AUX端子への接続時に注意すべきこと

皆さんはAUX端子を正しく理解できていますか?AUX端子に接続してはならないパターンがあることをご存知ですか?今回はそんな「知ってそうで知らないAUX」の接続時に注意すべきことをまとめました。
AUX端子への接続時に注意すべきこと

今、オーディオと音楽を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。特にインターネットを利用した音楽配信業界の急成長により、携帯音楽プレーヤーやネットワークオーディオはとても普及しつつあって、オーディオと外部機器との接続機会も非常に増えています。そんな背景もあって(また、カーナビにも普及していることもあって)、AUX端子がしばしば話題になっているようです。今回はAUX端子について詳しくまとめてみたいと思います。

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1.AUXとは

1-1.語源

「AUX」の語源は、英単語「Auxiliary」の略です。発音は[o:gzi’liэri](オグジュアリー)です。「補助の」「予備の」という意味の形容詞(あるいは「補助」という意味の名詞)です。

この最初の三文字をとったものが「AUX」とです。

1-2.「AUX」の読み方

「AUX」の読み方は様々です。「エーユーエックス」「オックス」「オークス」などがあります。

しばしば「AUXをなんと読むか」というアンケートを見かけますが、どれも回答の集計を見ると結果は様々です。どうやら最も一般的な読み方はないようで、本当に人によって様々です。ですから「どの読み方が正解か、というものはない」が正解でしょう。

ただ、「Auxiliary」の略ということもあり「オックス」が多いようには感じます。が、「エーユーエックス」あるいは「オークス」と呼んでいる人も少なくないのが現状です。

個人的には「AUX」という表記は誰も一度は目にしているはずなので、「オックス」と言うよりも「エーユーエックス」と言えば、相手がオーディオ初心者でも伝わるのではないか、と感じています。

1-3.AUX概略

AUXとは、補助的な役割を果たす音声接続端子です。

主にオーディオ機器に備えられている端子ですが、近年ではカーオーディオにも普及しています。また、高級デジタルピアノの一部には、スピーカーなどの外部機器に出力する機能があるものも存在します。

2.AUX接続可否

2-1.オーディオアンプとAUX

オーディオアンプにおいては、レコードやCD、チューナー、カセットなど、標準的な機器以外を接続する際に使用します。例えば、ipodやその他ネットワークオーディオプレーヤーなどと接続する場合です。

しかし、これらの機器は必ずAUX端子に接続しなければならないものではありません。例えば、CDの入力端子にネットワークオーディオプレイヤーをつないでも問題はありません。反対に、CDプレーヤーをAUX端子に接続しても問題はありません。

AUXはあくまで予備的な端子です。ですから、基本的には他の端子と何ら変わりがあるわけではなく、仕様が同じなら何を接続しても大丈夫です。

2-2.AUX端子に不向きなもの

おおよそ何を繋いでも問題のないAUX端子ですが、アナログレコード用のPHONO端子には不向きです。

というのも、アナログレコードへ録音する際は、低音が多いとカッティング時にエラーが発生することもあり、「ロー下げハイ上げ」と言って極端なイコライジングが行われています。ですから、レコードを再生する時にはこれを補正し、元に戻す必要があります。そして、その役割を果たすのが、PHONO端子に入力された信号を補正する「フォノイコライザー」です。

PHONO端子とAUX端子では、まるで役割が違います。
接続時にはこの二つには注意しましょう。

2-3.正しくは「AUX」ではない?

スマートフォンやウォークマン、iPodなどにはイヤホン出力ジャックがあり、その形状はAUX端子と同じ、あるいは似た形をしています。また、パソコンなどのマイク入力ジャックも同様です。

これらについては、広義にはAUX端子です。
しかし、厳密にはジャックの形が同じというだけで、本来の機能に対して予備的に外部機器と接続されるわけではありません。AUX端子とは「予備的な端子」です。ですから、イヤホンを接続するなど本来想定されている使い方をされる端子は、「AUX」というより「ミニジャック端子」と表現すべきでしょう。

とは言え、そこまで明確に区別する内容のことではありません。ただ、「AUXとは後から何かを接続できる予備的端子」と認識していれば、とてもわかりやすいのではないでしょうか。

2-4.「AUX IN」と「AUX OUT」

AUX端子に接続される信号は、基本的には双方向に流れるの通信信号ではありません。片方向に流れる一方通行の信号です。そのため、次の二つが存在します。

端子への入力→AUX IN端子
端子から出力→AUX OUT端子

例えば、スマートフォンやウォークマン、ipodなどを外部スピーカーと接続するとします。このとき、それら再生機で再生された音楽信号を外部スピーカーに向けて出力するので「AUX OUT」です。

