音楽や映像を鑑賞したい。
そんな時、必ず必要となる準備作業が各オーディオ機器・AV機器同士の接続です。しかし、その接続端子には非常に多くの種類があり、どれをどのように接続したら良いのか初心者にはわからないものです。
そこで今回は端子についてまとめてみました。
1.端子の定義
端子とは電線を接続するための電子部品の総称です。オーディオ機器やAV機器の電流の出入口に付ける、外部との連絡のための金具です。そのため「ターミナル」とも呼ばれています。端子は用途により使うものが異なるため、その種類は非常に多く存在します。
ちなみに、端子とコネクタはほぼ同義です。
厳密に言えば、コネクタは電子信号の受け渡しをワンタッチでできるものを意味し、一方、端子は電子信号の受け渡しをするためのものの総称を表すため、若干の違いはあります。コネクタは端子カテゴリーの一つです。つまり、コネクタは端子ですが、端子は必ずしもコネクタではないということです。
しかし、初心者〜中級者は、端子もコネクタもほぼイコールとして捉えても問題はないでしょう。
2.端子の種類一覧
端子には非常に多くの種類があります。この章では、それぞれについて簡単に説明・紹介します。
2-1.AV端子
AVとは、Audio(音声)とVideo(映像)の頭文字です。そして、AV端子とは、AV機器(音響機器・映像機器)同士を接続し、音声や映像信号の伝達に使用される接続端子の総称です。オーディオ専用の端子もあれば、オーディオとビデオが一緒になった端子もあり、その形状は流れる信号の規格により様々なものがあります。
代表的なものには
- 「RF端子」
- 「RCA端子(通称:ピン端子)」
- 「S端子」
- 「コンポーネント端子(通称:色差端子)」
- 「D端子」
- 「HDMI」
- 「BNC端子』
などがありますが、一般的には「AV端子」と言ったら「RCA端子」を示すことが多い傾向にあります。
2-2.VGA端子
VGA端子とは、アナログRGBコンポーネント映像信号を出力、あるいは入力する装置のコネクタ、およびその信号を伝送するケーブルに用いられるコネクタです。VGA規格に準拠したIBM製グラフィックボードにこのコネクタが採用されたことが、この名称の由来です。また、アナログ信号によって伝送するため、「アナログRGB端子」とも呼ばれています。
ちなみに「VGA」とは、Video Graphics Array(ビデオ グラフィックス アレイ)の略です。代表的な表示モードは 640×480ピクセル・16色。そのため、「640×480ピクセル」の画面解像度は、俗に「VGA」とも呼ばれています。
VGAは古くからある規格で、DVIやHDMIが主流になるまでは、ほぼ全てのパソコンにこの端子が付いていました。現在でも汎用性の高い接続規格として、パソコンやプロジェクタを筆頭に、様々な機器に付いています。
なお、D-sub端子はpinの数により伝送形式は様々で、D-sub(15pin)はVGA信号による伝送形式をとっています。
2-3.USB端子
USBは現在のPC周辺機器において最も普及した汎用インターフェースです。最初の規格はUSB 1.0で、1996年に誕生しました。しかし、今ではPCのみならず、デジタルデータの転送用として、PCを介した映像や音声の入出力に使用されるケースも増え、広くAV機器にも採用されています。
2017年現在では、規格は以下の6つです。
1996年に発行された「USB 1.0」。*最大データ転送速度 12Mbit/s
1998年に発行された「USB 1.1」。*最大データ転送速度 12Mbit/s
2000年に発行された「USB 2.0」。*最大データ転送速度 480Mbit/s
2008年に発行された「USB 3.0」。*最大データ転送速度 5Gbit/s
1996年に発行された「USB 3.1」。*最大データ転送速度 10Gbit/s
1996年に発行された「USB 3.2」。*最大データ転送速度 20Gbit/s
2-4.圧着端子
圧着端子は、電線と端子に物理的圧力をかけることにより固着させた接続端子です。英語では「solderless terminal」。「solder」は「はんだ」、「less」は否定を意味するのですが、その名の通り、本来はんだ付けしていたものを、作業性改善などの目的ではんだづけを行わなくなった端子です。
圧着端子には様々な種類がありますが、いずれも圧着工具によって電線と強固に固定されるものを指し、端子先端は電気設備の端子盤にネジ止めする形式が一般的です。
2-5.その他
上記以外にも端子はあります。例えば、バナナプラグに対応していることで有名な「陸軍端子(陸式端子、とも)」や「ジョンソン端子」などです。
