夏が近づくと、必ず一度は耳にする言葉「夏フェス」。その中でも、フジロックは今年の2016年で20周年を迎えた老舗ロックフェスで、毎年苗場スキー場にて開催される日本では最も有名な夏フェスの一つです。
しかし、そんなフジロックよりも歴史が長く、世界でも類を見ないクラシックの祭典があります。それが、セイジ・オザワ松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・フェスティバル松本)です。毎年8月から9月にかけて開催されるとあって、クラッシックの夏フェスとも呼ばれています。
このフェスティバルの開催期間中は、日本はもとより、世界中からクラシックファンが信州に集まります。それも、オーディオ買取屋がある松本に。
そこで今回は、2016年のセイジ・オザワ松本フェスティバルの魅力を徹底的にご紹介します。
目次
- セイジ・オザワ松本フェスティバルとは
- プログラム
2-1.オーケストラ コンサート
2-2.オペラ
2-3.室内楽
2-4.セイジ・オザワ 松本フェスティバル Gig
2-5.教育プログラム
2-6.オープン イベント - 日本一のCDコンサート実現か
- まとめ
1.セイジ・オザワ松本フェスティバルとは
セイジ・オザワ松本フェスティバル(Seiji Ozawa Matsumoto Festival;OMF)は、毎年8月から9月にかけて、長野県松本市で行われる音楽祭です。旧称サイトウ・キネン・フェスティバル松本(Saito Kinen Festival;SKF )。1992年、恩師「斎藤秀雄」の名を冠して小沢征爾が創立したクラシック・フェスティバルです。
演奏は、サイトウ・キネン・オーケストラ(略称 SKO)がメインです。そして、そのメンバーは、もともとは齋藤秀雄に師事した演奏家が中心でしたが、近年では年齢やスケジュールの都合などを理由に、斎藤の孫弟子(小澤の弟子)や小沢征爾の知人である外国人演奏者が目立ってきています。
主な会場は、まつもと市民芸術館や長野県松本文化会館。演目は、オーケストラやオペラ、室内楽など多彩で、2010年の武満徹メモリアルコンサート以降は、ジャズのプログラムも組まれるようになりました。
そして、OMFの大きな特色である教育プログラムの公演では、若い音楽家の教育のみならず、数多くの小・中学生たちに生の音楽に触れてもらおうと、長野県内の小学6年生は子供向けのコンサートに、中学1年生は青少年向けのオペラに招待しています。
世界最大級のクラッシック音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル」。
こんなイベントが松本市で毎年行われていることも関係あって、実は松本市は「楽都」と呼ばれています。
2.プログラム
プログラムは大きく6つに分かれます。
「オーケストラ コンサート」「オペラ」「室内楽」「セイジ・オザワ 松本フェスティバル Gig」「教育プログラム」「オープン イベント」です。
では、それぞれを見てみましょう。
2-1.オーケストラ コンサート
オーケストラ コンサートは、AとBがあります。
2016年は、Program Aは8月18日と8月22日に、キッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)にて、Program Bは8月19日と8月21日に、同じくキッセイ文化ホール(長野県松本文化会館)にて開催されました。
Program Aでは、当初は「ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98」(演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ、指揮:小澤 征爾)が予定されていましたが、欧州で体調を崩された小澤さんの体力が十分に回復していないことから、体への負担が少ない曲「ベートーヴェン:交響曲 第7番 イ長調 Op.92」へと変更されました。
同曲は1993年にSKOと松本で初めて演奏して以来、実に23年ぶりの共演でした。
Program Bでは、”マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」”(演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ、指揮:ファビオ・ルイージ、ソプラノ:三宅 理恵、アルト:藤村 実穂子、合唱:OMF合唱団、東京オペラシンガーズ、合唱指揮:松下 京介)が演奏されました。
2-2.オペラ
9月6日と9日、まつもと市民芸術館・主ホールにて演奏されたのが、小澤征爾音楽塾オーケストラによるOMFオペラ”ラヴェル:「子どもと魔法」”。
このオペラは、小澤さんが駆けだしの頃、アシスタントとして最初に勉強した思い出深い曲です。
しかし、こちらも体調面で大事をとる運びとなり、当初は小澤さんが指揮をとる予定でしたが、エリック・ミーリアへと指揮者が変更されました。
2-3.室内楽
今年も例年通り、「ふれあいコンサート」として、フェスティバルに集まった名手たちによる室内楽公演が開催されました。
日にちは8月20日(ふれあいコンサート I)と27日(ふれあいコンサート II)。会場は両方とも、ザ・ハーモニーホール(松本市音楽文化ホール)。
ふれあいコンサート Iでは、出演はミケランジェロ弦楽四重奏団とヴィオラ・佐々木 亮、チェロ・趙 静。曲目は「ボッケリーニ:弦楽五重奏曲 ハ長調 Op.28-4 G.310」「バルトーク:弦楽四重奏曲 第3番 Sz.85」「ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 Op.18」。
