AVとは、Audio(音声)とVideo(映像)の頭文字です。そして、それぞれの信号をAV機器とやり取りするための端子は、過去に非常にたくさん生まれています。現在ではHDMIが一般的になりつつありますが、それでもその他に多くの種類があり、今なお使われている端子も非常に多く存在します。
そうした端子を総称して「AV端子」と呼ぶのですが、慣例的に「AV端子」と言えば、「RCA端子」を意味することもあります。が、実際には冒頭で解説した通り、AV端子の規格は非常に多く、そしてオーディオ愛好家はオーディオ用端子に限らず、AV端子全般に造詣が深い傾向にあり、それぞれの単語や用途を使い分けています。
そこで今回は、AV端子について少し詳しく解説します。初心者には馴染みのない言葉の羅列に見えるでしょうが、ぜひマスターしてみてください。
確かに、いずれは全く使われなくなる端子も出てくることでしょう。しかし、いざ必要となった時、その端子の基礎知識や特徴について知っていれば、変換コネクタの選択や購入後のトラブル軽減にも役立つかと思います。
では早速、各AV端子について掘り下げていきます。
1.RF端子
RFとは「Radio Frequency」の頭文字で、「高周波」を意味します。そして、RF端子とは、高周波信号を扱う端子のことを表すのですが、狭義にはRF接続用の出力端子をRF端子と呼びます。
RF端子は、外部入力端子を備えないテレビが一般的だった頃、ビデオデッキやテレビゲーム機などと映像機器を接続するのに利用されていました。
このRF接続を利用し、アンテナとブースターやテレビ用のアンテナ分配器を使用すれば、複数のテレビに容易に映像と音声を分配することができます。ですから、今でも学校の校内放送などではRF端子は使用されています。
なお、変換されるのはアナログ放送の信号のみです。したがって、アナログではない地上デジタル放送のチャンネルには変換することができません。
そんなRFケーブルは、次の3つが主な用途です。
一つ目が「電波機器」。二つ目が「高周波測定器」。三つ目が「液晶テレビやプラズマテレビなどのアンテナ入出力」。
なお、初期型のファミリーコンピューター等は、このRF端子と同軸ケーブルユニットでテレビと接続していました。
2.RCA端子
RCA端子はAV機器(映像機器や音響機器)などに広く用いられている端子です。据置型の民生用機器では、アナログの映像端子および音声端子では、ほとんどがRCA端子です。
RCA端子の名称は、1930年代に電気蓄音機などに向けてこのプラグの原形を開発したアメリカの大手家電メーカー「RCA(Radio Corporation of America;アメリカ・ラジオ会社)」に由来します。1919年にオーウェン・D・ヤングが創立し、ゼネラルエレクトリックによって買収されて以降は、アメリカのエレクトロニクス(電気機器・半導体)事業を中心とする多国籍企業です。現在はテクニカラー社(Technicolor SA、旧トムソン)が所有する登録商標で、商標使用権売却により様々な商品分野でRCAブランドの商品が販売されています。
広く普及しているため呼称は多く、「ピン端子」「ピンプラグ」「ピンジャック」などは代表的です。
従来は、通称「チューリップ」と呼ばれ、剥き出しのリングに四方の切り込みが入っていましたが、最近は小さな切り込みが一箇所だけで、先端の数mmを除いてプラスチックでカバーされたものが主流です。
RCA端子は用途ごとに色分けされているのが特徴です(ただし、業務用機器では全て黒色のケースがほとんどです)。オス側はカバーに、メス側は穴の周りに色付けされています。
アナログ音声信号なら、
黒は「モノラル」、
白は「ステレオ左」、
赤は「ステレオ右」、
緑は「センター」、
青は「サラウンド左」、
灰は「サラウンド右」、
茶は「サラウンドリア左」、
肌は「サラウンドリア右」、
紫は「サブウファー」
です。
また、
デジタル音声信号なら、橙は「S/PDIF」、
テレビ電波信号なら、黒は「高周波信号(RF)」、
コンポジット映像信号なら、黄は「映像信号(CVBS)」
です
そして、コンポーネント映像信号では、
緑は「緑映像信号」、
青は「青映像信号」、
赤は「赤映像信号」、
です。
ただし、RCA端子は用途ごとに色分けされていますが、基本的には構造の差はありません。そのため、例えばコンポジットケーブル(黄色)3本をコンポーネントケーブルとして使うことも可能です。とはいえ、アナログ音声用など廉価なケーブルは、規格インピーダンスの75Ωを守っていないものもあり、そうしたケーブルを転用すると画質や音質が下がるばかりか、機器の安定性を悪化させたりする恐れもあるので注意が必要です。