ただし、バナナプラグは脱着に優れているため利便性は高いものの、接続部が剥き出しのためショートや感電の危険性が高く、また、接触抵抗の問題から音質を追求するオーディオフィルの間では敬遠されがちな端子です。
3.これだけは絶対に知っておきたい「オーディオ用端子」
オーディオを楽しむには避けては通れない「端子やケーブルの複雑さ」。しかし、この接続はオーディオでまず最初にくじけそうになる分野です。そこでこの章では、「端子がややこしくてよくわからない」という初心者、あるいは今さら聞けないベテランのために、オーディオ用端子を解説します。
3-1.オーディオ用端子の種類
上述の通り、端子にはいくつもの種類があります。その中でも、オーディオ用端子はAV端子の一部に属し、さらにAV端子はアナログとデジタルに分かれます。そして、アナログに代表されるのがRCA端子やフォーン端子で、デジタルに代表されるのが光デジタル端子や同軸デジタル端子です。
また、従来のオーディオ機器はアナログだけで接続すればよかったので、アナログかデジタルかさえ承知していれば問題はありませんでした。しかし、最近ではテレビやパソコンに接続したり、ネットワークなどにもアクセスできるようになったため、端子の種類は一気に増加。それが原因となって、近年の端子は非常に複雑になりました。
3-2.RCA端子
RCA端子は、アメリカの大手家電メーカー「RCA社」に由来し、他にも「ピン端子」「ピンプラグ」「ピンジャック」などとも呼ばれているメージャーな端子です。今でこそ主流の規格ではなくなりましたが、それでも依然として多くのAV機器、パソコンやグラフィックボードからテレビに映像を入出力する際などによく見かける端子です。
一般流通しているRCA端子は、赤、白、黄色の3種類に色分けされていますが、構造自体は変わらないケースがほとんどです。
では、なぜ色分けされているのかというと、接続時に見分けがつくようにするためです。ですから、基本的には同じ色同士を接続すれば、それだけで正しく配線できるようになっています。
具体的には、RCAの赤と白は音声です。
たいていの場合、赤はR(右)の音声用、白はL(左)の音声用です。とはいっても、上述の通り構造自体は変わらないものがほとんどなので、左右を反対に接続してもまず音が鳴らないということはないでしょう。
黄色は映像の入出力に利用されます。
「コンポジット(Composite Video Signal)」「CVBS(Composite Video, Blanking, and Sync)」とも呼ばれ、Y(輝度)とC(色)の信号を複合して伝達します。大きな会場などに設置されているプロジェクタなどへの入力は、今でもこのコンポジットケーブルでの配線が主流です。
3-3.フォーン端子
RCA端子は概してモノラルなのに対し、フォーン端子はヘッドホンなどで使用されているステレオフォーンが大方です(ただし、業務用音響機器や楽器用などでは、フォーン端子でもモノラルのフォーン端子が一般的です)。
接続が容易なため、頻繁に抜き挿しするシーンには最適です。
また、一般的には2極(モノラル入出力)、あるいは3極(ステレオ入出力)の接続で使用され、プラグの先端を「チップ (tip)」、根元を「スリーブ (sleeve)」、そして、3極のスリーブと同径で絶縁された部分を「リング (ring)」と呼びます。
主な用途は、マイクロフォン、ヘッドフォン、電子楽器等の端子、あるいはパコソンのマイク端子やヘッドフォン端子です。
ちなみに、楽器用途においては、両端にフォーンプラグが取り付けられたケーブルを「シールド」と呼ぶ人が多いようですが、「シールド」とはあくまで「シールド・ケーブル」、つまり「同軸ケーブル」の略です。したがって、本来は両端の端子の形状とは無関係であり、あくまで同軸ケーブルにフォーンプラグが付けられたものだけが「シールド」です。
フォーン端子はオーディオでは非常に採用されている端子ですが、サイズは様々なです。
下の写真のように、左より「2.5mm 2極(マイクロ)」「3.5mm 2極(ミニ)」「3.5mm 3極(ミニ)」「6.3mm 3極(標準)」とあります。
2.5mmは、「ミニミニ(ミニミニプラグ)」などと呼ばれているサイズの端子です。ポータブル機器(DAPのバランス接続やカード型ラジオ)、データレコーダ・ICレコーダーのコントロール端子に使用されています。
3.5mmは、「ミニ(ミニプラグ)」と呼ばれているサイズの端子です。一般的な音楽プレイヤーやパソコンなどで使用されています。
