーディオ再生に徹した高音質設計

電源部・デジタル部・オーディオ部の各基板がブロック化されており、相互干渉は最小限に抑制されています。また、レイアウトは細部まで配慮されていて、「オーディオ回路の左右対称化」「音声信号が通過する経路最短化」が設計に織り込み済み。その結果、高い純度のままの音声信号を維持し、正確な音場再現を可能にしています。

さらに、オーディオ用として高評価の192KHz/24bit対応バーブラウン高精度DACの採用。その上、デジタル出力回路の停止とともにディスプレイは消灯し、より高品位なアナログ音声出力を実現するピュアダイレクトモードを装備。こうした高音質設計により、CD-S300は本格的なCD再生専用機としてナチュラルで高純度な音を再現しています。

4-2-2.iPodのデジタル接続にも対応した前面USB端子

本体前面にUSB端子が装備されているため、USBメモリーやUSB携帯音楽プレーヤー(USBマスストレージ)を接続して、手軽にデジタル音楽ファイルを再生することができます。

また、USB端子より入力されるiPodやUSBのオーディオデータは、CD-S300の光/同軸デジタル端子よりPCM出力。デジタル入力搭載のアンプやオーディオシステムへ、デジタル信号のまま転送することができます。

iPodのデジタル接続にも対応しており、iPod付属のUSBケーブルをCD-S300の前面USB端子に接続すれば、iPodの音楽をデジタル信号のまま入力し、CD-S300内蔵D/Aコンバーターにより高音質な音楽鑑賞が可能です。もちろん、iPod再生中はiPodの充電が自動的に始まるほか、CD-S300のリモコンによるiPodの基本操作(再生、一時停止、スキップ+/-、FF/REWなど)も可能です。ただし、ディスプレイ表示に関しては、iPod側は通常表示され、CD-S300側のディスプレイにもiPodの曲情報(曲名・アーティスト名・アルバム名)は表示されますが、日本語表示には対応していません。

4-2-3.アルミフロントパネルを採用した高品位なデザイン

CD-S300のデザインは、YAMAHAの高級CDプレーヤー「CD-S1000」のテイストを継承しています。

CD-S1000は、2008年に発売されたSACDプレーヤです。日本ではあまり話題にはなりませんでしたが、欧州では2008~2009年のEISA AWORD(2-Channel System)を受賞するなど、高い評価を得ています。(EISAは欧州のオーディオ、ホームシアター、ビデオ、カメラなどの雑誌が加入する協会)

シンプルで美しいパネルデザインに、使いやすい操作レイアウト。フロントパネルはシルバーヘアライン仕上げのアルミ製。さらに、YAMAHAの新しいアイデンティティである薄型CDトレイも採用。CD-S300は、見るオーディオとしても大変人気のあるCDプレーヤーです。

5.恋ダンスにベストなプレーヤー(アナログ)

星野源の「恋」にレコード盤はありません。しかし、もしレコード盤があったとしたら……。そんな前提で考察してみました。

5-1.ベストなプレーヤー(アナログ)

「恋ダンス」にベストなアナログプレーヤーは、「DENON DP-59L」です。
DENON DP-59Lのスペックは以下の通りです。

DENON DP-59L(1984年発売、希望小売価格89,800円)
《フォノモーター部》
駆動方式:DENONクォーツ。両方向サーボ式ダイレクトドライブ
回転数:33 1/3rpm&45rpm(電子ブレーキ付)
回転数微調整:±9.9%・0.1%ピッチ(DP-59L)
ワウフラッター:回転系 0.008%W.rms以下 / JIS測定法 0.02%W.rms以下
SN比(DIN-B):82dB以上
電源電圧特性:90~110Vの変動に対して0%
ターンテーブル:アルミダイカスト32.5cm 2.2kg
起動時間(331/3rpm時):1.6秒以内

《トーンアーム部》
形式:スタティックバランス形電子ダンピング機構付トーンアーム パイプ部交換可能
アンチスケーティング :無接触電子式
有効長/オーバーハング:244mm/14mm
針圧調整範囲:1回転1・0~3g(1目盛0.1g)
適合カートリッジ重量 :約3g~14g(ねじ類を含む) / 約11g~25g(シェル等を含む)
交換用ストレート形アームパイプ :PCL-59