3.S端子
S端子はテレビなどで用いられる映像信号入出力用接続コネクタです。正式には「Separate端子」ですが、一般的にはその略として「S端子」と呼ばれています。また、形状がミニDIN-4pinであるころから、S端子をそのように表記している場合もあります。
開発したのは日本ビクター(現・JVCケンウッド)で、1987年のことでした。採用第1号機は、同年に日本ビクターから発売された「HR-S7000」。これにVHS5社連合が歩調を合わせ、各社がビデオデッキやテレビに搭載を開始したことから普及しました。
S端子の長所は、輝度信号(Y)と色信号(C)が別々に伝送されているため、コンポジット映像端子で起こるドット障害やクロスカラー障害が起きづらい点です。逆に、短所は525P,720P,1080iには対応していない点です。
ちなみに、S端子にはワイド映像を識別する信号が付加された「S1端子」「S2端子」が存在します。
S1映像では、画面の左右を圧縮したスクイーズ信号(縦長映像)で、ワイドTVの設定は「フル」です。
S2映像では、画面の上下が黒くなるレターボックス信号で、ワイドTVの設定は「ズーム」です。
4.コンポーネント端子
コンポーネント端子は、色信号(C)をB-Y色差信号Cb(Pb)とR-Y色差信号Cr(Pr)に分けて伝送するインターフェースです。「色差入力端子」とも呼ばれています。
端子はRCA端子と同じ形状で、「Y」「B-Y」「R-Y」の3つの端子があります。Yは輝度・同期信号、B-YおよびR-Yは色差信号です。3つの端子は全て同じ形状をしています。そのため、接続や配線を用意するため、ケーブルやコネクタは「Y」を緑、「B-Y(Cb、Pb)」を青、「R-Y(Cr、Pr)」を赤と色分けしています。
コンポーネント端子の長所は、基本的にHDTV(720P,1080i等)まで伝送可能になったことです。
反対に短所としては、どの映像フォーマットに対応しているのか、端子を見ただけではわからない上、ケーブルが3本あるため接続が面倒な点です。
なお、左右の音声を分けて5本ケーブルで接続する「ハイエンド業務用機器」なども販売されています。
5.D端子
D端子は日本独自の規格で、映像機器のアナログ映像信号を伝送するための接続端子です。形状がPCのコネクタを彷彿させたり、あるいはデジタル放送受信や録画再生機器に採用されているため、D端子の「D」を「Digital(デジタル)」の頭文字だと思われている方が多いようですが、それは誤りです。D端子という名称の由来は、ハーフピッチベローズコネクタの形状が「D」の文字型をしていることです。また、そもそもD端子の内部の信号は、デジタル信号ではなくアナログ信号です。
通常「D端子」と呼ばれていますが、実際にはD1端子~D5端子まであって、形状は同じでも対応する映像フォーマットによって以下のように分けられています。
D1端子は、480i 対応。
D2端子は、480i / 480p 対応。
D3端子は、480i / 480p / 1080i 対応。
D4端子は、480i / 480p / 1080i / 720p 対応。
D5端子は、480i / 480p / 1080i / 720p / 1080p 対応。
D端子の映像信号は、基本的にはコンポーネント端子と同じです。コンポーネント端子の3本を1つにまとめただけです。ただし、同時に「4:3」と「16:9」の画角信号も伝送されています。
D端子の特徴は、D1~D5に分類して対応する映像フォーマットを明確にした上、3本ケーブルを1つにまとめたので接続が簡単になり、画角信号も同時に伝送が可能な点です。ただし、アナログ信号であると同時に、コネクターの幅が約26mmと広く配管に後から通せなかったり、2011年以降製造の機器において、BDソフト再生時にD2(480i,480p)までに出力が規制されている点は欠点とも言えます。
6.VGA端子
VGAはアナログのRGBコンポーネント映像信号の入出力を行います。デジタル情報を連続的な波であるアナログ信号により伝送し、ディスプレイ表示します。主にパソコンやその周辺機器の映像出入力接続用のインターフェースとして採用されており、別名「アナログRBG端子」とも呼ばれています。
古くからある規格で、DVIやHDMIが主流になるまではほぼ全てのパソコンにこの端子が搭載されていました。現在でも汎用性の高い接続規格として、ディスプレイやプロジェクタなど様々な機器に採用されています。
特にD-sub15ピンは昨今でもよく見かける端子です。
D-Subとは、「D-subminiature(ディー・サブミニチュア」の略で、VGA端子に用いられている端子の種類です。接続部分のピンの数によって次の5種類