ふれあいコンサート IIでは、「バッハ:フルート・ソナタ 変ホ長調 BWV1031」に始まり、「ルーセル:セレナード Op.30」「ラヴェル: 序奏とアレグロ」「チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50『偉大な芸術家の思い出に』」が、若手名手により演奏されました。
2-4.セイジ・オザワ 松本フェスティバル Gig
今年の「セイジ・オザワ 松本フェスティバル Gig」は、非常に注目されていました。というのも、サイトウ・キネン・フェスティバル時代から共演を重ねるマーカス・ロバーツ・トリオを迎え、マーカス・ロバーツへの委嘱作品「ラプソディー・イン・ディー」の初演だったからです。
この「ラプソディー・イン・ディー」は、マーカス・ロバーツが大きな影響を受けてきたガーシュウィンの名曲「ラプソディー・イン・ブルーとピアノ協奏曲ヘ長」にインスパイアされた作品です。
そして8月28日は、その「ラプソディー・イン・ディー」の世界初演の日であると同時に、ジャズとクラシック音楽の芸術的融合作品が完成した日でした。
2-5.教育プログラム
フェスティバル初日の8月9日には、あがたの森文化会館の講堂にて、「OMF室内楽勉強会〜金管アンサンブル〜発表会」が開催されました。オーディションで選抜された10名の若手金管奏者が、SKOメンバーの指導により学んだ室内楽アンサンブルの成果を発表しました。
8月31日は、松本市総合体育館にて「子どものための音楽会」として、長野県下の小学校6年生10,103人の児童を招待して、サイトウ・キネン・オーケストラとマーカス・ロバーツ・トリオが楽器紹介をはさみながら演奏しました。
そして9月7日、8日は、長野県内中学校1年生の約5,263人をまつもと市民芸術館・主ホールに招いて、「子どもと魔法」を演奏しました。このオペラは、2015年に小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIIIで好評を得たオペラでした。
2-6.オープン イベント
セイジ・オザワ松本フェスティバルが盛り上がる理由の一つに、オープン・イベントの充実があります。
8月2日〜8月8日(発表会は 8月8日)、奥志賀高原ホテル「森の音楽堂」にて、「OMF室内楽勉強会~金管アンサンブル~」。
8月21日は、伊勢町Mウイング~本町~大名町~博物館前にて「吹奏パレード」、国宝松本城本丸庭園にて「合同演奏会」。
8月22日は、オーケストラ コンサートの模様を松本市内の特設会場(松本城公園、中町蔵シック館、上土ピカデリーホール)ほか、各都市で生中継する「スクリーンコンサート」。
8月6日は国宝松本城二の丸御殿跡にて、フェスティバルを歓迎するSK松本合唱団とSK松本ジュニア合唱団による演奏会「お城 de ハーモニー」。
上記以外にも、「ウェルカムストリート・ライブ」「フェスティバル展」「温ったか出前コンサート/特別出前コンサート」など盛りだくさん。セイジ・オザワ松本フェスティバルの開催期間中は、長野県のどこかで音楽イベントがあったといっても過言ではありませんでした。
3.日本一のCDコンサート実現か
こんな世界的なクラッシック・フェスティバルですが、OMFには私たちにとって非常に気になるプログラムが企画されていました。それがオープンイベントの一つ「CDコンサート」です。CDコンサートというからには、CDプレーヤーがあって、アンプがあって、スピーカーがあるはずです。
セイジ・オザワ松本フェスティバルは、日本一といっても過言ではないクラッシック音楽祭です。そこで企画されたCDコンサート。気になりませんか?
以下はOMF公式サイトの転載です。
日程:フェスティバル期間中
会場:キッセイ文化ホール 国際会議室
真空管アンプとシアタービックホーンで再現されるサイトウ・キネン・オーケストラの迫力サウンドをお楽しみください。
引用:http://www.ozawa-festival.com/programs/open-events.html#oe05
真空管アンプ?
セイジ・オザワ松本フェスティバルのCDコンサートは、真空管アンプを使うのですか?
しかし、お盆の真ん中、8月15日のことでした。公式サイトのOMFニュースにこんな記事が掲出されます。
CDコンサート 開催中止のお知らせ
フェスティバル期間中に開催を予定しておりましたCDコンサートは、諸事情により中止となりました。
開催を楽しみにして下さった皆様には心よりお詫び申し上げます。
本当に残念でした。
セイジ・オザワ松本フェスティバルでCDコンサートがあると知って、是非行ってみようと思っていただけに、本当に残念でした。来年は諸事情のハードルを乗り越えて、是非、日本一のCDコンサート実現へ向かって欲しいと思います。
4.まとめ
CDコンサートこそ中止にましたが、今年も大成功に終わったセイジ・オザワ松本フェスティバル。日本最高、世界屈指のオーケストラが観られるのは、国内では正直「セイジ・オザワ松本フェスティバル」だけでしょう。
日本のオーケストラ(こと管楽器)はあまり世界的な評価に恵まれているとは言えませんが、このサイトウキネンオーケストラだけは違います。唯一日本から、世界最高のクラシック評論雑誌「グラモフォン誌」において、世界のオーケストラTOP20に選出されており、その評判は傑出しています。
以前は東京などでコンサートも開催されていましたが、最近ではこのセイジ・オザワ松本フェスティバルか、あるいは海外公演でしか聴くことができません。
自分のオーディオで聴くのは当然として、是非小沢征爾が指揮する生の音を聴いてみたいものですね。そして、もし来年にCDコンサートが開催されたなら、是非皆さんとお行き会いしたいものです。