《その他》
キャビネット:木製・表面木目調鏡面仕上げ
電源:AC100V 50/60Hz
消費電力:9W
外形寸法(ダストカバーを閉めた状態):W490×H219×410mm
重量:約15kg

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5-2.プレーヤーの特徴

1984年発売のDP-59Lは、それまでDENONが培ってきた伝統の技術を継承しつつ、電子制御アームなどの新しい技術を投入した高性能プレーヤーです。DP-59Mとの違いは、レコードが終わるとアームが上り回転が停止する無接触構造のオートリフトアッププレーヤである点だけです。

プレーヤーにとって最も大切なのはモーター部ですが、このモーターにはシンプルな構造の「ハイトルク・AC・サーボモーター」を採用し、直径32.5cmで重量2.2kgの大型ターンテーブルを余裕をもってまわします。

構造がシンプルなので故障が少なく、原理的にトルクムラが少ない滑らかな回転を持つのも特徴です。また、コキングのない低重心設計モーターに、直径10mmの超硬材ステンレススチール削り出しシャフトを使用。さらに、モーターハウジングはオールダイカスト製で、ターンテーブルの水平方向の微振動をも解消。重量級のターンテーブルを下部からがっちり支える構造で、シャフトの振れが少ないどっしりした回転を実現しています。

スピード検出には1000発の磁気記録検出方式を採用。1秒間に555.55回(33・1/3回転時)もチェックする高精度なスピード検出を行い,水晶発振による位相制御で回転速度の小刻みなバラツキを抑制、回転偏差0.002%という回転精度を実現しています。

また、DP-59Lはピッチコントロールが装備されており,液晶表示カウンターの表示を見ながら±9.9%のスピード可変が0.1%刻みで可能です。

アームは「Dynamic Servo Tracer(ダイナミック・サーボ・トレーサー)」を搭載し、レコードにひそむソリや偏芯などの低域共振を排除、あくまでピュアーな音質再生を実現しています。また、高級OFC(無酸素銅線)を11本より合せ、内部抵抗を減少、重厚な低域とクリアな高域再生を獲得しています。

5-3.ベストなカートリッジ
恋ダンスにベストなカートリッジは、モノラル盤なら「DENON DL-102」、ステレオ盤なら「DENON DL-103」です。
DL-102は103の前身で、放送局用モノラル専用です。MM端子に直結できる高出力モノラル専用MCです。

DL-102の主な仕様
■出力電圧:3mV
■再生周波数:50Hz~10kHz
■インピーダンス:240Ω
■適合負荷:1kΩ以上
■針先:17ミクロンダイヤ丸針
■針圧:3±1g
■自重:13g
■針交換価格:17,600円(税抜)

DL-103は50年もの間、性能・仕様を変えずに生産され続けているカートリッジです。
現在も放送局など第一線で活躍する、信頼のMCです。

DL-103の主な仕様
■出力電圧:0.3mV
■再生周波数:20Hz~45kHz
■インピーダンス:40Ω
■針先:16.5ミクロン丸針
■針圧:2.5±0.3g
■コンプライアンス:5×10-6cm/dyne
■自重:8.5g
■針交換価格:22,800円(税抜)

6.それぞれの機器がベストな訳

恋ダンスにベストなオーディは以下の通りです。

スピーカーは「ALTEC 620A」
CDプレーヤーは「YAMAHA CD-S300」
レコードプレーヤーは「DP-59L」(カートリッジはモノラル盤なら「DENON DL-102」、ステレオ盤なら「DENON DL-103」)

では、なぜ「恋ダンス」にはこれらのオーディオがベストなのでしょう。
答えは星野源に関係があります。
実は、星野源の両親は埼玉県蕨市でジャズ喫茶をやっていて、そこで鳴らしているのが上記オーディオセットなのです。

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もともとは、源の祖父が川口市内で八百屋を営んでおり、一時は源の父も後を継いで八百屋を経営していました。しかし、祖父が亡くなると廃業。そして10年ほど前に、自宅1階にジャズ喫茶をオープンさせます。源の父はジャズ・ピアニストを、母はジャズ・シンガーを目指していたこともあって、ジャズは両親の共通の趣味でした。