・9Pin
・15Pin
・23Pin
・25Pin
・37Pin
に分類されています。ピンの数によって対応機器が異なるので、使用の際には注意が必要な端子です。
7.DV端子
IEEE1394に準拠したデータ入出力端子です。
デジタルビデオカメラとパソコンを接続して、撮影したデジタル映像をパソコンに転送したり、DV規格の外部周辺機器と接続したりします。ちなみに、パソコンからデジタルビデオをコントロールすることも可能です。
なお、i.LINKとFireWireは、名称は異なりますが構造は同じです。
8.DVI端子
DVIは「Digital Visual Interface(デジタル・ビジュアル・インターフェース)」の略で、デジタルディスプレイの映像品質を最大限活かすように設計されたインターフェースです。ディスプレイに無圧縮のデジタル映像データーを送信できるため、高品質な映像を映し出すことが可能です。
DVIには以下の2種類があります。
一つが、DVI-I。デジタル信号とアナログ信号の双方に対応しており、4つの四角のピンがあるのが特徴です。
もう刺突が、DVI-D。デジタル信号のみの対応規格です。
ちなみに、HDMIはDVIの派生規格です。そのため、DVIとは互換性が一部において認められるところがあります。
9.HDMI
HDMIは「High Definition Multimedia Interface(高精細度マルチメディアインターフェース)」の略で、映像や音声などをデジタル信号で伝送する通信インタフェースの標準規格です。Silicon Image、ソニー、東芝、トムソン、パナソニック、日立製作所、フィリップスの7社が共同で規格を策定し、2002年12月にHDMI 1.0の仕様が策定されました。
PCにはDVI(Digital Visual Interface)というデジタル接続可能な規格がありますが、コネクタが大きい上に映像のみの伝送だったため、デジタル家電には最適とは言えませんでした。そこでDVIを発展させ、映像だけでなく音声やコントロール信号を追加。さらにコネクタを小さくして、新規格「HDMI」を誕生させます。
このHDMIは急速に普及し、最近の機器ではアナログ端子が廃止され、HDMI端子のみの機種も目立つようになってきています。また、HDMIで接続された機器同士をHDMI端子を通して相互操作することも珍しくなってきています。
現在、HDMIは5つのタイプに分類されています。
タイプAは19ピンの標準タイプです。
タイプBは29ピンのコネクタで、デュアルリンクにより1080pを超える解像度をサポート。形状はタイプAを横に拡張したものです。
タイプCは19ピンのミニHDMI端子です。タイプAより小型で、ビデオカメラなどに採用されています。
タイプDは19ピンのマイクロHDMI端子です。携帯電話やデジタルカメラなどに主に採用されています。
タイプEは19ピンの自動車用HDMI端子です。主に車内部の映像用配線に使用されています。
HDMIの長所は、デジタル信号なので1本のケーブルで映像信号と音声信号の両方を送れる点です。また、デジタル信号をアナログ変換しないため、映像はより鮮明です。
しかし、HDMIは再生専用端子です。通常HDMI端子から録画することはできず、また、ケーブルの曲げや埃に弱い傾向があるため、取扱いには十分な注意が必要な点がデメリットと言えます。
10.BNC
BNCは細心同軸ケーブルで、規格上はRCAよりも広い数GHzまでの信号にも対応しています。主にコンポジットやコンポーネント信号伝達の「接続端子」として、業務用AV機器に多く用いられています。
端子としての特徴は、バヨネット・ロックと呼ばれるロック方式を採用しているためネジなどを使用せずロックが可能で、容易に着脱ができて確実な点です。そのため、現場での信頼性は非常に高く、結果、先述の通り今でも多くの業務用機器で使用されています。
11.SCART端子
SCART端子は「Syndicat des Constructeurs d’Appareils Radiorécepteurs et Téléviseurs」の略で、AV機器間の映像と音声信号をまとめて伝送できる接続端子です。この規格を開発したフランスでは「Péritel」とも呼ばれているそうです。日本国内ではあまり見かけませんが、ヨーロッパでは広く普及した規格です。
主な使用シーンは、アナログ形式のビデオデッキやDVD、チューナー、コンピューター、ビデオゲームなどで、それらとテレビ受像機をシンプルに接続できる点が特徴です。また、S端子やRGB端子と同レベルな高画質で信号の伝送が可能です。