一方、カーオーディオのAUX端子は、スマートフォンなどの外部再生機から送られる音楽信号を入力しますから、「AUX IN」
です。

信号を出力する端子が「AUX OUT」、信号を入力する端子が「AUX IN」です。

3.AUXプラグの構造

3-1.プラグとジャック・ポート

AUX端子は、日本語では「AUXプラグ」と「AUXジャック(AUXポート)」の二つを意味します。

プラグとはオス側です。
ですから、挿す棒の方が「AUXプラグ」です。

ジャック・ポートとはメス側です。
ですから、挿される穴が「AUXジャック」「AUXポート」です。

ただし、日本では日常的には「AUXジャック」を「AUX端子」と表現する傾向にあります。

3-2.AUXプラグの大きさ

AUXフォーンプラグは、大きさにより4種類に分類できます。
「マイクロプラグ」「ミニプラグ」「JEITAバランスプラグ」「標準プラグ」です。

しかし、ヘッドホンなどにおいては、民生用機器と業務用機器の明確な境目がなく、ミニプラグ採用機器と標準プラグ採用機器が混在しています。そのため、標準とミニの間では変換プラグが用意されており、変換プラグの愛用者は少なくないようです。

では、以下に四つのそれぞれのプラグの特徴を簡単に紹介します。

3-2-1.マイクロプラグ

直径2.5mmのプラグが「マイクロプラグ」です。
ミニミニやミニミニプラグなどと呼ばれているサイズの端子で、主にICレコーダーなどの小型機器に採用されています。

3-2-2.ミニプラグ

直径3.5mmのプラグが「ミニプラグ」です。
ミニやミニプラグと呼ばれているサイズの端子で、主に一般的な音楽プレイヤーやパソコンなどに採用されています。

3-2-3.JEITAバランスプラグ

直径4.4mmのプラグが「JEITAバランスプラグ」です。
2016年にJEITA(電子情報技術産業協会)が規格化したバランス接続用端子です。

3-2-4.標準プラグ

直径6.3mmのプラグが「標準プラグ」です。
いわゆる標準サイズの端子で、主に楽器や音響機材などに採用されています。元々は電話交換台用でした。

3-3.AUXプラグの構造

AUXプラグは構造により4種類に分類できます。
2極、3極、4極、5極です。

それぞれはプラグ先端の線の数で判別できます。2極は1本、3極は2本、4極は3本、5極は4本です。線の部分で電気的に絶縁されいますから、線の数+1の極数の信号を区別して伝送できます。そして、当然ですが構造により機能も異なります。

2極→音声の入出力がモノラル形式。
3極→音声の入出力がステレオ形式。
4極→3極の構造にマイク機能を追加したもの。
5極→3極にノイズキャンセリング機能を追加したもの。

なお、この中で一般的かつ1番メジャーなプラグは3極です。

3-4.ヘッドセットにおけるAUX

ヘッドセットのプラグで一般的なのは、3極と4極です。
それぞれの主な利用シーンは、3極は一般的な音楽プレイヤーやパソコン、4極はスマートフォンやタブレットなどを利用する時です。

3極と4極の違いは上述の通りです。絶縁リングの数の違いであり、3極がステレオ形式であるのに対し、4極は3極構造にマイク機能を追加したものです。そのため、4極ならそれ1本で音声出力と音声入力が可能ですが、3極ではそれ1本で両方の機能を果たすことはできません。したがって、3極タイプのヘッドセットでは、ヘッドホン端子とマイク入力端子の2本用いることになります。

では、3極と4極を誤って接続した場合はどうなるでしょう。

結論を言いますと、4極ジャックに3極プラグを接続した場合は、音声出力は可能です。しかし、3極ジャックに4極ジャックを接続した場合は、音が出ない、あるいは音が非常に小さいなどの不具合を引き起こします。

ただし、4極ジャックに3極プラグを挿した場合も、一切のリスクがないわけではありません。4極は3極のGNDにあたる部分を二分割しているため、4極ジャックに3極プラグを挿すとこの二つがショートします。が、通常はそれを想定してハードウェアが設計されているため、単に4極ジャックに3極プラグを挿しても正常に作動するだけです。そのため、物理的にコネクターの形状が同じでも、信号の用途が全く異なるものにおいては故障する危険もあり注意が必要です。