お店の名前は「signal」。源の父が好きなレコードのレーベルが由来です。

しかし、このジャズ喫茶「signal」は、2016年10月22日に閉店しています。原因は、星野源ファンの聖地巡礼でした。2015年の紅白歌合戦に出場した頃から聖地巡礼は始まり、「逃げ恥」が始まって2週間で、お店は完全に「ジャズ」を失ったようです。ジャズに全く興味のない若い女性が殺到し、なごみを売りにしていた同店内を歩き回って、他の人の迷惑も考えずに写真を撮りまくったようです。

10月22日を持ちまして閉店致しました
長らくのご愛顧ありがとうございました
signal店主

ドアにそんな張り紙が張り出され、オーディオファンに惜しまれつつ閉店に至りました。

星野源の聖地巡礼者から「逃げるは恥」だったかは私にはわかりかねますが、閉店は少なからず、源の両親の老後の生活に「役に立つ」行動だったことは間違いないでしょう。

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7.まとめ

星野源の音楽センスは、ジャズ・ピアニストを目指した父と、ジャズ・シンガーを目指した母から受け継いだものでしょう。だから「恋ダンス」には、二人が営んでいたジャズ喫茶のオーディオがベストなんです。

スピーカーは「ALTEC 620A」
CDプレーヤーは「YAMAHA CD-S300」
レコードプレーヤーは「DP-59L」(カートリッジはモノラル盤なら「DENON DL-102」、ステレオ盤なら「DENON DL-103」)

ドラマも終わり、楽曲の利用には制限がかかってしまいましたが、個人で楽しむ範囲でなら自由です。
ぜひ上記セットで「恋」を鳴らし、キレキレな「恋ダンス」を踊りましょう。

あなたとオーディオの絆の強さが、「夫婦を超えていけ」と願いつつ。

オーディオ機器は大きくて重い上、とても衝撃に弱い精密機械です。そのため、引越しや売却の際の運送時には非常に丁寧な梱包が求められます。

もちろん、購入時のケースなどが保管してあれば問題ありません。その梱包材一式を使って、購入時と同じように梱包しましょう。

しかし、元箱などが手元に何も残ってない場合はどうしましょう。

インターネット上では様々な意見が飛び交っています。中には非常に高価な梱包材の購入を勧めているところもあります。が、本当に高価な梱包材は必要なのでしょうか。あるいは、専門的な梱包材がなければ、オーディオは安全に梱包することができないのでしょうか。

結論を申し上げます。
動画にあるとおり、特殊な道具は不要です。高価な梱包材も必要ありません。

ちょっとの知識と、ちょっとのアイデア。
それと、見慣れた道具をいくつか。

これだけで「安心・安全」な梱包が「安価」にできます。

そこで今回は、オーディオの売却時や引越し時に使える「梱包の方法」について、まずはスピーカーを題材に解説します。

正しく梱包されていないスピーカーは、運送中にカドが欠けたり、デリケートなスピーカー面に傷がついたり、場合によっては何かしらの原因で二度と美しい音を奏でなくなることもあります。

是非この記事で正しい梱包法を身につけてください。

1.準備する

準備する物は、「ダンボール」「エアキャップ」「テープ」「カッター」「はさみ」です。
まずはそれぞれの注意点について。

1-1.ダンボール

ダンボールの主な用途は3つです。
①底面に当てる
②スピーカー面に当てる
③全体をすっぽり収める
そのため、準備すべき段ボールは、上記3つの目的が達成できる段ボールとなります。

①で必要となる段ボールは、底面より大きい段ボールです。

※動画1:37~

②で必要となる段ボールは、スピーカー面よりも大きい段ボールです。

※動画2:14~

③で必要となる段ボールは、理想は一つの段ボールでスピーカーをすっぽり収めることですが、なかなかそのような巨大な段ボールはありません。実際的には2つ以上の段ボールを使って(上からと下からで被せる方法)、スピーカー全体を収めることになります。