4.4mmは、2016年にJEITAがバランス接続用途として5極 (TRRRS) プラグ・ジャックを規格化しました。
6.3mm(1/4インチ)は、いわゆる標準サイズの端子です。業務用・民生用問わず、一般的な音楽機器類で使用されています。元は電話交換台用だったことから「フォーン端子」と呼ばれるきっかけとなったものです。
RCA端子では、接続には色で見分けて接続しましたが、フォーン端子では、上記のようにサイズで見分けて接続します。
3-4.S/PDIF端子
S/PDIFは「Sony Philips Digital InterFace」の略で、「エスピーディーアイエフ」と呼ばれ、映像や音響などの音声信号をデジタル転送するための規格です。ソニーとフィリップスが策定しました。
端子には大きく2種類あります。
「光デジタル音声端子(オプティカル)」と「同軸デジタル音声端子(コアキシャル)」です。それぞれは、IEC60958 (-3)およびEIAJ RC-5720Bで規格化されています。
3-4-1.オプティカル(OPTICAL)
「OPTICAL」の表記で見かけるオプティカル端子は、光デジタル端子です。ケーブルに光ファイバーを使用しているのが特徴です。そして、コネクタには角形コネクタと丸型コネクタがあり、コネクタが異なる場合は変換アダプタで対応します。
おしなべて、角形コネクタは据え置き型オーディオ機器やテレビやゲーム機などに採用されています。
一方、丸型コネクタはノートPCなどに搭載されています。
3-4-2.コアキシャル(COAXIAL)
「COAXIAL」の表記でみかけるコアキシャル端子は、同軸デジタル端子です。形状はアナログ音声端子のRCAと同じですが、デジタル端子です。プラグは他のものと識別ができるよう、一般的にはオレンジ色に塗られています。しかし、必ずしも統一されているわけではなく、メーカーによってはブルーを使用していることもあり、一概には言えないのが現状です。
一般的には、光は普及機向け、同軸は高級機向け、という傾向があり、コアキシャル端子を搭載するのは高級モデルが多い傾向にあります。
4.これだけは知っておきたい「映像端子HDMI」
現在最も普及している端子の一つに「HDMI端子」があります。
HDMI端子は、主にテレビを中心として、その周辺機器とをつなぐ端子です。テレビとハードディスクレコーダー、テレビとゲーム機、テレビとDVDやBD再生機などを繋ぎます。
最大の特徴は、一本のケーブルで映像や音声を伝送できる点です。
昔主流だった赤・白・黄のRCA端子では、赤と白で音声、黄色で映像を伝送するため3本をそれぞれに繋がなければなりませんでしたが、HDMIでは1本で完了します。そのため、近年のテレビを中心としたAV機器は、HDMI端子さえあれば接続は完了する傾向にあります。
5.まとめ
端子は大きく分類すると3つに分けられます。
- 音声入出力用
- データ転送用
- ネットワーク接続用
です。
②のデータ転送用はUSB端子が代表的ですし、③はLAN端子が代表的です。
一方、①の音声入出力用については、さらにアナログとデジタルに細分類され、
アナログ端子では「RCA端子」や「フォーン端子」
デジタル端子では「光デジタル端子(オプティカル)」や「同軸デジタル端子(コアキシャル)」
が代表的です。
RCA端子は接続方法は簡単です。
色を合わせるだけです。
右音声の赤い端子には赤いケーブルを、
左音声の白い端子には白いケーブルを、
映像があるものなら映像用の黄の端子に黄色をつなぐだけです。
ちなみに、カバーの色は異なっても構造は同じです。
ただ、フォーン端子はサイズに注意が必要です。
「2.5mm 2極(マイクロ)」「3.5mm 2極(ミニ)」「3.5mm 3極(ミニ)」「6.3mm 3極(標準)」と種類があるので、端子に適したものを選び使用しましょう。
そして、デジタル端子については
一般的には光よりも同軸の方が音質が良いと言われており、光デジタル端子(オプティカル)よりも同軸デジタル端子(コアキシャル)を搭載しているモデルの方が価値が高いとされています。
最後に、HDMIについて一言。
HDMIは一本のケーブルで映像も音声を伝送可能です。そのため、近年では非常に普及してきており、多くのAV機器はHDMI一本でほとんどをつなぐことができます。したがって、もしテレビとその周辺機器を繋ぐ必要が出たら、まずはHDMI端子があるかどうかを確認しましょう。それだけで、とても解決できることは増えます。
配線や接続でくじけて、よりよい音環境を諦める人が一人でも減りますように。
そんな思いを込めて書いたこの記事が、皆様と豊かな音を結んでくれることを心よりお祈りしています。