また、4極は更に「CITA」と「OMTP」という2種類の規格があり、それらを誤って接続した場合も音が聞こえないなどの不具合を引き起こす可能性があります。

●「OMTP」と「CTIA」

スマートフォンや携帯音楽プレイヤーでは、大きく「OMTP(Open Mobile Terminal Platform)」と「CTIA(Cellular Telephone Industry Association)」の二つの規格が混在しています。しかし、OMTP規格は古い端末か海外の端末で多く、一方でCITAはiPhoneなどが採用していることもあり、最近ではCITAの方が主流でしょう。

両者の違いは、
OMTPはプラグの先端から、左音声/右音声/マイク/グランドですが、
CTIAはプラグの先端から、左音声/右音声/グランド/マイクです。
つまりマイクとグランドが入れ替わっている点です。

しかし、ほとんどのヘッドセットでは「OMTP」か「CTIA」かなどの記載はなく、「iPhone対応」などのように特定の機種名を出して市販されているケースが目立っています。ですから、例えばiPhone対応なら「CTIA」ですから、同じ仕様の機器に接続して使用することが可能であることを意味します。

ちなみに、機器によっては「OMTP」と「CTIA」を自動的に判別し、切り替えることができるものもあるそうです。

https://audio.kaitori8.com/topics/1364/

4.AUXフォーンプラグの接続注意点

現状流通している主なプラグは、信号の種類によって分類すると主に次の8種類あります。

(1)2極プラグ(モノラル信号のアンバランス伝送用)
(2)3極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用 or モノラル信号のバランス伝送用)
(3)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用)
(4)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用)
(5)4極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+その他制御用)
(6)4極プラグ(ステレオ信号のバランス伝送用)
(7)5極プラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+ノイズキャンセリングマイク用)
(8)5極プラグ(ステレオ信号のバランス/アンバランス伝送用+アンバランス時のGND用)

そこでこの章では、AUXフォーンプラグを接続するときに気をつけるべき点を紹介します

4-1.2極AUXプラグと3極AUXプラグの注意点

モノラルで聴きたいときは、2極AUXプラグか3極AUXプラグを使用します。
2極と3極の違いは「バランス伝送」での視聴か、「アンバランス伝送」での視聴かの違いです。

アンバランス伝送は不平衡伝送とも呼ばれ、シンプルにグランド信号を基準として伝送信号を送ります。一方、バランス伝送は平衡伝送とも呼ばれ、伝送信号と逆相の信号を同時に伝送し、ノイズをキャンセルします。そのため、バランス伝送はアンバランス伝送よりもグランドが安定し、外部からのノイズに強いなどのメリットがあります。

そして、アンバランス伝送によるモノラルで聴きたいときは、先端から、音声/グランドの「2極プラグ」を使用します。
また、バランス伝送によるモノラルで聴きたいときは、先端から、音声+/音声-/グランドの「3極プラグ」を使用します。

しかし、同じ3極プラグでもステレオ(アンバランス伝送)を聞くことは可能です。先端から、左音声/右音声/グランドの「3極プラグ」を使用します。

ただ、ほとんどのエントリー機器ではアンバランス伝送で、バランス伝送には対応していません。バランス伝送対応は高級機種や業務用音響機器に限られます。そのため、オーディオ初心者や一般的なオーディオ機器をお持ちの方は、難しく考える必要はありません。

基本的には、以下のように認識していて問題はありません。

機器側がステレオ対応なら、「先端の線が2本の3極プラグ」を使用。
機器側がモノラル対応なら、「先端の線が1本の2極プラグ」を使用。

4-2.4極AUXプラグの注意点

4極以上のプラグにおいては、標準プラグやマイクロプラグはほとんど存在しません。そこで、今回はミニプラグについて中心に解説します。

が、まずは「4極以上のプラグには統一規格がない」ことは押さえておきましょう。本当に様々な規格が乱立しています。さらに4極ミニプラグに限っては、プラグ先端の線の数でも区別できません。とりあえず、4極ミニプラグケーブルで伝送される情報は、代表的なものでも次の3つが挙げられます。

(1)ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用
(2)ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用
(3)ステレオ信号のバランス伝送用 

(1)は、スマートフォンや携帯電話、パソコン等のイヤホン+マイクなどに採用されています。
(2)は、ビデオカメラ・スマホなどの音声+映像出力に採用されています。
(3)は、ハイレゾウォークマンなどのハイエンド音楽プレーヤーや高級アンプに採用されています。