※動画2:23~

ダンボールは、お近くのスーパーやホームセンターにて「無料」で入手することが可能です。お菓子が入っていた段ボール、赤ちゃんのオムツが入っていた段ボール、何でも結構です。
あらかじめスピーカーの幅・奥行・高さを計った上で、ちょうど良い大きさのダンボールを、必要な枚数だけ手に入れておきましょう。

1-2.気泡緩衝剤

気泡緩衝剤は商標が一般名称のように使われており、人によって呼び方が様々です。
「エアーキャップ」(酒井化学工業株式会社の登録商標)、「ミナパック」(酒井化学工業株式会社の登録商標)、「キャプロン」(株式会社ジェイエスピーの登録商標)などが代表的ですが、最も浸透しているのは川上産業株式会社の登録商標(登録番号 第2622392号)「プチプチ」でしょうか。そこでこの記事では、便宜上、気泡緩衝剤を「プチプチ」と表記します。

スピーカーの梱包では、プチプチは幅広のものほど使い勝手がよくなりますが、その分価格が上がってしまいます。しかし、とはいえ幅が狭すぎると梱包が面倒になります。大きすぎず、小さすぎず。ちょうど良い規格のプチプチを購入しましょう。

プチプチの幅は、スピーカー面より少し大きいものが最適です。

※動画1:13~

長さは、20m巻きや42m巻きの商品が多く流通しているようですが、そこまで長いものは不要です。「使いきりタイプ」などを購入しましょう。ただし、インターネット上では格安でプチプチを提供しているサイトもあります。

2,000円を予算とするのも一つの考え方かもしれません。

1-3.カッター&はさみ

カッターとはさみは、両方あった方が作業は楽になります。

カッターはダンボールの切断に。
はさみはプチプチの切断に。

用途によって道具を使い分けることで、仕上がりも変わってきます。ぜひともカッターとはさみの両方をご用意ください。

1-4.テープ

一般的にガムテープには3種類あります。クラフト(紙)テープ、布テープ、ビニール(OPP)テープです。
これら3種類の相違点は、素材です。クラフトテープは紙から、布テープは布から、ビニールテープはビニールからできています。基本的には名前の通りです。

この3種類の中で、お勧めのテープはOPPテープです。理由は2つあります。
①この3種類の中では粘着力が最も強い
※OPPテープは伸縮性もあり、引っ張りながら貼るといっそう粘着度は強まります。
②水濡れに強い

一方で、その強い粘着度ゆえ開梱に手間がかかったり、手で切れないというデメリットはあります。しかし運送時の梱包に求められるのは、何を差し置いても「安全性」です。事故の可能性を少しでも下げるためにも、できる限りOPPテープを使いましょう。

【補足】
クラフトテープの使用だけは避けましょう。
クラフトテープは表面に接着剤が付きづらい加工が施されており、テープの二重貼りができません。(クラフトテープの上にテープを貼っても、すぐにはがれてしまいます)
そのため、梱包にはクラフトテープの使用は避け、なるべくOPPテープを使いましょう。

2.切る

2-1.プチプチを切る(スピーカー上面)

※動画1:17~

スピーカー上面に当てるプチプチを用意します。
カドを保護する目的もあります。少し大きめに切っておくことがポイントです。

2-2.プチプチを切る(側面&底面)

※動画1:23~

プチプチを敷いて、その上にスピーカーを寝かせます。そして、スピーカーの上端とプチプチの端を合わせます。
(下にはみ出たプチプチで底面をカバーします)

※動画1:25~

もしここでプチプチが底面をカバーできないようなら、上面と同じサイズを切り出しておく必要があります。

なお、プチプチは斜めに切ってしまうとテープでの接着が面倒になります。なるべく真っ直ぐ切り出しましょう。

3.包む

3-1.プチプチで側面&底面を包む

※動画1:35~

プチプチでスピーカーを包む際は、プチプチの端とスピーカーの端がきれいに合わさるようにし、斜めにならないように気をつけましょう。斜めになると、底面がうまくカバーできません。