コンポジット映像信号は入出力信号を同時に流すことが可能です。
また、1980年代後半には、S映像信号(Y/C分離コンポーネント)の伝送が可能なように規格拡張が実施されましたが、S映像信号やRGB映像信号は一方向にしか流せません。そして、日本でも一時普及したサムスン製モニターの一部に付いている角型の端子は、RGB21ピンではなくSCART端子なので注意が必要です。
12.SDI端子
SDI端子は、「Serial Digital Interface」の略で、ビデオ信号伝送規格の一つです。主に業務用ビデオ機器に使用されていて、 標準画質の非圧縮デジタル映像とデジタル音声をBNCコネクタと同軸ケーブル1本で伝送できます。一方で、「MPEG-2」や「H.264」などの圧縮形式の動画データを、SDIにより保存や送受信することもあります。
最長で100m遠方への送信も可能で、中継現場などでは非常に威力を発揮する端子です。
13.S/PDIF
S/PDIFは「Sony Philips Digital InterFace」略で、CDの規格を策定したSONYとPHILIPSが共同で策定した端子です。主に映像、音響機器などの音声信号をデジタル転送するために使われています。
読み方は「エスピーディフ」「スピディフ」などがありますが、一般的には「デジタル音声入出力端子」と呼ばれています。
デジタル音声を転送するAES/EBUという業務用の規格を簡略化したもので、データの転送方式はほぼ同じです。
14.AVマルチ端子
AVマルチ端子は、アナログ映像信号とアナログ音声信号を1つにまとめて伝送できるコネクタです。主にソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation系ゲーム機や、Sony系テレビで採用されていました。
RGB出力に関する様々な制約などから、次第に搭載されるケースが減少。PSXおよびPlayStation 4からはAVマルチ端子に非対応となっています。
15.フォーン端子
フォンコネクタ(phone connector)は、音響機器の接続に使われている一対のコネクタです。19世紀に手動のパッチパネルによる電話交換台にて交換手が操作したものだったことが「フォンコネクタ」という名称の由来です。そして、日本ではフォンコネクタを端子の一種として「フォーン端子」とも呼びます。
フォンコネクタのうち、オス型は「フォーンプラグ (phone plug)」、メス型は「フォーンジャック(phone jack)」と呼びます。なお、フォーンプラグは一本の棒状のプラグの先端部と胴体部をそれぞれ絶縁して接点とした端子です。
フォーン端子は基本的にはオーディオ信号を伝達する規格です。しかし、標準サイズやミニ、マイクロといった形状があり、多くの仕様があるため購入時には注意が必要な端子です。
また、モノラル用の2極(TS)、ステレオ用の他にもモノラルの平衡接続にも使われる3極(TRS)、さらに3極のTRSコネクターのスリーブ端子をさらに分割した4極(TRRS)も存在し、用途により細かく使い分けられています。
ちなみに、ソニーのノイズキャンセル機能付きウォークマンでは、ヘッドフォンコネクタは5極です。追加した2極はノイズキャンセル機能に割り当てられています。
そして、デジタルカメラ用に4極ミニプラグや、MDプレーヤー用に6極スプリットステレオミニプラグも開発されています。
16.XLR端子
XLR端子は、業務用マイクの接続、スピーカー接続、デジタル伝送、あるいはアナログオーディオ伝送などで使用される端子です。日本の「キヤノン」とは無関係の「キャノン社(Cannon社)」が開発したため、「キャノンコネクタ」とも呼ばれる一方、XLR端子を得意とするリヒテンシュタインNEUTRIK社の社名から「ノイトリックコネクタ」とも呼ばています。
XLR端子を使う最大のメリットは「バランス接続」である点です。
XLRケーブル以外の接続は、基本的には「アンバランス接続」です。
アンバランス接続とは、2本の導線を持つケーブルにて接続する方法です。1本がホット(+)、もう1本がグランド(アース)です。
ノイズが入りやすいという欠点はありますが、低コストのため一般AV機器全般に採用されています。
一方、「バランス接続」は、3本の線で接続します。
国際基準では「1番=グランド」「2番=ホット」「3番=コールド」です。グランドはアース、ホットは正相(+)、コールドは逆相(−)です。
送信側で逆相の信号を作り、正相の信号と同時に伝送。
受信側で百草の信号を反転させ、清掃の信号と合成。
この手順により、外部ノイズを除去することができる接続方法です。
そして、この接続端子には、ほぼXLR端子が用いられます。