では、それぞれの注意点を以下に紹介します。

4-2-1.ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用

マイクな主な用途は
①スマートフォンや携帯電話においては「ハンズフリー通話など」
②パソコンにおいては「スカイプなどのTV電話やオンラインゲーム、あるいは音声チャットなど」
です。

そして、AUX4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+マイク用)には、2つの規格が混在しています。

「CTIA」と「OMTP」です。

これらはヘッドセットの章で紹介した規格です。そして、先述の通り規格名の記載がないものも多くあります。したがって、「iPhone対応」のような対応機器名を確認しましょう。

4-2-2.ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用

AUX4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像用)では、少なくとも次の5つの規格が混在しています。

(1)プラグ先端から、左音声/映像/グランド/右音声
  SONY等の製品に採用されている規格です。

(2)プラグ先端から、右音声/グランド/映像/左音声
  Panasonic等の製品に採用されている規格です。

(3)プラグ先端から、左音声/右音声/グランド/映像
  iPodなどのアップル社製品、あるいはパイオニア等の製品に採用されている規格です。

(4)プラグ先端から、右音声/左音声/グランド/映像
  フランスの家電メーカーArchosなどの製品に採用されている規格です。

(5)プラグ先端から、映像/左音声/右音声/グランド
  上述以外の様々な製品に採用されています。

このように、4極ミニプラグ(ステレオ信号のアンバランス伝送用+映像信号)は非常に複雑です。そのため、基本的には付属ケーブルのみの使用がお勧めです。しかし、どうしても新たにケーブルやプラグが必要となった時には、念入りな信号配列の確認を強く推奨します。

4-2-3.ステレオ信号のバランス伝送

ステレオ信号のバランス伝送については、厳密には規格化されていないものの、高音質化を目的とし、4極を使用してステレオ信号のバランス伝送(L+, R+, L-, R-など)を行う端子が登場しています。ハイレゾウォークマンなどのハイエンド音楽プレーヤーや、ハイエンドのヘッドセットなどで一部採用されています。

現状では、次の二つ程度が存在しています。

(1)プラグの先端から、L+, R+, L-, R-
  SONYやOPPO系にて採用されている規格です。

(2)プラグ先端から、先端から順に、R-,R+,L+,L-
  Astell&Kern系にて採用されている規格です。

両方ともステレオ信号のバランス伝送用ですが、配列が異なるため接続には注意が必要です。

5.まとめ

AUXは「Auxiliary」、「予備の」という英語の略です。読み方は、「オックス」「エーユーエックス」あるいは「オークス」などと様々で、どれが正解・不正解ともありません。

AUXフォーンプラグは、大きさにより4種類に分類できます。
直径2.5mmの「マイクロプラグ」、直径3.5mmの「ミニプラグ」、直径4.4mmの「JEITAバランスプラグ」、直径6.3mmの「標準プラグ」です。

大きさが違えば、挿し間違えることはないので大丈夫でしょう。
しかし、問題はAUXは構造により4種類に分類することができ、それらは挿し間違えがトラブルになりえることです。AUXプラグは、先端の線の数が1本の2極、2本の3極、3本の4極、4本の5極により、それぞれ以下のように仕様が異なります。

2極は、音声の入出力がモノラル形式。
3極は、音声の入出力がステレオ形式。
4極は、3極の構造にマイク機能を追加したもの。
5極は、3極にノイズキャンセリング機能を追加したもの。

では、それらをどう判別するべきか。
初心者は以下のように覚えておけばよいと思います。

機器側がステレオ対応なら、「先端の線が2本の3極プラグ」を使用。
機器側がモノラル対応なら、「先端の線が1本の2極プラグ」を使用。
4極以上は、規格が乱立していて外観で区別がつかないので、基本的には付属のものを使いましょう。どうしても必要な場合は、メーカーを揃えればある程度はリスクを軽減できます。

最も注意したいのは、4極対応ヘッドセットです。
今のスマートフォンや携帯音楽プレイヤーでは、大きく「OMTP」と「CTIA」の二つの規格が混在しています。OMTPはプラグの先端から、左音声/右音声/マイク/グランドですが、CTIAはプラグの先端から、左音声/右音声/グランド/マイクです。つまり、両者はマイクとグランドが入れ替わっています。

しかし、大抵のヘッドセットには「OMTP」か「CTIA」かの記載はありません。ただ、多くの場合、「iPhone対応」などのように特定の機種名を出して市販されています。その点を注意して購入しましょう。