そしてプチプチでスピーカー側面をくるんだら、すぐにテープで接着です。
側面は30cm程度の間隔で十分ですが、底面は少し念入りに留めておくことをお勧めします。

3-2.プチプチで上面を包む

※動画1:47~

プチプチをスピーカー上面に当て、余った分は側面を巻き込みテープで固定していきます。

3-3.底面にダンボールを当てる

※動画2:04~

この作業の目的はスピーカー底面のカドを保護することです。

まず、スピーカー底面の各辺より15cmほど大きくダンボールを切り出し、そこにスピーカーを乗せます。それから、ダンボールに切り込みを入れて、丁寧にカドをくるみます(動画でご紹介しているように、段ボールを折って、それから段ボールを立てて、カドを包むようにくるみます)。そして、しっかりとテープで接着して四つ角を保護します。

3-4.スピーカー面にダンボールを当てる

※動画2:14~

この作業の目的は、大切なスピーカー面を特に保護することです。
スピーカー面とほぼ同じ大きさにダンボールを切り出し、スピーカー面に当ててテープで固定します。

3-5.ダンボールを上からかぶせる

※動画2:22~

まずは段ボールを組み立てます。
すでに段ボールが組み立てられている場合は、クラフトテープで接着されていないことを確認してください。もしクラフトテープで接着されている場合は、一旦崩してテープを全て剥がしましょう。クラフトテープの表面は、接着剤が付きづらい加工が施されているからです。

段ボールの組み立てが完了したら、 それをスピーカーの上からかぶせます。その際、スピーカーとの隙間が少ない方が事故は起こりづらくなります。ですから、余分なダンボールを切り取って、ぴったりとテープで固定していきましょう。

この時、どこがスピーカー面かわかるようにしておけば、最後の手順で困惑せずに済みます。何か目印をつけておきましょう。

3-6.ひっくり返して底面にかぶせる

※動画2:32~

3-5の手順と同様、スピーカーをひっくり返して、底面から段ボールを被せます。そして、スピーカーとの隙間が少なくなるように余分なダンボールを切り取って、テープで固定していきます。

それが完了したら、上からかぶせたダンボールと、下からかぶせたダンボールをテープで固定していきます。ここではしっかりとテープを使って接着させましょう。

4.書く

スピーカーの輸送で特に重要となるポイントは、スピーカー面を傷つけないことです。そのため、どこがスピーカー面を書いておけば、特にどの面を大切にすべきか一目瞭然となります。スピーカー面には必ず「スピーカー面」と書きましょう。

また、上面には「天地無用」と記載ししましょう。ほとんどのスピーカーは上下左右を問題にしませんが、運送会社の方や売却先の方は「どちらが上か」がわかると嬉しいものです。

5.まとめ

何事も、成功させるには準備が8割と言われています。スピーカーの梱包もまさにそうです。特に、ちょうど良い段ボールが準備できていれば、スピーカーの梱包は非常に容易になります。

とはいえ、記事ではある程度ぴったりサイズの段ボールを推奨しましたが、小さすぎなければ手間はさほど変わりません。スピーカーの大きさをしっかりメモして、それよりも大きな段ボールを入手すべく、近所のスーパーやホームセンターをいくつか回ってみましょう。

ちなみに、スピーカーの梱包に要する時間は一本あたり約20分程度が目安です。準備さえしっかり整っていれば、さほど難しい作業ではありません。ぜひ気軽に挑戦してみて下さい。

オーディオを買う前に必ず見るもの。それはその製品カタログです。そして、そのカタログには必ず「スペック表」が載っています。

しかしこのスペック表、正しく理解できている人は意外と少数です。たいていの場合、金額が高い製品のスペック値を基準にして、「あの製品のこのスペックは」と判断しています。

意味もわからず高性能な製品を購入しても、その製品の良さはわかりません。一方で、スペック表には購入前に必ず抑えていなければならない数値と、必ずしも必要とは限らない数値があります。

スペック表は専門用語が羅列され、一見難しく見えます。しかし、ポイントさえ抑えてしまえば実はさほど難しくありません。

そこで今回は、スペック表の見方、読み方を解説します。

【目次】

1.スペックとは

2.主要項目の概要と解説
2-1.寸法
2-2.出力音圧レベル
2-3.許容入力
2-4.インピーダンス
2-5.クロスオーバー周波数
2-6.周波数特性
2-7.その他

まとめ

1.スペックとは

スペック(spec)とは、英語のspecification【spèsəfikéiʃən】の省略形です。本来は「明細・指定」を意味し、通常複数形で「仕様」の意となります。最近の和製英語的用法では、「スペック」は工業製品の性能を表し、たいていの場合は数値化してその性能を評価します。

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スペック表は、その製品のスペックを表にまとめたものです。したがって、そのスペック表を見ればその製品がどんな特徴を持ち、他の製品とどの部分で差別化されているか、ある程度把握することができます。

スペック表はカタログやメーカーの製品ページ、販売サイトの商品ページに行けば必ずあります。「スペック」や「spec」、あるいは「仕様書」と表記されています。

2.主要項目の概要と解説

2-1.寸法【mm】

シンデレラ城など東京ディズニーリゾートの建造物は、上に行けば行くほど石垣やタイルの大きさが小さくなっています。また、一階よりも二階、二階よりも三階の方が天井高は低くなっています。これは「強化遠近法」と呼ばれ、実物よりも大きく見せるためのテクニックです。

オーディオの世界には、こうした「実物よりも大きく見せる」メーカーはありませんが、ユーザーが勝手に大きさを勘違いするケースは多々あります。特に、製品ページには必ず正面からの写真はありますが、横から見た写真はほとんどありません。そのため、奥行きのスケール感を見誤る方が続出しています。そもそも、スピーカーの背後にはケーブルを接続するためのスペースも必要です。設置予定場所のサイズを正確に把握した上で、寸法・規格を数字で照らし合わせましょう。

一方、トールボーイ型については、椅子やソファに座った高さやテレビの高さとの検証が不十分なケースが多いようです。いくらスペック表で音質評価が高くても、視聴環境が整っていなければ意味がありません。トールボーイ型の場合は高さにも注意を払いましょう。

せっかくお気に入りの一台を見つけても、設置予定場所にマッチしていなければ使えません。「予想以上に大きかった」など、無用な失敗を避けるためにも、寸法(特に奥行きと高さ)は必ず確認しておきましょう。

2-2.出力音圧レベル【dB】

出力音圧レベルは、能率や感度を表す項目です。1W(2.83V)の入力に対して、スピーカー正面1mの距離における音圧レベル(dB)を表します。この値が大きくなると、電気を音に変換するための効率が良いことを意味し、同じ入力でも出せる音が大きくなるので能率が良いといえます。

1960年代以前では95 dB前後、1970年代から1980年代では90 dB前後のスピーカーが主流でしたが、1990年代以降ではウーファーの口径が小さい機種で低音域を拡大している傾向から、80dBから90dB前後のものが大多数を占めています。

能率が高いほど小さな入力で大きな音を出すことができますが、反面、アンプの持つ「あら」の部分も拡大してしまいます。一昔前はこの値は重要視されていましたが、現在は数字の大小は優劣ではなく、設計のコンセプトの違いと捉えられています(能率の低いスピーカーは、アンプ次第で本来の能力を発揮するケースが多くあります)。

ちなみに、映画館や劇場などのPA用では広い空間で大音量が要求されるため、最低でも95 dB以上のものが通常ですが、家庭で音楽や映画などを楽しむには85 dB前後あれば十分です。したがってホームユースの場合、ほとんどがこの数値は気にする必要はありません。

2-3.許容入力

スピーカーが正常に動作する入力電力の最大値です。許容入力を超える電力をスピーカーに送り込むと、故障の原因ともなりえます。

多くの機種が数十Wから100W超という設計になっていますが、ホームユースではほとんど関係がありません。というのも、家を揺るがすほどの大音量でも、その出力は10W程度と言われています。したがって、この数値が大きくてもその性能を発揮するシーンはほとんどなく、数値の大小がスピーカーの評価に繋がることもありません。

2-4.インピーダンス【Ω】

インピーダンスは、スピーカーの抵抗値のことです。一般的には、この数値が小さいほうが大きな音が出ますが、アンプに流れる電流が大きくなるので負担がかかることになります。主流は4Ω、6Ω、8Ωですが、ほとんどの場合、インピーダンスの数値が問題になることはありません。

ただし、真空管アンプにつなげる場合は注意が必要です。スピーカーインピーダンスは、必ずアンプに表示されている推奨インピーダンス数値よりも大きくしてください。

スピーカーインピーダンスがアンプのインピーダンスを下回ると、アンプに負荷がかかってしまい、故障の原因となる場合があります。もちろん、インピーダンスの数値が同じであれば全く問題はありません。アンプのΩ≦スピーカーのΩです。

2-5.クロスオーバー周波数【Hz】

2ウェイや3ウェイなどのマルチウェイスピーカーで、各ユニットの音域の境界にあたる周波数を示します。高音と低音を担当するユニットがどのあたりの周波数帯で重なり合っているかを示しているため、中級者以上は、この数値によりスピーカーの音質や設計意図の見当がつきます。ただし、相当数の経験が必要になる領域です。入門者にとっては、「ここで区切られているんだな」といった参考程度のスペックとして捉えて問題ありません。

2-6.周波数特性【Hz】

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スピーカーに限定した周波数特性といえば、音圧周波数特性、位相周波数特性、群遅延周波数特性、歪み周波数特性が列挙できます。

音圧周波数特性とは、スピーカーの再生周波数帯域を示す数値です。再生できる周波数の低音域から高音域までを表わし、○○Hz(ヘルツ)から□□KHz(キロヘルツ)というように表記されます。下の数字が40Hzを切っていれば低音からよく出る、上が30KHz程度より高ければ高音まで出る、と考えても一応は問題ありません。単に「周波数特性」としか書いていない場合は、大方この特性を意味しています。

位相周波特性は、原信号の位相とのずれを見る特性です。
群遅延周波特性は、ある周波数群が最小の遅れの周波数群に対しどれだけ遅れるか、を示します。

理想のスピーカーは、可聴帯域内で完全線形であるスピーカーです。つまり、音圧周波数が広く、かつ完全に平坦、位相周波数特性が直線(平坦である必要はない)、群遅延周波数特性が平坦、歪み周波数特性がどの周波数帯でも低いスピーカーです。

もちろん、そんなスピーカーは存在しません。上記にどれだけ近づけられているか。これがスピーカーの優劣の評価となります。

2-7.その他

キャビネット容量は、文字通りキャビネットの有効容積をℓ(リットル)で表した数値です。容積は低音再生の重要な要素となりますが、スピーカーユニットの大きさや作りとも密接な関係があるため、大容積が必ずしも良いスピーカーとは限りません。

質量は、本体の重さをkgで表したものです。床置きの場合はさほど気にする必要はありませんが、棚に置く場合は棚の強度などに注意が必要です。

防磁設計は、スピーカーに必要な磁石の磁力がスピーカーの外に漏れ、周辺製品に悪影響を及ぼさないように設計されたスピーカーのことです。磁気漏れにより悪影響が考えれる代表製品は、ブラウン管式テレビと置き時計です(置き時計といっても、たいていの場合スピーカーの上に置いた場合に限ります)。最近のテレビは薄型ディスプレイが主流なので、主な影響が考えられるのは、実質的には置き時計くらいです。
もちろん、磁気シールドを施す分割高になるため、必要がない場合は無駄なコストアップに繋がります。どうしてもスピーカーの上に時計を置きたいのであれば話は別ですが、基本的には普通のスピーカーで充分と考えられます。
ちなみに、スピーカーは後から簡単に防磁設計にできます(エンクロージャーに金属製のシールド板を貼るだけです)が、外観が悪くなります。

まとめ

実は、スピーカースペック表の数値はあくまで機器の基本性能を示すに過ぎません。どちらかといえば音質を把握するためというより、機器と機器を接続する際に参考にするものです(特にアンプとの接続時)。

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真空管アンプを愛用されている方こそインピーダンスのチェックが必須ですが、現在普及しているアンプは半導体、あるいはデジタルアンプがほとんどです。したがって、多くの方にとってスペックで気にする点は寸法だけとなるでしょう。

数値化された評価は誰でも気になるものです。しかし、スピーカー選びで最も重要なのは、そのスピーカーが自分の好みの音を鳴らすかどうかです。あまりスペックにとらわれず、思う存分自分の好きな音質を追求してください。

あなたが理想の音と暮らせることを祈っています。